第46話 狙撃
「なるほど…。あいつらアノマライト兵か…。贅沢な護衛付けやがって」
エリアンが呟く。
「とりあえず行ってくる」
………
……
…
――数分後。
話し終わったエリアンが戻ってくる。
「どういう事だ? 何だか察しが付いてるみたいだし説明してくれよ」
テオは考える事を放棄したのか呆れ顔だ。
「前回もだったが、今回もおそらくノーマンの独断依頼だ」
「独断? 前回の巡回はまだ分かるけど護衛が独断て意味分からん。護衛対象の許可を取らずに勝手に守るぜって事か? そんな事あるわけ」
「たぶんそんなわけだ」
「え」
「俺も正直全部分かったわけじゃないが…。たぶんノーマンはあの軍人が今回かなりの確率で狙われる事を察知したんだろう。だが見てみろ。自前の護衛付けてるだろ?」
「あぁ、普通に強そうだ」
「ノーマンはおそらくあれでは足りないと思っている。だが軍部に正式に打診しても突っぱねられると思ってるんだろう。現に今もいらんて言われてきた」
「は? じゃあ帰るのか?」
「いや、こういうときノーマンはだいたい外さない。少し離れたところから援護するという形で了承を取り付けた。だいぶ嫌そうな顔されたがな」
「まぁそういう事なら仕方ねぇか。少し離れたところならその重い箱も動かせるだろうしな」
「これ自力で運べって言われたら帰るところでしたよ…」
「あぁ、さすがにこれはな。出来る事は何でもすると言ったがこれは出来ない事だ」
「さすがに俺もそこまで鬼じゃないぞ…」
リネットとブランシュのクレームを受け付けたところで、一行は二手に分かれた。
◇
――とある工場の屋上。
エリアンとテオは警棒を持って歩いていた。
その他スタンガンとして機能する魔法具や拘束用の縄、アノマライト範囲内で襲われたとき用に銃火器等も所持している。
「なぁ、狙撃の線が濃いってだけで、それ以外の襲撃者の可能性もあるだろ? 大丈夫なのか?」
テオが尋ねる。
「まぁそうだな。ただその場合は一応軍部にはアノマライト兵もいるし大丈夫だろ」
「てか軍部の方は狙撃警戒しないのかな。俺達がいなかったら狙撃対策無しって事だろ?」
「うーん。そこなんだよな。軍部がそんな護衛するか? ってのは気になる」
「よし、軍人が工場の中に入っていった。このへんを巡回するぞ」
「おう」
そんな話をしていたときだった。
「あれ? エリアンさんとテオ君ですか?」
「?!」
振り返りざまに腰の魔法具を抜いて咄嗟に構える2人。
「ちょっと! ちょっと待った!」
聞き覚えのある声だ。
そこにいたのはレオンだった。
「おぉ、昨日ぶりじゃないか。元気?」
「はい、元気です! じゃなくてびっくりしたぁ! 驚かせないでくださいよ…こんなところで何してるんですか…」
「もしかしてレオン君も護衛かな? 俺達もなんだ」
「え? そうなんですか? 聞いてないけど…」
「どうやらノーマンが独断で俺のとこに持ってきたみたいでなぁ。まったく困ったやつだ」
「え? ノーマンさんてそんな事まで出来る権限持ってるんですか…? エリアンさんの友人て聞いてたからそこまでとは…あ、これは失言を」
「…」
「俺達はブラインドを警戒して巡回してたんだ。レオン君は1人?」
「おぉ、さすがですね。僕達もブラインドを警戒していました。こっち側は僕1人ですが、あと1人が反対側を巡回してますよ」
「なるほどねぇ。1人で巡回って大丈夫なの? 正直あまり戦いが得意に見えないんだけど…」
「ちょっとちょっとぉ。侮らないでいただきたいですね。こう見えて僕は魔戦士3級なんですよ」
「へぇ。じゃあ大丈夫か。まぁ俺達は後方支援みたいなもんだから邪魔しないようにするよ。それじゃ」
レオンと別方向に進路を取るエリアンとテオ。
「さすがに軍部もちゃんと狙撃の警戒はしてたみたいだな」
「まぁそうだよな。安心した」
数名のアノマライト兵が工場から出てきた。
そろそろ次の工場へ移動のようだ。
「よし、最後あの角のアノマライトのとこ見てから次のポイント付近へ行くぞ」
次の工場は川に対し垂直な大きな通りに面している。
「次のポイントが可能性が高そうだ。いろいろなところから射線が通っている。警戒していくぞ」
「おう」
そのときだった。
アノマライトの無音地帯から人影が飛び出してくる。
ローブを被り手にはナイフ。
エリアンは警棒で応戦する。
ローブの人物は少し距離を取る。
両手の親指同士と人差し指同士を結び輪を作る。
その瞬間エリアンは叫ぶ。
「テオ!! 見ろ!!!」
テオは意図を察し眼帯を取る。
ローブの人物は先程作った輪をエリアンに向ける。
輪の中央に氷が出来たと思った瞬間、凄まじい空気圧と同時に氷が消える。
(これが無音の狙撃術か!)
テオにはその正体がはっきりと見えた。
氷を生成する魔旋、その周囲を砲身のような気流を発生させる魔旋、そして氷の後方に圧縮した空気を集め一気に解放する魔旋。
全てを一つの工程とした魔法具のような構造として記憶する。
エリアンはテオに叫ぶと同時に横っ飛びでテオの方に向かってきた。
エリアンがいた位置の後方で氷が爆ぜる。
エリアンはそのままテオに触れる。
ローブの人物がその意図に気づくよりも早く、氷の弾丸が左肩を貫いた。




