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アマルガムの魔匠  作者: 字書き狸
交易港ナウマリスを覆う暗雲

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第20話 臨戦態勢

「衛生兵を呼べ!!!」


「巡回兵が重傷だ!!!」


到着した検問所は蜂の巣をつついたような騒ぎだ。

血まみれで意識の無い兵士が倒れ、番兵2人が救護を行っている。


残りの番兵は武装中だ。

迎撃に向かうつもりだろうか…




「熊ですか!?」

エリアンが武装中の1人に詰め寄る。


「そ、そうらしい…」


「負傷者は何て?!」


「死んだと思われたらしく、他の仲間を引きずっていった隙を見て逃げてきたそうだ…」


「魔法は使ったかどうか言ってました?!」


「あぁ…使ったが出なかったと言っていた…」


(やはりか…!)

テオと一瞬顔を合わせ再び番兵へ話し始める。


「おそらくその熊はアノマライトを取り込んでいます。なので魔法が効かない。物理的な撃退手段を講じないと被害者が増えるだけです!」

「他の人もいったん集まって!! 話を聞いてください!!」


近くの番兵が何事かと聞き返す。

「この場合は規則で迎撃に向かう必要があるんだ。そもそもあんたは何者だ?」


仕方ない…とばかりにエリアンは懐から1枚の紙を取り出し、頭上に掲げた。

「聞いてください! 私は学術院からの依頼で派遣されてきた調査員です!」

空気が変わったのを感じる。

「仔細は最高学術院技術監査部のノーマン・レムナートに問い合わせてください! エリアン・クラウスと言えば分かります!!!」

周囲を見渡すようにして一呼吸置く。

「緊急条項に基づき、今回の魔獣対応に限って現場指揮権の譲渡を要請します! 所長さんいらっしゃいますか!」


見覚えのある男が奥から慌てて駆けてくるのが見える。

数日前に会った所長だ。

「緊急条項を適用! 魔獣の対応は今からこの男に従うように!!」

所長の一声で数十名の番兵の視線がエリアンに集まる。


「壁外には出ないで! 門を閉めてまずは被害をこれ以上増やさないように!!」

「それから各自…ッ!!!」

しゃべりながら最悪の事態が起きる可能性に気づき、一瞬の静寂が訪れる。

「まずいぞ!! この負傷者はもう獲物と認識しているはずだ!! やつはきっと獲物を取り戻すためこの町に攻撃を仕掛けてくる!!!」



     ◇



「1分待ってください!! 閉門だけは緊急でお願いします!!」

騒然とする中エリアンは思考する。


襲撃から現在30分と仮定する。

獲物をいったん巣と思われる気象装置の近くまで運び、再度戻ってくるとするなら…

行きはそこまで速くないはずだが戻りは手ぶらな分速いだろう。

だが全力疾走はしないだろうし早歩き程度とすれば…


「1時間…いや、30分程度の想定で備える必要がある…」


帝都からの救援部隊はどれだけ速くとも2時間はかかる。おそらく間に合わないだろう。

となるとやはりナウマリスの戦力での応戦の手立てを考える必要がある。

時間が無い…。まずは最優先の行動指示を出さねばならない。


「誰か帝都に向けて、この街が標的になっている可能性も視野に入れ緊急事態である事を伝えてくれ!」


「分かった…!」

番兵が1人駆け出す。


「早ければ30分以内にここへ魔獣が襲撃に来る! 対象はアノマライトを保持しているため物理的な武器・兵器を主戦力として準備をしてくれ!」

「この事を詰め所にも連絡してくれ!」


「やります!」

さらに別の番兵が駆け出す。


「町自体がターゲットになる可能性がある以上、避難と避難以外の外出禁止を役所に要請してくれ!」


「私が行こう」

所長が応じる。




次はどう迎撃するかだ。


防壁は以前も見たときに思ったが、十分な強度があるように見える。

壁に突進して動きが止まったところを、壁上からの銃火器を使った攻撃でダメージを与えるのは有効だろう。


だがそれだけで仕留められる公算は決して高いとは言えない。

致命傷を与えられなかった場合…

やつに知性があるなら門の突破を図るかもしれん。

壁に比べると門は格段に強度が落ちる…!


「準備が出来た者は壁上での銃火器を使用した迎撃準備を! 数名は火炎放射魔法具も装備してくれ! いったん早い者から100名! それ以外は第二陣として広場で待機を!」


「火炎放射の魔法具と聞こえたが、魔法は通じないのでは?」


「念のため射程を測ります! 射程外での魔法の発動は可能。そして発動した魔法が霧散した位置で、ある程度アノマライトの打ち消し範囲が推測出来ます!」


「…っ! 了解!」




そして門を破られてしまった場合も考える必要がある。


通常の魔獣に対抗する場合でも強靭な網を利用した捕縛は足止めとしても有効だ。

ここは港町だし網は大量にあるだろう。その射出装置も…!


「門の裏で網を射出する用意を! 万が一門が破られた場合は一斉射出で足止めをする! 町中の射出装置と網を集めてくれ!」

「第二陣はバリケードの設置や避難誘導を頼む!」


おそらく必要な備えは出来たはずだ…!

町の方には避難指示が伝わり始めたのであろう。

いつもとは異なる喧騒が聞こえ始めてきた。

自分達も準備しなければ。


エリアンは諸々の指示を紙に書く。

「先程の内容を書き起こしました! 所長さんが戻ってきたら渡してください! 私も迎撃の準備をしてきます!」




慌ただしい思考・指示のループを終え、エリアンはテオとリネットの方を向く。

「宿に戻るぞ! 俺たちも準備する!」

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