第10話 内政官の死と重要な目的
「おはようございます、アンジェリカお嬢様」
私が眼を覚ますころに、どうやら使用人のリムが待っていたらしい。
その凜とした姿に、陽光に照らされ、優雅に見える。
今日は何事で待っていたのだろうと、私は思う。
「おはようございます、リム。ずっと私が起きるのを待ってたのですか?」
「ええ、ご主人様がお話しがあるとのことです」
その落ち着きぶりな話し方からして、もし俺が…今の私が男であったら即求婚の申し出をするかもしれない。
しかし、今世は女だ。女同士はさぞ無理がある。
「お話って、何かしら?」
「お嬢様が最近調査した内政官について…あと、もう一つあるとのことです」
もう一つって、なんだろう?と私は首を傾げる。
暫くして、私は頷いていた。
全身を覚まし、体をストレッチする。
一人で仕度しようと思ったものの、何故かリムは私の手を止めた。
「お嬢様、まず服を着替えて下さい」
「え、どうして?」
「いいから、私にお仕事をさせて下さい。今回は大事な面会があります」
「面会って…リム、あなたは何を隠しているのですか?」
「服を着替えてからお話し致します」
眉を寄せて私は裏で何かが匂うと思い始めた。
故に私は先に着替えて、自分の生活のルーティンを始めた。
ーーーーー
王族が住まうお城、白色や黄金の色を基調とした廊下を通り抜け、私はある扉の前に立った。そこではロバニが立って、頭を下げて、礼儀良く扉を開いてくれた。
長い食卓テーブルが用意された。この世界での兄妹たちが居て、一番向こうの端に母と二人で居座ったのは父だ。
私は椅子に腰をかけ、礼儀よく、同時に直接話をする。
「おはようございます。父上、母上、アルム、アイシャ」
「あー、お兄ちゃんずるい!」
「別にいいじゃんかよ」
この世界での兄妹は遊ぶのに夢中で、私の挨拶を聞かなかった。
だが、今回の目的は父母だ。呼び出して、必ず目的があるはず。
「おはようございます、アンジェリカ。調子はいかが?」
「いい朝でございます、母上」
母は真剣な顔で尋ねて、私の心拍を上げていた
「まあ、そう緊張せず、普段通りでいいのよ」
「わかりました」
私は一度ため息を吐いて、気持ちを整理する。
この堅苦しい口ぶりをするのは、あまりにも圧さをましていくので、リラックスできないんだよね。
母がそう言ってくれて、助かる。
「朝早く申し訳ないんですけど、実は内政官のことで呼び出したんです」
「内政官がどうかしたのですか?」
「パパが謁見の間に呼び出した時、彼らはパパの前で死んでしまったのだ」
「……え、本当ですか!?」
半ばで入っている父はその言葉を足した。
私はその情報で思わず立ち上がり、混乱した。
内政官が死んだ!?何故だ?
「父上、まさかその場で死刑をしたのですか!?」
「いや、パパはそんな残酷な人じゃないよ」
「ですよね。じゃあ、どうして死んだのか、具体的にお話ししても?」
父が死刑を行わなくて、安堵の一息ができる。
私は再び椅子に腰をかけて、冷静に戻る。
「おそらく、魔法か何かで殺害されたのだろう。パパが謁見の間に呼び出した時、一人一人尋問する時に…いや、彼らが口を開く前に全員は突然倒れていた」
父はできるだけ状況を説明してくれるようだ。ここはちゃんと聴くことに
しよう。
「最初は毒ガスでもあるのかと思っておったが、死体を確認してる時にどうやら違うみたいだ」
「その異変は、彼ら内政官の死因が窒息で亡くなったみたいで」
「……」
なるほど、おそらく魔法で殺害されている。理にかなっている考えだ。その思考方向も正しい。
私は手を顎に添えて、深く考え始めた。
しかしながら、人を窒息と見せかけて殺害させる魔法なんて、あるのかな?
「それで、パパは最近内政官に関わっている…内政官を調査するアンジェリカに問いたい。彼らはいったい何をした?」
「召喚された勇者も未だ見つかっていない。何か手掛かりになれるものはあるのかしら?」
またシズクが関わってくるのか… 正直シズクは内政官たちに召喚されて、この世に入り込んだ。しかし、どうしてシズクはまだあの世界にいるのやら、未だ不明だ。
もしかして…
「何か手掛かりがありそう?」
「いいえ、それほどではないんですが、私が寝ている間に……なんか、ソリハという人に声をかけられまして…」
「ソリハ?」
「ええ、魔法使い『ソリハ』と名乗りました」
「ふうん…」
と父は顎髭を撫でつつ、考え始めた。
「でも、それはただの夢でしょう?事件とは無関係だと思うわ」
「そうですね…」
確かに、母が言うのに無関係だ。だが、私が先ほど言った『声にかけられた』というのは、夢のことではなく、あれは元の世界で話しかけられた時だった。シズクの日記を探るようにと言われていた。
今世の家族に『実は私、生まれ変わったものです』なんて言えないから、状況がわかりにくくなった。
とりあえず、考え方を変えてみよう。
昨日…いや、あの世界で公園から帰り次第、直ぐに調査し始めたのだが、やはり見つかっていない。
シズクがこの世界に召喚されて、元の世界にもシズクがいる……召喚されて…されて
召喚?
「何か気づきましたか?」と母は問いた。
「召喚魔法の魔法陣を探ってみてください」
私は断言できる、召喚される際に、召喚用の魔法陣には絶対何かがある。
もしそれを探れたら、この謎を進めるはずだ。
◇◇◇
『この国の王女、アンジェリカ・ビン・カワリズミはどうやら私たちの尻尾を見つけ出したみたいですね』
「ええ」
私は脳で響くあのものの声に返事して、頷いた。
『どうやら、私たちは次の行動に移すべきですね』
「ええ、だいたい兄の居所も見つけたところだし、あなたが言う守護する任務もだんだんとわかってきた」
小屋の中で姿を消して、正解だった。この者ーーーーーー『魔女ソリハ』の目的も理解できるようになった。




