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アマルガムの魔匠  作者: 字書き狸
交易港ナウマリスを覆う暗雲

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第4話 魔獣襲来

「このタイミングでかよ…!」

エリアンは歯噛みしながら御者に指示を出す。

「止めてください! 迎撃します! あなたも準備を! そして向かいから来ている馬車へ知らせてください!」


エリアンとテオは軽装備のまま、リネットは氷塊砲を抱え、それぞれ馬車を飛び出す。


「どこだ?!」


「いました! あっち!」

リネットが馬車の進行方向に対してほぼ真横の左側を指さす。


歴戦を思わせる無数の傷跡。

鎧を纏ったかのように隆起した筋肉。

炎を吐き散らし猛々しく荒れ狂うその野牛は、目に映る何もかもが本能へ警鐘を鳴らしていた。


「依頼の魔獣はあれの事か…!」


反対側を見に行っていたテオが駆けつける。

「あの感じだと、見たまんま炎を発するレゾナイトを取り込んだって事でいいんだよな?!」


「あぁ、おそらくな。だが動きが…。何か違和感あるな…」


少し観察していたその時、風上から草木の燃えた焦げ臭い匂いが漂ってきた。


(体毛が燃えたような匂いが混ざっている…?)


(違和感を覚えたのは、制御が効かずに素人くさい動きをしてたからか…!)


「あいつ自分の火で負傷してるぞ! たぶんレゾナイトを取り込んで間もない!」

「そのうち炎を出すのをやめて突っ込んで来るぞ!! 気をつけろ!!!」




レゾナイト鉱はエーテルを流す事で魔法効果を発現させる事が出来る魔鉱石である。

それを生物が取り込んだ場合、レゾナイトが体内に癒着し魔法を操る生物へと変化するのだ。


だが魔法の扱いは一朝一夕では上手くいかない。




「来る…!」

予想通り魔獣は炎を出す事を諦めたようだ。

炎は発さずこちらへ向かってくる速度が上がったように見える。

「こっちで迎撃するぞ!!」

路肩の草原地帯を指さす。

エリアンはテオとリネットと共に、5mほど馬車から離れた魔獣寄りの位置に布陣した。


テオは空気圧縮の魔法を放つため手をかざす。

リネットは氷塊砲を構え照準を覗く。

エリアンは炎に備えた消火液射出の魔法具をしまい、足止めのための手榴弾を構える。




向かいの馬車の方を見ると、知らせに行った御者はそのまま大型の両手剣を構えている。


そして向かいの馬車の護衛と思しき人間がようやく馬車から降りてくるのが見える。

「早くしろ! 荷物を守れ…!」


(…ッ?!)


(こっちは俺達と御者の人まで既に臨戦態勢だというのに…)




「あいつら非正規じゃないか? 魔獣があっち行ったらまずいぞ! どうする!」

状況を察したテオが指示を仰ぐ。


つかの間の逡巡。


(兵器を積んだ馬車の護衛であれば、最低でも戦務4級以上の実力が求められるはずだが…)

(確かに動きが悪すぎる…。テオの言う通り非正規だろう…。手配した側が金をケチり正規を使わなかったんだろうな…)


正規の護衛組織は高額だ。

そのため素人を雇ったうえで帝都の検問を裏金で通した方が安上がりという、粗悪な民間組織でよく聞く手法だ。


(こいつらも俺等と同じようにお上の都合で使いをさせられている下請けだろうからなぁ…同情するが…戦力としては期待出来んだろうな…)

(…。兵器の内容は分からんが、万が一がある…)




「兵器を守れテオ! こっちは最悪突っ込まれても大したものは積んでない!」

指示を飛ばすエリアン。


「大した?! 嘘ぉ?! ちょッ、ちょと、待ッてマってまテぇエえエェッ!」

唐突な荷物の犠牲を厭わない指示に狼狽するリネット。


「こっちに来るぞおおおお!!! 逃げろおおおおお!!!」

四散する護衛集団。


「落ち着けお前ら!!」

向かいの馬車に駆けながら叫ぶテオ。


獣は動くものに反応する。

本能的に吸い寄せられるように、魔獣は背を向け逃走する護衛集団の方へ向かう。




(やはりこうなったか…だが…)

(衝撃を吸収し燃焼の影響を受けない空気圧縮なら、突進の衝撃も万が一発した炎もどちらも防げる!)


(そして更に盤石にすべく、より強力な足止めかつ拘束力を持つこいつを使うしかないようだな)


不敵な笑みと共に手榴弾をしまい、代わりの魔法具を構える。

その名も「エリアン・ヘル」

金属製の杭を打ち出し、刺さった地点の地中に対し強力な低周波を発生させ、人工的なアリジゴクを作り出すのだ。


(日の目を見なかった魔法具が遂にベールを脱ぐときがきた…!)


開発時に言われた数々の否定の言葉が脳裏をよぎる。


「帝都でそんなもの使ったら賠償で死ぬぞ?」(ノーマン)

「普通にぶっ飛ばした方が早くないですぅ?」(リネット)

「アリジゴクに捕らえられるのはアリだからな。エリアン・ヘルだとこの場合は捕らえられるのはお前って事になるぞ?」(テオ)


(見てろよクソ共…!!)


(距離があると異変を感じた魔獣が経路を変えるかもしれん…!)

(ギリギリまで引きつけて経路上に打ち込んでやる!!)

(上手く行けばこいつで拘束、仮に抜けられたとしても勢いが落ちればテオの空気圧縮で確実に止まる!!!)


一日千秋の思いで経路上にある狙いを定めた地点の草原を見つめる。




(…今だ!!!)


引き金を引こうとした、まさにそのとき。


「うわっ!!!」


テオが叫ぶ声が聞こえた。

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