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アマルガムの魔匠  作者: 字書き狸
帝都アルレウスを彷徨う幽霊

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第44話 微睡み

夕方。

馬車に揺られる一行。


みんな疲れ気味なのだろう。

無言で馬車の外を眺めている。


依頼品の作成がギリギリまでかかったから飯も食ってない。




「腹減ったなぁ…」

テオは呟く。


「俺も今になって腹減ってきた…。向こうに着いてから飯買って急いで食べよう。たぶんそのくらいの時間はある」

バタバタしているときは気にならないが、何もする事が無いと途端に意識しだしてしまう。


「はぁ…。この前夢の中で食ったパン美味かったなぁ」


「夢なのに味がするのか?」

テオの呟きを不思議がるブランシュ。


「あぁ、めっちゃリアルな夢だった。今朝なんてノーマンとかエドガー達がうちに来てまた変な依頼していく夢だったぜ」

「起きて夢だったと分かったときは安心したけどな。夢の中にまでノーマンが出てきて本当に疲れた…」

「そして昼は本物が来るしな。今夜はノーマン出ませんように」


「あー、そういえば俺も今朝はそんな夢見たわ。昨日の昼はエドガー君我慢してたみたいだけど夢の中では暴れてたよ」

エリアンも似たような夢を見たようだ。


「あ、俺も俺も。そんでコーヒーがこぼれてめっちゃ熱かったのまですごいリアルだったぜ」


「おぉ。俺のエドガー君もコーヒーこぼしてテオの左足にかかってテオがめっちゃ騒いでたわ。ははは」


「すげぇな。コーヒーかかった場所まで一緒じゃんか」

「それにしてもあの依頼が現実じゃなくて本当に良かったぜ」


「あぁ。俺もやばい依頼された。今からハウンドを殲滅して来いってさ。100%死ぬわ」


「!? そこまで一緒なの?!」


「?!」


「2人とも疲れていて現実と夢がごちゃごちゃになってるんじゃないか?」

何か不思議な会話をしているなぁと思っていたブランシュが突っ込む。


「いやさすがに現実でそんな依頼はされんだろ…。うーん…。まぁ前の日にハウンドの話したばっかだったし、犯人がハウンドっぽかったし俺もテオも印象に残ってたのかな」

「眠りが浅いと、脳が夢の中で起きた現象をシミュレートしようとして感覚器官にその結果を送る事があるみたいだからな」

「疲れのせいで眠りが浅くなってしまったのと、直近起きたインパクトのある出来事が重なって、そういう似たようなリアルな夢を見たんだろうな」


「不思議な事もあるものだな」


「ブランシュは何も見てないのか?」


「今朝かぁ。何か見たような気がするが内容は覚えてないな」


「リネットは…あ、寝てる」


「こいつ今朝も寝坊するくらい寝てたのによく寝るなぁ」


「激動の1週間を過ごしてるしな。まぁそのうち疲れはとれるだろ」




そんな事を話しているうちに護衛対象のいる区画に入る。

指定の合流場所まではあと10分ほどだ。



     ◇



(何事も起きなければいいが…)


エリアンの中で嫌な予感はしている。


今回の依頼は魔法具の製造工場を視察する軍部高官の護衛だ。


前回といい今回といい図式は簡単だ。

水路も魔法具工場も管轄は学術院。

つまり不備を指摘して統括局の学術院に対する評価を落とそうって魂胆だ。


それは分かる。


そして学術院側に雇われた非合法組織が暗殺して食い止めようとする。


ここが引っかかる。

暗殺はやりすぎだ。

この場合学術院側が通常取る対策は、証拠隠滅を生業とする非合法組織を雇い、不備を立証出来る証拠の隠蔽だ。


急遽決まった事なのか…?

それにしても視察は協定により最短でも3日前には知らせる事になっているはずだ。

百歩譲り、協定を破って急遽予定を入れたとしよう。

それは軍部にも跳ね返ってくる事になる。

要は軍部の管轄施設に学術院の視察を急遽ねじ込まれるという事だ。


そのような不毛な工作はしないだろう。


気になる点はまだある。

ノーマンがこの護衛の依頼を持ってきたという点だ。


ノーマンが持ってくる依頼は通常3種類。


1つめは上層部から押し付けられた非正規ルートの依頼。

これは統括局に申請すると手数料諸々金がかかるため直接お抱えの民間企業や非合法組織に依頼する。

安上がりだが飛ばれるリスクがある。


2つめは軍部が統括局に申請した正規ルートの依頼。

正規ルートの依頼を請け負う民間には難易度の高いものを学術院が引き取るやつだ。

結局学術院の職員ではなく俺達みたいなのに流して中抜きするパターン。

金銭的な旨味は少ないが、統括局に対して公共事業をこなした実績としてアピール出来る。


3つめはノーマンから直で降ってくる依頼だ。

予算はあいつの部署から出る。

きな臭い動きを察知した場合に学術院の上層部を通さずにノーマンの権限で民間へ依頼出来る。


あいつは上からって言っていたが、学術院の上層部がわざわざ軍部の護衛を依頼するのはおかしい。

軍部が要人の予定を公表する事になる統括局への申請もおかしい。というか護衛なら自分たちで出来るはずだ。

そうなるとノーマンが何かを察知し、独断で軍部の護衛を依頼してきた可能性が高い。


何か隠しているのか、確信が得られないから黙っているのか。

昔から曖昧な事は言わないやつだ。




指定地点が見えてきた。

経緯が何であれやることは変わらない。

今は任務の事に集中しよう。

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