昨日、東京行ってきてん。
月曜日。
「……朝か。」
目覚ましの音で目が覚めた。
昨日は朝6時に起きて、東京へ向かった。
新大阪から新幹線に乗り、東京駅に到着。そこから山手線に乗って、スカイツリーや浅草へ行った。
さらに京急で横浜へ向かい、崎陽軒のシウマイを食べてから鎌倉へ。
鎌倉では江ノ電にも乗り、最後は東京駅から寝台特急サンライズに乗った。
思い返してみれば、なかなか濃い一日だったと思う。
「……で、今日は学校か。」
昨日の夜、サンライズの個室で過ごしていた自分が、今はいつもの部屋で目覚めている。
なんだか不思議な気分だ。
昨日は東京にいた。
それなのに、今日はいつも通り学校へ行く。
旅行の翌日だからといって、学校が休みになるわけではない。
当たり前のことだが、少しだけ残念な気もする。
「もう一日くらい休みがあってもいいのにな……。」
そんなことを考えながら、布団から出た。
顔を洗い、着替える。
朝ごはんを食べ、学校へ行く準備を済ませる。
カバンの中身を確認し、忘れ物がないか確かめた。
「よし。」
玄関で靴を履き、家を出る。
外はいつも通りの景色だった。
見慣れた住宅街。
いつも歩いている道。
昨日の東京とは、まるで違う。
昨日は知らない街を歩き回り、初めて見る景色を楽しんでいた。
それが今日は、家から学校までの道を歩いている。
「昨日、東京にいたんだよな……。」
つい、そんなことを考えてしまう。
たった一日で、ずいぶん遠くまで行ったものだ。
歩きながら、昨日のことを思い出す。
新幹線の車窓から見えた富士山。
東京駅の大きな駅舎。
山手線から見た街並み。
スカイツリーの高さ。
京急の速さ。
そして、江ノ電の車窓から見えた海。
どれも楽しかった。
「また行きたいな……。」
まだ帰ってきたばかりなのに、もう次の旅のことを考えている。
自分でも少し気が早いと思う。
でも、行きたい場所はまだまだある。
乗ってみたい列車も、降りてみたい駅も、歩いてみたい街もたくさんある。
そう考えると、楽しみは尽きない。
そんなことを考えているうちに、学校が見えてきた。
「よし、今日も一日頑張りますか。」
僕は学校へ向かった。
⸻
学校に着くと、いつものように教室へ入る。
「おはよー。」
「おはよう。」
友達と挨拶を交わし、自分の席に座る。
教室はいつも通りだった。
誰かが友達と話していて、誰かが宿題を確認している。
別の友達は、机に突っ伏して眠そうにしていた。
月曜日の朝。
みんな、まだ少し眠そうだ。
昨日、自分が東京へ行っていたことなんて、誰も知らない。
まあ、当たり前だ。
わざわざ言わなければ、分かるはずもない。
僕はカバンを机の横に掛けた。
中には、昨日、東京駅で買ったお土産が入っている。
友達に渡そうと思って買ったものだ。
「……いつ渡そうかな。」
自分から旅行の話をするのも、なんだか少し恥ずかしい。
別に自慢したいわけではない。
ただ行きたかったから行った。
それだけだ。
とはいえ、お土産を買ってきたのだから、渡さないわけにもいかない。
「まあ、あとでいいか。」
そう考えていると、友達が話しかけてきた。
「なあ。」
「ん?」
「昨日、何してたん?」
「昨日?」
「日曜日。」
僕は少し考えてから答えた。
「東京行ってきてん。」
「…………は?」
友達の動きが止まった。
「え?」
「東京。」
「いや、聞こえたけど。」
「うん。」
「東京って、あの東京?」
「ほかにどの東京があるねん。」
思わず笑ってしまった。
友達はまだ信じられないという顔をしている。
「なんで東京?」
「行きたかったから。」
「いやいやいや。ちょっと待って。」
友達が手を上げた。
「昨日の日曜日に?」
「そう。」
「一人で?」
「そう。」
「日帰り?」
「そう。」
「……新幹線?」
「新幹線。」
しばらく沈黙が流れた。
そして友達が一言。
「お前、行動力おかしくない?」
「そうかな。」
「普通、そんな簡単に東京行かへんやろ。」
「そう?」
「そうやって!」
朝から二人して笑ってしまった。
確かに、急に東京へ行くと聞けば驚くのかもしれない。
金曜日に思いついて、親に相談して、日曜日に出発した。
自分としては、やりたいことをやっただけなのだが。
「で、東京で何したん?」
友達が聞いてくる。
「東京駅を見て、山手線乗って、スカイツリー行って、浅草行って……。」
「ちょっと待て。」
「ん?」
「もう情報が多い。」
「まだあるで。」
「まだあるん!?」
僕は思わず吹き出した。
「京急にも乗ったし、横浜も行った。」
「東京だけちゃうんかい!」
「近かったから。」
「その理由で横浜まで行くな!」
「いや、行ける距離やったし。」
「そういう問題ちゃうねん!」
会話を聞いていた近くの友達も、こちらを向いた。
「何の話?」
「こいつ、昨日東京行ってきたらしい。」
「……は?」
また同じ反応だった。
「え、ほんまに?」
「ほんま。」
「日帰り?」
「うん。」
「一人で?」
「うん。」
「お前ら、なんでそんな簡単に東京行けるん……?」
「俺に聞かれても。」
僕は笑った。
どうやら、朝から旅行の話で盛り上がることになりそうだ。
⸻
しばらくすると、朝のホームルームが始まった。
先生が教室に入ってくる。
「はい、席につけー。」
みんなが席に戻る。
日直の号令があり、先生から連絡事項が伝えられる。
提出物の話や、今週の予定。
どれもいつも通りだ。
僕も連絡帳を開き、必要なことを書き込んだ。
昨日は東京駅で時刻表を確認したり、次に乗る列車を調べたりしていた。
今日は学校の予定を確認している。
同じように予定を確認しているのに、内容が違いすぎる。
そんなことを考えていると、ホームルームが終わった。
一時間目の準備をする。
教科書とノートを机の上に出す。
そして授業が始まった。
⸻
一時間目。
黒板に文字が書かれ、先生の説明が続く。
いつもの授業。
いつもの教室。
いつもの月曜日。
……なのだが。
「昨日は新幹線に乗ってたのに、今日は数学か……。」
ふと、そんなことを考えてしまった。
昨日は新大阪から新幹線に乗り、窓の外を眺めていた。
今日は教室で黒板を眺めている。
ずいぶんな違いだ。
もちろん、授業を受けないわけにはいかない。
僕はノートを取りながら、先生の話を聞いた。
しかし、頭の片隅には昨日の景色が残っている。
東京駅の大きな駅舎。
山手線の車窓から見えた街並み。
スカイツリー。
浅草の雷門。
京急の車両。
鎌倉の街並み。
江ノ電の車窓から見えた海。
そして、サンライズの個室。
どれも楽しかった。
「……また乗りたいな。」
そう思ったところで、先生に当てられた。
「じゃあ、この問題を解いてみろ。」
「……え?」
しまった。
話を聞いていたつもりだったが、途中から意識が別のところへ行っていたらしい。
慌てて黒板を見る。
周りの友達がこちらを見ている。
「……えーっと。」
なんとか問題を解き、席に座った。
危なかった。
旅の余韻に浸るのもいいが、授業中はちゃんと授業に集中しなければならない。
……分かってはいる。
分かってはいるのだが。
昨日のことが頭から離れないのも、仕方がないと思う。
⸻
休み時間。
さっきの友達が、また僕の席へやってきた。
「なあ、さっきの続き。」
「まだあるん?」
「あるに決まってるやろ!」
「なんでやねん。」
「東京まで行ったんやろ? もっと詳しく教えてや。」
どうやら、かなり興味を持ってくれたらしい。
「何から聞きたいん?」
「まず、何時に出たん?」
「朝早く。」
「何時?」
「6時くらいに起きた。」
「早っ!」
「新幹線は新大阪から乗ったで。」
「新大阪までどうやって行ったん?」
「普通に電車。」
「そこから新幹線か……。」
友達は何かを考えている。
「東京まで何時間くらい?」
「新幹線で2時間半くらいかな。」
「そんなもんなんや。」
「うん。」
「もっと遠いと思ってた。」
「まあ、乗ったら意外とすぐやで。」
もちろん、乗るまでにはお金もかかるし、予定も考えなければならない。
でも、実際に行ってみると、思っていたよりも身近に感じられる場所もある。
少なくとも、僕にとって東京は、画面の向こうにあるだけの街ではなくなった。
「で、何が一番よかった?」
友達に聞かれ、少し考える。
東京駅もよかった。
スカイツリーもすごかった。
江ノ電も楽しかった。
新幹線だって、サンライズだって、乗っていて楽しかった。
一つだけ選ぶのは難しい。
「……全部かな。」
「答えになってないやん。」
「いや、ほんまに。」
「じゃあ、もう一回行くなら?」
「また考える。」
「もう次のこと考えてるんかい!」
笑い声が上がった。
どうやら、僕が次の旅を考えるのは、いつものことになりそうだ。
⸻
二時間目、三時間目と授業が進む。
授業を受けて、ノートを取って、休み時間には友達と話す。
いつもの学校生活だ。
ただ、今日はいつもより旅行の話をする回数が多い。
別の友達からも聞かれた。
「昨日、東京行ったってほんま?」
「ほんまやで。」
「すごいな。何しに行ったん?」
「観光。」
「それだけ?」
「それだけ。」
「もっと目的とかあるんかと思った。」
確かに、旅行に行くとなれば、目的を決めておく人もいるだろう。
有名な観光地へ行く。
おいしいものを食べる。
買い物をする。
それも旅行の楽しみ方だ。
でも、僕の場合は少し違う。
もちろん、行ってみたい場所はある。
ただ、予定を全部決めて、その通りに動かなければならないとは思っていない。
気になる場所があれば、寄ってみる。
乗ってみたい列車があれば、乗ってみる。
その場で行き先を増やすことだってある。
今回の鎌倉だって、そうだった。
東京から横浜へ行き、そこから鎌倉へ向かった。
そして江ノ電に乗った。
予定通りに進むことだけが、旅ではない。
「まあ、楽しかったらええやん。」
僕がそう言うと、友達は笑った。
「それはそうやな。」
その言葉を聞いて、僕も笑った。
⸻
昼休み。
授業が終わり、ようやく昼ごはんの時間になった。
僕は昼ごはんを食べながら、友達と話していた。
話題は、もちろん昨日の旅行だ。
「そうや、これ。」
僕はカバンからお土産を取り出した。
「東京土産。」
「え、俺に?」
「うん。」
「ありがとう!」
別の友達にも渡す。
「こっちも。」
「おお、ありがとう!」
お土産を渡すと、また東京の話になった。
「ほんまに行ったんやな……。」
「だから朝からずっと言ってるやん。」
「いや、まだちょっと信じられへん。」
「なんでやねん。」
「だって、昨日普通に家におったと思ってたし。」
それはそうだ。
僕だって、友達が突然東京へ行ってきたと言ったら、同じように驚くかもしれない。
「写真見せてや。」
「いいで。」
スマホを取り出し、昨日の写真を見せる。
最初は東京駅。
「うわ、でかっ!」
次はスカイツリー。
「高っ! これ、下から撮ったん?」
「そう。」
「全部入ってるやん。」
続いて雷門。
「ここ、テレビで見たことある!」
「浅草やで。」
「ほんまに行ったんやなあ。」
京急の車両を見せると、友達が首をかしげた。
「これ、何の電車?」
「京急。」
「京急って何?」
「東京とか神奈川のほうを走ってる電車。」
「へえー。」
「めっちゃ速かったで。」
「電車の話になったら急に詳しくなるやん。」
「そら、好きやからな。」
最後に江ノ電の写真を見せる。
線路のすぐそばに住宅が並び、その向こうには海が広がっている。
「これ、ええな。」
友達が写真をじっと見る。
「なんか、のんびりしてそう。」
「実際、楽しかったで。」
「俺も行ってみたいな。」
その言葉を聞いて、少し嬉しくなった。
自分が楽しかった場所に、誰かが興味を持ってくれる。
それだけでも、旅の思い出を話した意味があったと思う。
「いつか行ってみたら?」
「いつかって、いつやねん。」
「知らんがな。」
二人で笑った。
そのあとも、写真を見せながら旅行の話を続けた。
東京駅の大きさ。
スカイツリーから見える景色。
京急の速さ。
横浜で食べたシウマイ。
鎌倉の街並み。
そして江ノ電。
写真を見返していると、昨日のことが少しずつ鮮明によみがえってくる。
友達に話しているうちに、自分でもまた旅に出たくなってきた。
「……また行きたいな。」
思わず口に出た。
「いや、昨日行ったばっかりやん!」
友達がすかさず突っ込む。
「それはそう。」
僕は笑った。
⸻
午後の授業も、いつも通りに進んだ。
先生の話を聞き、ノートを取り、問題を解く。
特別なことは何もない。
昨日のように、知らない街を歩くこともない。
新幹線に乗ることもない。
寝台列車の個室で過ごすこともない。
ただ、学校で一日を過ごしているだけだ。
でも、それが悪いわけではない。
旅に出れば、楽しいことがある。
知らない場所へ行けば、新しい発見がある。
しかし、家に帰ってきて、いつもの生活に戻る時間も必要だ。
昨日の旅があったからこそ、今日はいつもの教室が少し違って見える。
そんな気がした。
そして、放課後。
最後のチャイムが鳴った。
「終わったー!」
教室のあちこちから声が上がる。
僕も教科書を片づけ、カバンを持った。
「なあ。」
帰る準備をしていると、友達が話しかけてきた。
「ん?」
「次はどこ行くん?」
「まだ決めてないって。」
「絶対またどっか行くやろ。」
「まあ、行きたい場所があったらな。」
「今度は大阪とか?」
「大阪ならいつでも行けるやん。」
「じゃあ、もっと遠いところ。」
「それはこれから考える。」
友達は笑った。
「ほんま、旅好きやな。」
「うん。」
僕は素直に答えた。
旅が好きだ。
電車に乗るのが好きだ。
知らない駅に降りるのも好きだ。
知らない街を歩いて、見たことのない景色に出会うのも好きだ。
だから、またどこかへ行きたい。
それだけは間違いなかった。
⸻
学校を出て、家までの道を歩く。
朝と同じ道。
いつもの住宅街。
いつもの景色。
家に帰れば、いつもの日常が待っている。
昨日の東京旅行は、もう終わった。
でも、楽しかった思い出は、まだ頭の中に残っている。
家に着き、部屋へ戻る。
カバンを置いて、スマホを取り出した。
昨日撮った写真を、もう一度見返す。
東京駅。
スカイツリー。
雷門。
京急。
横浜。
鎌倉。
江ノ電。
そして、サンライズ。
一枚ずつ見ていると、昨日のことが鮮明によみがえってくる。
「……楽しかったな。」
思わず、声に出していた。
また東京へ行くのもいい。
でも、次は別の場所でもいい。
まだ行ったことのない街。
乗ったことのない列車。
知らない駅。
そう考えると、行きたい場所はいくらでも出てくる。
僕はスマホで地図を開いた。
日本地図を眺める。
あの街も気になる。
この路線にも乗ってみたい。
ここには何があるんだろう。
気がつけば、次の旅のことを考えていた。
昨日、東京から帰ってきたばかりなのに。
「……ほんま、懲りへんな。」
自分で自分に呆れながら、笑った。
でも、きっとまた旅に出る。
行きたいと思った場所があれば、行ける方法を考える。
お金を貯めて、予定を立てて、必要なら親に相談する。
そして、準備ができたら出発する。
昨日の東京旅行も、そうやって始まった。
だから、次の旅もきっと同じだ。
まだ行き先は決まっていない。
いつ行くのかも分からない。
それでも、地図を見ているだけで、少しわくわくしてくる。
「……次は、どこへ行こうかな。」
そうつぶやき、僕はもう一度、日本地図を眺めた。
旅は終わった。
でも、次の旅は、もう始まりかけているのかもしれない。
⸻
第2話を読んでいただき、ありがとうございます!
今回は第1話の東京旅行から一転して、学校生活がメインのお話でした。
昨日は東京で新幹線に乗り、山手線に乗り、スカイツリーや浅草、横浜、鎌倉を巡っていた主人公。
しかし、翌日にはいつも通り学校へ。
そして友達に一言。
「昨日、東京行ってきてん。」
……いや、急すぎるやろ!笑
もし自分の友達が、日曜日に突然東京へ行ってきたと言ったら、皆さんはどんな反応をするでしょうか?
主人公にとっては、行きたいと思ったから行っただけ。
でも、周りからすれば驚くような出来事なのかもしれません。
そんな何気ない会話を通して、主人公の行動力や旅好きな性格を描いてみました。
また、旅先で撮った写真を友達に見せたり、お土産を渡したりする場面も入れています。
旅の楽しさは、現地で過ごしている時間だけではありません。
帰ってから写真を見返したり、誰かに思い出を話したりする時間も、旅の楽しみの一つだと思います。
そして、主人公は東京から帰ってきたばかりなのに、もう次の旅を考え始めています。
果たして、次はどこへ向かうのでしょうか?
これからも、主人公の自由気ままな旅を見守っていただけるとうれしいです!
最後まで読んでいただき、ありがとうございました!
次回もよろしくお願いします!




