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生きる意味  作者: カセージン
第三章
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ひどく甘いいちごオレ

志人が初めて、感情を剥き出しにして叫んだ。



「俺は、兄さんを殺したんだぞ! 昔、冷え切った家庭の中で俺をいつも笑わせてくれて、誰よりも俺を想ってくれていた、たった一人の兄さんを、この手で……! そんな俺が、自分の好きなように生きるなんて、許されるわけがないだろう!」



激しく怒りを露わにする志人に対し、健人は何も言わず、ただ静かに志人の隣のベンチに腰掛けた。



健んはコートのポケットから、新しいイチゴオレのパックを取り出した。



新幹線の中で散々揉めた末に、大村が横取りして飲み干したはずの、あのイチゴオレだ。



「……これを飲め」



健人はそれを、志人の膝の上にぽんと置いた。



「なんだ、これは。俺は今、そんなものを飲む気分では――」



「頭のエネルギーが切れると、考えがおかしくなる。これは大村、お前自身がいつも言っていることだ」



健人の瞳が、まっすぐに志人を見据えた。



「お前が兄さんを殺したんじゃない。俺たち三人が、仕事として相手を倒したんだ。三人一緒の責任だろ。お前一人でその罪を抱え込もうとするな」



「健人……」



「それにさあ」



市川が今度は志人の頭を、大きな手でぐしゃぐしゃと乱暴になで回した。



「兄さんは『お前の好きなように生きろ』って言ったんだろ? だったらさ、これからも俺たちと一緒に、この闇の中で悪いやつらを片付ける生活を選んだって、それもお前の『好きな自由』じゃねえか。普通の生活に戻るだけが答えだと思うなよ。あの兄ちゃんも、そこまでお前のことを縛るつもりはなかったはずだぜ」



市川の乱暴だけど温かい言葉が、志人の固く閉ざされた心を内側からゆっくりと溶かしていく。



「お前には、帰る場所があるだろ」



健人が、静かに付け加えた。



「あの地下アジトで、イチゴオレを奪い合って、くだらないことで遊ぶ、あの場所が。お前が一人で泣く必要なんてない。俺たちも、お前の背負う重さの半分を、ここで一緒に持ってやる」



志んは、膝の上のイチゴオレを見つめた。



ストローを差し込み、一口、吸い上げる。



人工的なイチゴの強烈な甘さと冷たさが、乾ききった喉を通り、震える身体の奥へと染み渡っていく。



「……ひどく、甘いな」



志人がポツリと呟いた。



その声からは、先ほどまでの刺々しさは消え失せていた。



「だろ? 俺の特等席の景品だからな!」



市川がガハハと笑い、志人の背中をパチンと叩いた。



「よし、作戦参謀の機嫌も直ったところで……腹減った! 関西の美味いもん食いに行くぞ! 健人、奢りな!」



「……なぜ俺が。今回の仕事で最も動いたのは俺だ。大村が奢るべきだ」



「おい健人、お前は新しい力に目覚めたんだから『お祝い』として奢る義務がある。大村、そう思うだろ?」



志人はいつもの落ち着いた、けれど少しだけ呆れたような口調でフッと笑った。



「まったく、お前たちは……。分かりました。ここは、仕事が成功した記念として、私がすべて奢ってあげましょう。ただし、店を選ぶ役割は俺に任せてもらうぞ」



「よっしゃあ! 美味いもんにしてくれよ!」



市川が飛び上がり、健人も無表情ながら少しだけ満足そうに頷いた。



誰もいない公園のブランコが、今度は三人の足音に見送られるように、静かに揺れを止めていた。


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