二人組の男
同時に、健人の身体が、前方から歩いてきた何者かと激しくぶつかり合った。
ドン、と鈍い衝撃が走り、足を痛めていた健人は、数歩後ろによろめいた。
「チッ……」
健人は忌々しげに舌打ちをし、鋭い目で相手を睨みつけた。
そこに立っていたのは、二人組の若い男性だった。
体格からして、中学生くらいだろうか。
しかし、彼らがまとっている雰囲気は、普通の中学生とはかけ離れていた。
夜の闇よりも冷たい気配。
そして何より健人の目を引いたのは、二人の手元で鈍い銀色の光を放っているもの――本物の「銃」だった。
中学生ほどの少年二人が、この夜の闇の中で本物の銃を手にしている。
異常な状況だった。
けれど、すでに悪魔へと変わり、狂気に足を踏み入れている健人にとって、相手が銃を持っていようがいまいが、どうでもよかった。
今の健人にとって、自分の行く手を阻む者はすべて、排除すべき敵でしかなかった。
「……どけ」
健人は低く、地を幾重にも這うような声で言い放った。
ぶつかった中学生の片方――整った顔立ちをしながらも、その瞳に一切の生気を感じさせない少年が、静かに健人を見下ろした。
彼は服についたホコリを払うような仕草をしながら、冷静に、そして驚くほど大人びた口調で口を開いた。
「随分と血気が盛んな子供だ。放火の被害者、といったところか。命からがら逃げ出してきたにしては、少々礼儀がなっていない。俺たちは、ただ道を歩いていただけで、先にぶつかってきたのはお前の方だ」
その口調には、この年代の少年たちがよく使うような、虚勢を張ったチンピラらしさは微塵もなかった。
大声を出すこともなく、まるで人生を何周もした大人のように、淡々と、理路整然と言葉を紡いでくる。
けれど、家族を殺され、復讐の鬼と化している健人に、その言葉を受け入れる余裕なんてなかった。
「うるさい……どけって言ってるんだ!」
健人は叫ぶと同時に、地面を強く蹴った。
野球で鍛え上げた強靭な足腰と、人一倍の運動センス。
それが、怒りのアドレナリンによって限界を超えていた。
健人は右拳を固く握り締め、目の前の少年の顔面に向けて、弾丸のようなストレートを突き出した。
「おっと、話が通じる相手ではないらしい。市川、少し黙らせるぞ」




