健人と太郎
「……誰だ」
掠れた声で志人が睨みつけた先にいたのは、先ほど「先に東京へ戻れ」と言って追い払ったはずの、あの二人だった。
中山健人と、市川太郎。
二人は傷だらけの身体のまま、上着のポケットに両手を突っ込んで、いつもと変わらない様子でそこに立っていた。
「よお、志人。戦後処理をするって言ってた割には、ずいぶん可愛いことしてんじゃねえか」
市川が少し呆れたような、けれど驚くほど優しい声音で、へらりと笑った。
「お前たち……どうしてここに。先に帰れと言ったはずだ」
志人は必死に声を平坦に保とうとしたが、語尾が微かに震えてしまう。
健人は無表情のまま一歩前に進み出ると、静かに口を開いた。
「お前が嘘をつくときの癖は、全部わかっている。本当に一人で処理するつもりなら、あんなふらふらした足取りで公園に向かうわけがない。最初から後をつけていた」
「……っ」
志人は言葉を詰まらせた。
完璧に隠し通せていたと思っていた自分の心の揺らぎを、この二人はとっくに見抜いていたのだ。
「お前さ、いつも一人で全部背負い込もうとするよな」
市川が歩み寄り、ベンチの背もたれにドカッと体重を預けた。
「兄さんのこと、聞いたぜ。あいつ、最期にお前の好きなように生きろって言ったんだろ? だったらよ……ここで一人でウジウジ泣いてんのは、あいつの遺言への裏切りじゃねえの?」
「お前に何が分かる、市川!」




