緊急手術
(俺は、一体何をしているんだ……)
凄まじい後悔の念が、濁流のように健人の胸の奥底から湧き上がってきた。
これ以上彼女を巻き込まないため、危険から遠ざけるため。
そう自分に言い訳をして放ったあの冷酷な言葉の数々が、美有の心をどれほど深く傷つけたか。
忘れられたショックで絶望し、涙で前が見えなくなっていたからこそ、彼女は迫り来るトラックに気づけなかったのだ。
美有を限界まで追い詰め、この道路に飛び出させたのは、他でもない自分自身だった。
守りたかったはずの唯一の光を、自分の身勝手な拒絶が、その手で消しかけている。
「……すまない、美有……。俺が、あんなことを言わなければ……」
小さな車内に、健人の掠れた呟きが虚しく消えていく。
隊員たちの緊迫した声と、心電図の不規則な電子音だけが響く空間で、健人はただ、自分のあまりにも勝手な行動を、激しい痛みと共に悔い続けることしかできなかった。
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コンビニへ向かった健人が戻らなくなってから、すでに2時間が経過していた。
隠れ家に残された二人は、最初は「ジャンケンに負けた腹いせに遅れているのだろう」と考えていたが、さすがに夜になっても連絡一つないのは異常だった。
大村志人が端末を操作し、健人のスマートフォンの位置情報を追跡する。
画面に表示されたのは、アジト近くの大きな病院の場所だった。
不審に思った志人が直接健人に連絡を入れると、いつもなら冷静な健人の声が、ひどく掠れたトーンで響いてきた。
『……幼馴染が、トラックにはねられた。俺のせいで。今、病院にいる』
事情を察した志人と市川太郎は、即座にアジトを飛び出し、夜の病院へと向かった。
病院の緊急集中治療室(ICU)前の廊下は、独特の消毒液の匂いと静けさに包まれていた。
ベンチに深く腰掛け、血のついた自分の両手を見つめたまま動かない健人のもとへ、息を切らせた二人が駆けつける。
「健人! 大丈夫かよ!」
市川が声をかけるが、健人は力なく首を振るだけだった。
そこへ、真剣な顔をした医師が手術室から出てきた。
「中山さんですね。患者の花山美有さんですが、頭の中の出血と体の傷が激しく、一刻を争う状態です。今すぐ緊急手術を行います。ただ……」
医師は手元の資料を開き、厳しい現実を告げた。
「今回必要となる特殊な手術と、これからの集中治療には、特別な最新の医療技術を使わざるを得ません。概算ですが、手術と当面の治療費だけで、1千万円を超える非常に高いお金が今すぐ必要になります。このお支払いの同意がいただけなければ、ルール上、特別な治療の準備に遅れが出ます」




