第57話 既視感
(なんだ…? 何か覚えがあるような…?)
評議院へ向かいながら霞む頭で違和感を覚える。
建物が見える位置まで来ると集団が交戦している様子が見える。
「ブランシュ様! ここは任せて上へ!! 評議院へ!!!」
「わかった!」
階段を駆け上る。
地上だけでなく建物内でも交戦している音がする。
(そうだ。この先にセラフィナがいるんだ…)
喧騒の中で大きな叫び声が聞こえる。
「やめてくだ…やめ…やめろおおおおお!!!!」
階段を登りきった先で、青い炎が放つ強烈な閃光が目を焼く。
1mほどの空間を全て焼き尽くし、気化した煙が不死鳥の飛び去る様のように立ち上る。
吹き放しの広間に広がるオドの枝と燃えるような赤い花。
天井は吹き飛び見上げると聖樹の青々とした葉。
床には数カ所焦げた跡。
そしてその惨状の中心部には幼馴染の姿があった。
「何をやっているんだセラフィナ!!!」
「そう、あなたが来たのね」
セラフィナは悲しそうな目をする。
そしてブランシュの方へ手を掲げる。
「…ッ!」
迫りくるオドの匂いを感じ咄嗟に横へ飛ぶ。
元いた位置へ枝が伸び、赤い花が咲く。
そして瞬時に燃え盛り青い炎へ…。
「どうしてだ!!! やめてくれ!!!」
セラフィナは構わず再度攻撃を放つ。
ブランシュも再びかわす。
「私は…覚悟を決めたの。評議院を焼き尽くすまで止まらない」
「…ッ!」
ブランシュも構える。
吹き飛んだ屋根の代わりに紫雲が広がる。
「あなたに私が攻撃出来るの?」
「…ッ!」
微笑みながら舞い落ちる紫の花びらに手を伸ばす。
花びらはセラフィナの手を通過し床へ落ちる。
「ブランシュ!!! 貴様何をしている!! 早くその反逆者を討ち取れ!!!」
遠くから声が聞こえる。
「黙れクズが…」
セラフィナは低く呟くと手を掲げる。
「やめろ…!!!!」
ブランシュの制止も虚しく遠くの声の主は蒸発する。
震える声で叫ぶ。
「もうやめてくれえええええ!!!!!」
気づいたら階段を駆け下りている。
涙で前が見えない。
段差を踏み外し階下の床まで5段分転落する。
「追え! あいつを討ち取れ!」
後方から声が聞こえる。
立ち上がり再び階段を駆け下りる。
(もう嫌だこんなところ…!!!)
喧騒を背に、大樹の防壁にある外門へ向かって走る。
(あれ? あのときは杖を持っていたような…?)
(あのとき…?)
…。
…。
「まずい…ゃな…か? …こち痣が……いるぞ…!!」
(…? なんだ? 何か声が…聞こえる…)
「もう少し…様子…見……。もうダメだと思ったら俺がオドを無効化する…!」
(なんだか聞き覚えがある声だ…)
幻聴のような声が徐々に鮮明に聞こえてくる。
ブランシュは立ち止まる。
そして手に何か感触が…
(誰かが手を…握っている…?)
エリアンと…テオの…匂い…?
「頑張れ!! リネットを助けてくれ!!!」
そのときだった。
頭のモヤが一気に晴れる。
(…ッ!)
(そうだ…! 私はリネットのオドに…エレノアに会いに来たんだ!!!)
その瞬間、なぜか向かうべき先が分かった。
ブランシュは再び聖樹の麓に向かって走り出す。




