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三題噺  作者:
2025年9月

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46/50

「ままごと」「上下関係」「まばゆい」

【まばゆい午後のままごと】


 休日の午後、町外れの公園は初夏の光で白くかすんでいた。

 ブランコの影が地面に長く伸び、風に揺れるたびにキラキラと光を散らす。

 小さな東屋の下で、七歳の紗希はままごとセットを広げていた。


 「はい、これがスープです」

 色とりどりのプラスチックの器に、草や小石を並べながら、隣に座る同級生の春斗に向かって差し出す。

 春斗は照れたように首をかしげ、作り物のスープを受け取った。


 「ありがとう、店長」

 紗希は思わず笑った。

 「店長ってなに? ここはおうちごっこだよ」

 「でも紗希が一番えらいじゃん。俺、部下」

 春斗は笑いながら、小さな体を少しだけ丸めて頭を下げる。


 その瞬間、紗希はふと胸がくすぐったくなった。

 保育園でも小学校でも、男の子は女の子に「店長」とか「隊長」とか冗談交じりに上下関係をつけたがる。

 でも、春斗の「部下」は、からかいではなく、ただ優しい響きで耳に残った。


 木漏れ日が二人の頬にまばゆく落ちる。

 小さな手が器を取り合うたび、光が跳ね返り、世界が一瞬だけ大きく感じられた。


 「紗希、さ」

 春斗が突然、真剣な目を向けてくる。

 「大きくなっても、こうやって遊べるかな」

 胸の奥が、どきん、と音を立てた。


 「……どうだろ。でも、また一緒にままごとしようよ」

 そう言った自分の声が、少しだけ震えていた。


 そのとき、風が強く吹き、まばゆい光が一層明るく二人を包んだ。

 草の香り、遠くの蝉の声――。

 幼い遊びに宿った、かすかな約束のような時間が、夏の午後の空気に溶けていった。

連載作品は0時更新。シリーズ『連載中』より、ご一読ください。


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