第12話 そもそも勇者の存在はなかった
―――何故こうなる
『お前を殺す、必ず殺してやる。ブルハンも、シズクも、アンジェリカも、アレシアも、ホノカモ全員!!』
私は憎しみに溢れるメモに驚愕して、思わず瞳を細めた。
シズクのために色々と調査し始めたというにもかかわらず、やけに問題の幅が大きくなりつつある。内政官は今までこのことを知ってるのか?嫌、これは日本語だ。恐らく、内政官でもこの文字を読めない。
私は眉間を寄せて
「アンジェリカ、大丈夫か?」
私の肩を叩いて、私の顔を窺っている父。
「顔色が怖いぞ、これを読めるのか?」
「い、いえ……読めません」
どうやら私の顔色が突然悪くなったらしい。
私はその本を魔法使いに渡して
「ただ読めないすぎて、驚いただけです」とだけ言い残す。
この問題は予想以上大きいようだ。となれば、シズクの身は危険に晒される可能性は十分高める。ただ、このメモを残したのは誰だ?
「―――となると、別の本を調査する必要ありますね」
「え、ええ。賛成です」
私が深く思考を回転する間に、他の皆は話を進んである。
魔法陣の調査、それも結果は異常無し。私は石畳の上に描かれる魔法陣に手を触れさせ、何か沢山の言葉が載せられるのを気づいた。
何語だ?
「王女様、どうかなさいますか?」
「いいえ、何もありません」
しゃがんで、話しかけたのがベルベット・クリーマー侯爵だった。彼の背には大型の剣がある。彼の精悍な体付きは些か脅威と感じさせたが、同時に強い縦となってくれる気がする。
彼の顔は老人に近い顔で、確かロバニの父親だったらしい。
彼は曇りがちな顔で
「本当ですか?何か気づいたらお話しください。これは国王ライハン様のご意志でもありますから、この事件は共に解決しましょう」
どうやら私がそのメモを読めるのに気付いたらしい―――多分。
私はベレベット侯爵に微笑んで、また立ち上がる。
ここに長居してしまえば、空気の汚染で倒れかねない。残念ではあるが、今回の調査は行き止まりだ。
と、私が父に引き上げと合図を送る前に、書架の前に立つショウマ大魔法使いは声を上げた。
「あっ、すみません、これ、見てください!」
慌てぶりから察するに、どうやら重要な手がかりを見つけたらしい。
父はそれに反応し、期待を寄せていく。
「うん?何か見つかったのか?」
「はい、つい先ほどまでこの本を読んだところ、どうやら召喚魔法には供物を捧げる必要がありそうです」
「供物か、具体的にはどんなものが必要だ?」
ショウマの呼びかけに、皆それぞれ同じ位置集っていた《つどっていた》。
ショウマは丁寧良く本の数ページを皆に見せる。
そこには魔法陣がある。
「一般的には果物ですが、勇者召喚するのために、人の血が必要になります」
「血…ですの?」
また複雑になってしまった。私は顎に指を添えてますますミステリーが増えるのに飽きた。
私はひとまずショウマ殿の説明に耳を傾けて、
「ここには人の血の痕跡とか残っていません。つまり、ここでは召喚魔法は行われていないということです」
「―――え?」
皆一斉に言葉を上げてしまった。
確かに、もしショウマ殿の話が真であれば、ここには勇者の召喚は行われていない。
一方、謎を謎で重なるのみ。
ショウマは一回息を吸って、吐いてから話を続ける。
「私の推測が正しければ、おそらく、元から勇者の存在はいないかと」
「では、勇者シズクはどうしてこの世に?」
「それは分かりません」
わならないか。まぁ、ショウマ殿にもこの事件で何が起きてるのかさほど詳しくないようで、無理もない。ただ、この事で父はこの事件に異常さを感じてるようだ。
父は手を組んで、何やら思考回転している。
「アンジェリカ、前に夢の中で『ソリハ』というやつに話しかけらたな?具体的に何を話したんだ?」
「えっと、記憶はうろ覚えですが、『私はシズクと関係してる』としか」
全くもって偽りの話である。流石に当時がシズクと喧嘩したからとか、前世での出来事の話とか言えまいし。
父は真剣に取り込んで、考え始めた。
それから数分後、ようやく口を開いた。
「よし、そのソリハを調査しよう」




