2:出会い
オレは冒険者協会で依頼を受け、平原に現れたゴブリンの討伐を行っていた。
「せぇいっ!」
「ギィエエエ⋯⋯!」
街道に近いところに集まっていては、街道を利用する商人や貴族たちが襲われる可能性がある。
それらの危険性を排除するのも、冒険者の務めである。
「こんなものか」
まだまだ未熟とはいえ、一時は勇者パーティーに所属し、ましてやワイルドソルジャーという固有スキルまで持っているのだ。
さすがにゴブリン数体を相手に手こずったりはしない。
慣れた手つきで討伐証明部位である耳を切り取り、死骸は穴を掘って燃やし尽くして埋めていく。
こうしないと、澱んだ魔力の残滓が腐った死骸と融合してアンデットと化してしまうのだ。
冒険者とは、ただ実力があれば良いというものでもない。
後始末までやれて一人前、なのである。
ひと仕事終え、さて戻るかときびすを返して帰ろうとした。
その時。
「ブモオオオオォォォォッ!」
「ん? おわっ?!」
森の方角から突然、巨大なイノシシが怒号を上げながら突進してきた。
すんでのところでかわしたオレは、すぐさま体勢を立て直し、暴走する巨大イノシシと対峙した。
「アングリーボアか。短剣だけだと厳しいな⋯⋯っ!」
アングリーボアは、硬い毛と分厚い脂肪のおかげで刃が通りづらい。
大剣ならともかく、短剣だと傷一つ付けられない可能性が高い。
そろそろ、長剣に持ち替えたいところだ。
それも、コイツから無事に生き延びられたらの話だけど⋯⋯!
「待てぇぇぇぇっ! わたしのご飯ー!」
「は⋯⋯?」
声の出処はアングリーボアの後方、森の方角。
そこから、土けむりを上げながらとてつもないスピードで突撃してくる姿があった。
「とうっ!」
声の主は、凄まじい跳躍力で空高々とジャンプして見せた。
そこから空中を蹴って加速し、アングリーボアの背面に向かって強烈な一撃を繰り出した。
「ハ・ラ・ペ・コ、キィィィック!」
「グァオオオ⋯⋯ッ!」
一聴するとかっこよく聞こえるが、よく聴くと絶妙にダサいその必殺技は、どう見てもただの飛び蹴りだった。
そんな飛び蹴りも、大人よりも大きなアングリーボアを一撃で仕留められるほどの威力がある辺りに、声の主の身体能力の高さが窺える。
もうもうと上がる土ぼこりが徐々に晴れていき、痛烈な飛び蹴りを見せた人物の姿が顕になった。
「ふぅー」
「⋯⋯!」
美少女だった。
それも、ただの美少女ではない。
「猫耳⋯⋯」
ダークグレーの長髪と、そこから生えた二つの猫耳がとにかく印象的な亜人の少女だった。
「やっと、お肉にありつける⋯⋯!」
「え?」
まさか⋯⋯。
「いっただっきまぁ〜〜〜す!」
「ちょ?!」
猫耳の少女は豪快にも、生のままで巨大イノシシの肉にかぶりついた。
なんとワイルドな⋯⋯。
しかし、魔物の肉は汚染された魔力でくそ不味いはずなのだが、味は大丈夫なのだろうか?
というか、食べて平気なのだろうか?!
「おいしい⋯⋯♪」
「⋯⋯ハハ」
それから、亜人の少女が巨大な肉を平らげる鑑賞会がしばらくの間続いた。




