「ままごと」「上下関係」「まばゆい」
【まばゆい午後のままごと】
休日の午後、町外れの公園は初夏の光で白くかすんでいた。
ブランコの影が地面に長く伸び、風に揺れるたびにキラキラと光を散らす。
小さな東屋の下で、七歳の紗希はままごとセットを広げていた。
「はい、これがスープです」
色とりどりのプラスチックの器に、草や小石を並べながら、隣に座る同級生の春斗に向かって差し出す。
春斗は照れたように首をかしげ、作り物のスープを受け取った。
「ありがとう、店長」
紗希は思わず笑った。
「店長ってなに? ここはおうちごっこだよ」
「でも紗希が一番えらいじゃん。俺、部下」
春斗は笑いながら、小さな体を少しだけ丸めて頭を下げる。
その瞬間、紗希はふと胸がくすぐったくなった。
保育園でも小学校でも、男の子は女の子に「店長」とか「隊長」とか冗談交じりに上下関係をつけたがる。
でも、春斗の「部下」は、からかいではなく、ただ優しい響きで耳に残った。
木漏れ日が二人の頬にまばゆく落ちる。
小さな手が器を取り合うたび、光が跳ね返り、世界が一瞬だけ大きく感じられた。
「紗希、さ」
春斗が突然、真剣な目を向けてくる。
「大きくなっても、こうやって遊べるかな」
胸の奥が、どきん、と音を立てた。
「……どうだろ。でも、また一緒にままごとしようよ」
そう言った自分の声が、少しだけ震えていた。
そのとき、風が強く吹き、まばゆい光が一層明るく二人を包んだ。
草の香り、遠くの蝉の声――。
幼い遊びに宿った、かすかな約束のような時間が、夏の午後の空気に溶けていった。
連載作品は0時更新。シリーズ『連載中』より、ご一読ください。
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