第3話 トミオカ・シズクです。宜しくお願いします
アルハイゼン魔法学園―――王都の北部に設立され、長い歴史を持ち合わせる学園の一つだという。
私はいつも通り優雅な振る舞いをしつつ、周囲の女学生を挨拶していた。
無論、護衛のロバニと一緒に。どうやら、この前私に叱責を受けた彼はあまり口を挟まないでいるようになった。
だけど、彼から発する雰囲気はどうも私の心中に不穏な感じをさせてしまった。
故に、私はわざと誰もいない廊下に誘導し、ロバニと二人きりで話をしたいと思う。
「ロバニ」
「はっ!」
直ぐに姿勢を正す彼に、私は微笑む。
「はい、それで宜しい。ただ、それで良いのですが、この前の説教についてですが、あまり気を取らなくていいのですよ」
「それは……どういう?」
戸惑う彼に私は彼の肩を触れる。
「要するに、昨日の説教は悪気があってやったのではありません」
「そ、それは…」
「公の場でやるのは大変謝罪いたします。でも、こうして沈黙し続けるのも…何か、嫌な感じがします」
ロバニは私の言葉で話す力を失う。そこまで責めたいというわけではないのに、やはりロバニにはまだ早いかな。
「ロバニ、私は責めたいわけではありません。ただ、今まで通り気軽に私と接触して下さい。あなたは護衛ですから、護衛対象とこういう仲じゃ、どうお守りするのですか?」
「それは……」
「それに、皆んなは怖がってるんじゃないですか。前よりも顔色が変わったのを伝わっています。別にこの学園では悪いことは起きませんし、気軽にやって行きましょう」
その最後の言葉に、私は彼の手をとって、王家の貴族令嬢らしく振る舞った。
元気に戻ったロバニはニコリと笑って、「はい」と頷く。
◇◇◇
思えば、この学園に入ったのは三年になったかもしれない。
そしてこの女の体に転生したのはもはや十七年間が経過した。七年間ずっとこの女の体で慣れっこしたと思いたいのだが、ある日前世の妹の事を思い出し、その夜に前世の世界に屍者として戻れた。
原因が何か、不明だ。しかし、今時、私……俺がこの世界で生活しているうちに、シズクは何をやっているんだろう?
「アンジェリカ、この問題を解けますか?」
授業中で考え事していたら、クラスの前に教える教師に呼ばれ、黒板を見やると、問題を把握する。
「解けます」
「じゃあ、やってみなさい」
私は黒板の前に立ち上がって、問題を解き始めた。
その問題は簡単な数学。魔法を扱うための数学。我ながら自慢に聞こえてしまうが、私の魔法の才能はそこそこある。少なからず、中級魔法を扱えるくらいに。
◇◇◇
「そういえば、最近は転校生がいるらしいって」
「あ、あぁ、そうだな。どんな子だっけ?」
「龍神が拾った子らしいぞ」
「うわ、荘民か」
授業と授業の間に挟まれた休息時間に男子学生は噂話をしている。なんと荒げた事だろうと密かに胸中で批判している私。
確かに、ここ数日ではその噂が流れている。
内政官の間でも、偉人が凄い物を召喚できたという話を耳にした。
偶然にも思えないくらい。
私ら生徒たちが雑談に没頭する最中、担任教師がクラスのドアを開いて、棒でゆっくりと歩む。
「席に座れ、お前ら!」大声で指示を下す担任教師。
教室は一瞬で閑静になる。唯一口を開いたのが担任教師のみ。
「えぇっと、お前らの間には既に耳にしただろう。我が校には転校生……が、来ると。その子も龍神様が養子としている子でもある。それでは、紹介してやるぞ―――」
担任教師は一回程咳払いし、教室の外側からある黒髪の女の子が表側に姿を現す。
あの子―――転校生―新入生が挨拶して、自己紹介する時に私は瞳を細めた。
「トミオカ・シズクです。宜しくお願いします」
だって、その黒髪に、白い肌や整った顔の持ち主は―――前世の私の妹だ。
妹のシズクだ。間違いなく、シズクだ。
何故こんな事が起きたんだ?
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