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アマルガムの魔匠  作者: 字書き狸
交易港ナウマリスを覆う暗雲

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第19話 狩りの刻

テオは検問所を出るなり駆け出したエリアンが役所へ入ったところで何とか追いついた。


「アノマライトに関する文献を探してもらえますか?! あと魔獣に関する情報も載ってるやつ!」

入ったそのままの勢いだろう。

エリアンは職員へ詰め寄るように依頼をしていた。


「どうしたんだ? 何か分かったのか?」


「あぁ。俺の直感では急いだ方が良い。お前等も手伝ってくれ」

そう言うとエリアンは文書保管室へ向かう。


「頭働いてないけど一応教えといてくれ…」

後を追って保管室へ入る。




「アノマライトに関する記述を探してくれ。エーテルを止めるとなるとアノマライト鉱だ」

「時間が経過すると復旧する通信は、おそらくアノマライトの範囲に一時的にケーブルが入ったんだろう」


「なる…ほどぉ…」

いつの間にかリネットも保管室へ入っていた。


「気象装置も同じ理由だろう。動いているときと動いていないときがある。だから故障していないのに雨が降った」

「ケーブルとの違いはエーテルの止まっている時間だ。熊が気象装置を根城にしているか、アノマライト鉱の保管庫として使っているか」


「あー。となると俺達が気象装置のとこにいったときはアノマライトがそこになかったって事か。そういえばあのときは雨がやんでたな」

テオが関連しそうなタイトルの文献を探しながら答える。


「そうだ。そして理由は分からんがおそらく熊がアノマライトと移動していると考えるのが自然だ。だから熊とアノマライトに関係するような情報がほしい」

「熊が持ち運んでいるのか、熊に寄生するような生物や植物がアノマライトを持っているのか」

「そこらへんの情報が分かれば、アノマライトを排除して魔法で討伐するという作戦が練れる。熊の身体能力を魔法無しで相手するのはきついからな」


「3級の人もアノマライトがなければ撃退出来てた可能性もあるだろうしな」


「あぁ。だが…」

エリアンはもう一つの可能性が気になり言い淀む。


「だが…?」

テオがその先を聞いたときだった。


「これとかどうでしょうか」

入口でエリアンが強引に頼み事をした人が、本を1冊持ってきた。


「見せてください」

タイトルを見ると『世界の生態系図鑑』と書いてある。


「なんだか胡散臭い感じの昔の本だな…」

テオが率直な感想を述べる。


「長い事ここで働いてる方に聞いたらいくつか教えてもらって、ひとまずそれ1つだけ見つけたのですが…。40ページあたりですね」


職員が教えてくれたページを確認する。

「やはりか…!!」


テオが覗き込む。

『アノマライト鉱石を取り込んだ獣が現れた。一定の範囲内に近づくと魔法を無効化するため、魔戦士達の多くが犠牲になった』

『学術院関係者に話を聞いたところ、従来のレゾナイト鉱石を取り込んだ魔獣と同様にアノマライト鉱石も体内に定着する可能性があるとの見方を示した』


「アノマライトで魔獣になる事もあるって事か…? 確かにアノマライトと一緒に移動してるならいろいろ辻褄が合うが…」

「でもこれ信憑性のある情報なのか?」


少し思うところがあるのか、エリアンが本のいろいろな箇所を確認し始める。

「刊行年が載ってないな。一応これだけでも古い本である事は間違いなさそうだが…」


「?」


何が言いたいのかさっぱりと言った表情を見抜いたのかエリアンは呆れ顔だ。

「お前もうちょっと世の中に興味持て…。刊行年の記載をするようになったのはここ30〜40年の話なんだ」

「今でこそこの手の本は巷に溢れてるが、70年程前はまだ紙が高級品で大衆向けのものがほぼ発刊されていなかったらしい」

「もしその頃の本であれば、学術院や系列機関の人間が後世に情報を残すために書いたものである可能性が高い」


「なるほど…」


後ろで聞いていた職員が少し気になる事があるようだ。

「あくまでも可能性ですが…。アノマライト『鉱石』って書いてありますよね。今では論文でもアノマライト『鉱』で統一されています」

「粉末状にして防具に使用するようになる以前は鉱石のままの利用が一般的だったので正式名称が『アノマライト鉱石』だったと聞いています」

「となるとこれは100年近く…少なくとも80年以上は昔の文献になるのではないかと…」


エリアンも同意する。

「確かにそうですね。保存状態が良いので見た目では分かりにくいですが、この本は思ったよりもかなり古い可能性が高いですね」

そしてこちらを見る。

「やはり信憑性はそれなりに高い。仮に違ったら違ったで良い。アノマライトの魔獣よりは対処が簡単だ。今は最悪を想定してこの後の動きを考えるぞ」

「そしておそらく時間が無い…。検問所へ行くぞ! 移動しながら説明する!」


先程までの眠気は吹き飛んでいた。



     ◇



帝都への援軍要請を職員へ依頼し、エリアン一行は検問所の方へ早足で向かっていた。

「情報を整理するぞ。最初の被害は2週間ほど前と言っていた。そして最後に確認された被害は3組目が襲撃された日曜だ」

「発覚している被害は見回り3組、その他の一般人までは不明だが…。およそ3〜5日ほどの間隔で狩りを行っている事が考えられる」

「ここまではいいか?」


「おう」


「今日は金曜だ。最後の被害から5日目。さっきの予測に照らし合わせるといつ被害が起きてもおかしくない」

「そして…」


エリアンが手をかざす。

「やんだな…」


テオも手をかざすが雨粒が一滴も感じられない。


周期的に予測されるリミットとこの雨がやんだという事実から導き出される答えは一つだ。


「やつが今狩りに来ているぞ…!」


早足から駆け足へと変わる。


「いつ巡回兵や通行人が襲撃されてもおかしくない。間に合うか…!?」


「なんか様子がおかしいぞ…」

遠目に見える検問所では人が慌ただしく動いているように見える。

さらに喧騒も聞こえてきた。


「くそ! 遅かったか!!!」

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