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アマルガムの魔匠  作者: 字書き狸
帝都アルレウスを彷徨う幽霊

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第55話 推測と策

どれだけ急ぎたくとも馬車の中では何も出来ない。

そういう意味では頭を整理するのには良い時間なのかもしれない。


そんな事を言い聞かせるように考えながらエリアンは語りだす。


「まだ俺も頭がまとまっているわけじゃないから時系列に話していく」


「わかった」


「リネットの生家だと分かった時点で、俺の中に2つの考えが出てきた」

「1つは青龍と軍部高官に何か繋がりがあり、その標的が関係者にまで及ぶ場合にリネットが幽霊の標的にされている可能性が高まった事だ」

「もう1つは…。リネット自身が幽霊の可能性だ」


「…。そうか…」

ブランシュも断片的な情報を元に、エリアンの様子を見てある程度2つ目の可能性を察していたのだろう。

そこまでの驚きは無いようだった。


「この時点ではまだ前者の可能性が高いとは考えていた。頭では…。だが…直感は確信に近い感覚で後者だと告げていた…」

「エレノアはリネットの本名で、話をしてくれた女性は祖母だ。リネットのオドの感性が祖父に近い、つまり他人のオドを覚え変化に敏感な体質を受け継いでいたのだろう」

「この情報で、俺の憶測が一通り筋が通ってしまうんだ…」


「…」


「リネットは発現者ではなかったし、オドの操作もそこまで得意ではなかった。だから頭部の負傷がきっかけで、最近その能力が発動し始めたと考えた方が良いだろう」

「おそらく負傷した際に、魔感野が傷つきその後変異したか、もしくはレゾナイトの破片が残りその後脳に定着したのだろう。可能性としては後者の方が高い」

「そしてリネットは巻き込まれた際に、防衛本能で周囲の敵のオドを探知し記憶したのだと思う」


「…」


「現場で魔法は使われていない。言い換えればエーテルが魔旋の経路状に滞留していないという事だ。オド同士の干渉なら別だ」

「夢は脳の器官が見せている現象だ。そして魔感野は別の器官から発せられた生体信号をオドのコントロールに変換する器官だ」

「他人のオドに共鳴し、オドから生体信号を逆流させ、夢を見させたり感覚を司る器官への信号をコントロールすれば…」


「リアルな夢を見せ、その中で受けたダメージ等が非常にリアルな感覚として再現されるわけか」


「あぁ。その強烈な刺激で自ら暴れたのかもしくは強いストレス反応が身体に現れた結果、痣だらけになったのだろう」


「本人が寝ているときに能力が発動しているとして、標的が起きている場合もあるだろう。だが寝室で発見されている事から見ると標的が寝ているときのみだ」

「それはどういう理屈なんだ?」


「推測にすぎないが…。起きている状態で仕掛けると、標的側の意識でオドの波長が変わるから共鳴が上手くいかないんだろう」

「オドの波長が乱れているときには仕掛けず、オドが静かになったときに仕掛ける。それが寝ていて無防備なタイミングという事なんだろう」


「おそろしい能力だな…」


「…。ここまで仮説を立てると思い当たる節はある」

「前に俺とテオが似た夢を見たと言ったな。その夢を見た日は2人目の襲撃があった日でもあった」

「テオはその前の日にもリアルな夢を見たとも言っていた。つまり1人目の襲撃の日だ」


「…起動テストをしてから襲撃していた…?」


「おそらくな。3日目以降は慣れてきてそれが不要になったんだろう」

「そしてリネットの体調がどんどん悪くなっていっている様子から、もう1つ仮説が立つ」


「…」


「工房からの距離がどんどん範囲が広がっている。これにどういう意味があるのかは分からない」

「ただこれが継続するようなら、脳にかかる負荷が増え続ける事になる。オドの体外操作は距離が離れる程負荷が大きくなるからな…」


「…。負荷が増え続けた場合どうなると予想されるんだ」


「俺の予想では、目を覚まさなくなる…。限界まで広がった範囲の影響で気絶、自然回復すると再度広がる、これを繰り返す」


「止める…いや、救う算段はあるのか?」


「1つ考えている事はある。リネットのオド…おそらくは無意識下で操作されるのだろうが、こいつが敵と認識したオドを目印として攻撃しているのだろう」

「体外に飛ばしているオドは当然視覚的な情報は存在しない。だがこの広い帝都内で青龍や生家の人間をピンポイントで襲撃している事から、識別出来ている」

「記憶したオドと同じ波長のオドで識別していると考えた方が自然だ」


「敵と認識した者のオド…か…」

「無意識だと思う根拠はなんだ?」


「これだけ強力な能力だ。意識があって襲撃しているなら殺しているだろう。無意識に襲撃しつつも本能が一線を超えないようにブロックしているのだと思う」

「いや、これは俺の希望的観測かもしれんが…」


「…なるほど」


「ただ…。自らを危険に晒した存在、自らを虐げた存在。3年前にリネットとして生きる事になった時に死んだエレノアという存在の幽霊がそいつらに復讐と考えた方がしっくりくるのも事実だ」


「…。帝都を彷徨うエレノアの無念…か」


「だから俺がエレノアに敵と認識させる。俺に夢を見させる事で、俺に共鳴しているオドを通じてエレノアを説得する」

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