再会
「え……?」
美有の足が、ピタリと止まった。
彼女の大きな瞳が、驚きと困惑でみるみるうちに開かれていく。
美有の目に映る健人の姿は、彼女の記憶にある「中山健人」とは、あまりにもかけ離れていた。
かつて野球に打ち込み、いつも明るい笑顔を見せていたあの少年は、そこにはいなかった。
今、目の前に立っている健んは、どこか暗い雰囲気を全身から漂わせている。
着ている服はどこかつ汚れ、激しい戦いでついた擦り傷や服の焦げ跡が、普通ではない暮らしを物語っていた。
何よりも、その瞳だ。
かつての輝きは消え、まるで冷たい氷のような、深い闇のような目をしている。
あまりの変わりように、美有は完全に言葉を失っていた。
目の前にいるのが本当に自分の知っている健人なのか、それともよく似た別人なのか、頭の理解が追いつかないようだった。
健人は、一瞬だけ、本当に一瞬だけ立ち止まった。
その無表情な顔の裏で、激しい思いが渦巻く。
(美有……)
健人はすぐに視線を前へと戻した。
まるで美有のことなど最初から見えていないかのように、完全に他人のフリをして、そのまま彼女の横を素通りしようと足を動かす。
缶コーヒーの入った袋が、カサリと小さく音を立てる。
美有のすぐ横を、健人が通り過ぎていく。
すれ違う瞬間、美有の髪から、昔と変わらないほのかなシャンプーの香りが漂ってきた。
けれど、健人は振り返ることもせず、ただ冷たく前を見つめたまま歩いていく。
あと数歩、このまま歩き続ければ、関わらずに済む。
美有を危険な世界から遠ざけられる。
だが――。
「――健人、なの……?」
背後から、震える、けれどはっきりとした美有の声が路地に響いた。
健人の足が、まるで地面に貼り付いたかのように、完全に止まった。
呼び止められてしまった。
無視してそのまま走り去ることもできたはずだ。
今の自分の足なら、彼女を置いて逃げることなんて簡単にできた。
けれど、その震える声の中に込められた温かさを感じた瞬間、健人の体は動かなくなってしまった。
夕暮れの街の影が、二人の間に長く伸びている。
健人は手にしたコーヒーの袋をぎゅっと握りしめながら、ゆっくりと美有の方へと振り返った。
美有は、今にも泣き出しそうな顔で、まっすぐに健人を見つめていた。
「やっぱり……健人、なんだよね? なんで……なんでそんな怪我をしてるの? ずっと、どこに行ってたの……?」
明るい世界にいる少女の問いかけが、闇の中で生きる少年の胸に、静かに突き刺さる。
夕焼けの赤が、二人の再会を静かに照らし出していた。




