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アマルガムの魔匠  作者: 字書き狸
帝都アルレウスを彷徨う幽霊

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第43話 寝坊

「リネット! おーい! 起きろ! もう昼だぞ?」


(…? ドアを叩く音…と、エリアンの声…?)


(…なんだかすごく眠い…)


(え? 昼?)


リネットは飛び起きる。

そして急いでドアを開ける。


「おぉ、よかった。心配させんなよ全く…」

「お前がマルタさんから聞いたって話の事思い出してちょっと慌てたぞ…」


「すいません…本当だもう12時すぎてる…」


(…頭がボーッとする…えーと昨日は…)


(マルタさんと別れた後に工房に帰ってきて…噂話の事を話して…)


(なんだかとても疲れていたからちょっと早く寝たような…)


まだ虚ろな表情のリネットを見てエリアンは心配する。

「おい、大丈夫か? なんだかまだ目が覚めてない感じがするが…」


「大丈夫です…! なんだか疲れが溜まってたんですかねぇ。とりあえず着替えてきますぅ」


よく見るとエリアンの後ろで心配そうな顔をしているブランシュがいる。

「何ともなさそうで良かった」


「はは、すいませんでした。何ともないので大丈夫ですよ!」



     ◇



――10分後。


着替えたリネットは階段の方へ向かう。


(…えーと…今日は…4月9日の火曜日…)


階段を降りてくる足音に反応したエリアンが声をかける。

「降りてきたか。なんだかまだ寝ぼけてる感じだな…。とりあえず飯そっちに置いてあるから食ってくれ」


「ありがとうございますぅ」


「夕方までには依頼品作り終わる予定だから、その後試運転するぞ。試験の項目を整理したり必要な資材の準備を頼む」


「エリアンがちゃんと依頼品を作ってるなんて…感動です…」


「失敬な。いつもちゃんと作ってるっちゅうの!」


テオが横から割り込む。

「ほらまた手が止まってるぞ。またノーマンが来たら遅れるから早めに終わらせとくに限るだろ」


「いやいや2日連続で来たばっかだぞ。ナウマリスの雨じゃあるまいし3日連続とかそんな異常事態しょっちゅうあってたまるかよ」




そして鉄の扉は開くのであった。




「ねぇ。なんなのお前。うちを行きつけの喫茶店か何かだと思ってない?」


「エリアン、その扉溶接していいか?」


「完全に目が覚めましたよ」


「ここって工房なんだよな?」


「いやいや俺だって来たくて来てるわけじゃないから! 文句は上に言ってほしいなぁ」

「あっ、ちょっと立ち話で済みそうにないからそっちでお茶にしない?」


「「「「…」」」」



     ◇



――数分後。


椅子に腰掛け机の上のお茶を一口飲んでからノーマンは話し始める。


「いやぁ。分かる。分かるよ。こんなにしょっちゅう来るなって話だよね。うんうん」


4人の視線が突き刺さるがノーマンは一切の動揺も見せずに続ける。


「そこでだ! 俺も考えたんだよ! 君たちも人間だ。どれだけ頑張っても1日にこなせる依頼には限界がある!」


「「「「…」」」」


「これだけの依頼であれば2日はかかりますよ! って言えば無茶振りも突っぱねられるってね! そうすれば俺は明日確実に来なくて済むわけだ!」


「「「「…ッ!」」」」


「というわけで依頼を2つ持ってきました!!」


「「「「…(怒)」」」」




「なんだかもうそれはそれで嬉しい気もしてきたぜ…」


「そうですねぇ…。明日は確実にノーマンさんが来ない…」


「良い1日になりそうだな」


「ようやく真っ当な日々が戻ってきたって気持ちだな」


「ねぇ君たち俺の事嫌いすぎない?」

「まぁそんなわけで依頼なんだけどね。軍部の高官の護衛と、高等部の臨時講師だ。護衛が今夜。臨時講師が明日だね」


「うへぇ…そろそろかなと思ってたが臨時講師がついに来たか…。てかじゃあ明日は俺だけノーマンの依頼じゃんかー…」


「エリアン。離れていても俺達は一緒だ」


「そうですよ。いつだってエリアンの事を想っていますし一緒に依頼をしているようなもんです」


「そうだ。頑張ってこい」


「お前ら…(怒)」


「うんうん、良いチームワークだねぇ」


「「「「…(怒)」」」」



     ◇



――30分後。


「帰ったか。明日はノーマンが来ないってなんかいいな」

テオはしみじみと語る。


「えぇ。明日はノーマンさんが来ないんです。なんて心地の良い響き」

リネットは幸せを噛みしめる。


「しかも明日はその男だけの依頼だ。アマルガムに来て初めてゆっくり出来そうだ」

ブランシュもほっとした表情だ。


そんな3人とは対照的に明日も依頼があるエリアンはテンションが上がらない。

「…おい、護衛まで時間あるからさっさと依頼品仕上げるぞ…」

「明日は来ないって言ったが明後日は来る気がしてならない…」


「やめろよそういう不吉な事を言うの」


「そうですよなんだか来そうな気がしてきました」


「明後日は工房を閉めて休みにすればいいのでは?」




「いろいろ突っ込みたいところはあるが…ブランシュもだいぶうちに慣れてきたみたいでよかったよ」


「あぁ。我ながらとても驚いている。アマルガムでは1日1日がとても濃いんだな」


「いや、今月が特におかしいだけだから…。これが毎日だとさすがに持たない…」

「ほれ、さっさとやるぞテオ」


予定より遅れているが、明日予定が入ってしまったため護衛の時間までに是が非でも終わらせないとまずい。

エリアンは気を取り直し作業を再開するのであった。

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