大滝 魁vs市川 太郎
「オラァ! まだ動けるのかよォ! 根性だけは認めてやるぜぇ!」
魁の咆哮とともに、市川を取り囲む重力の空間は『200倍』というあり得ない領域へと到達した。
メキメキと体に大きな負担がかかり、骨が激しく鳴りを上げる。
耐えきれなくなった市川の口から、真っ赤な血がドッと溢れ出た。
足元のアスファルトはすでに数十センチも深く陥没し、強力な圧力だけで市川の肉体をそのまま押し潰そうと迫っていた。
「が、はっ……クソ、まじで……重戦車に直で踏まれてるみたいだぜ……っ!」
全身の筋肉が破裂しそうなほどの激痛。
呼吸をするために胸を広げることすら、巨大な鉄の塊を持ち上げるような苦しみが伴う。
けれど、市川の瞳から光は消えていなかった。
彼はあえて自分の太ももに持っていたナイフを深く突き立てた。
鋭い激痛が全身を突き抜け、身体の限界を麻痺させる。
その痛みの勢いを利用して、動かなくなった手足を強制的に動かした。
ただ耐えるだけでは潰される。
市川の頭は、この絶望的な状況の中でも諦めることを拒んでいた。
重力によって下へと強く引きずり落とされる自分の身体。
その「下へ落ちる圧倒的なスピード」を、そのまま魁の懐へと飛び込む攻撃のパワーに変える。
「な、にっ……!?」
魁が驚きに見開いた目の前で、市川の身体がしなる。
「重力のせいで、下に落ちるスピードだけは『最強』なんだよ!」
超重力を逆利用した、まさに命がけの突撃。
市川は弾丸のようなスピードで魁の足元から懐へと潜り込んだ。
そして、無防備になった魁の首筋へ向けて、逆に持ったナイフを猛烈な勢いで突き立てる。
ガキィン!
甲高い金属音が響き渡った。
魁が直前に展開した重力の盾によって刃は弾かれたものの、その凄まじい衝撃で魁の巨体がグラリと揺らぐ。
「ガキがァァッ!!」
魁は怒りに顔を真っ赤にし、さらに重力を強めて市川を吹き飛ばそうと腕を振り下ろす。
「へっ……まだまだ、これからだろ!」
市川は地面を転がりながらも、血だらけの顔で不敵に笑ってみせた。
一撃離脱すら許されない、足元すらおぼつかない超高重力の世界。
市川の意地と諦めない執念、そして魁の圧倒的なパワーによる圧迫の暴力。
二人の戦いは、火花を散らしながらどこまでも激しい泥仕合となって続いていくのだった。




