1:追放
いつもの朝が訪れる。
暖かい朝日が顔を照らし、今日の寝覚めを快適なものにしてくれた。
「⋯⋯よし」
頭をしゃっきりとさせ、かちゃかちゃと着替えを済ませていると、パーティーメンバーから呼び出しを受けた。どうも、リーダーがお呼びらしい。
(今後の旅の相談か?)
勇者パーティーに入ってはや半年。少しづつではあるが、ようやくパーティーとも馴染めてきた頃合いだ。
そろそろ一段階上の戦闘にも挑戦する時なのかもしれない。
パシッと両頬を叩いて気合いを入れ、パーティーリーダーが待つ部屋へと赴いた。
──クロア、お前はクビだ。出ていってくれ。
気がつけば、オレは荷物一式まとめて宿を追い出されていた。
追放を言い渡してきたリーダーのバイアス曰く、『お前の将来性に期待したのが間違いだった』らしい。
オレの将来性を買って招き入れてくれたのは嬉しかったのだが、彼らの期待に応えきれず、このような結果になってしまった事には申し訳なさを感じている。
「⋯⋯〈ワイルドソルジャー〉、か⋯⋯」
ワイルドソルジャー。
それは、オレが持つ固有スキルの名称であり、バイアスたちがオレに将来性を見出した理由でもある。
スキルの効果は単純明快、『全ての武器を使いこなし、あらゆる属性の魔法を使いこなす』というもの。要は完成した魔法戦士だ。
確かに、使いこなせばそこらの戦士も魔法使いも相手にならないほど強くなるだろう。将来性は抜群だ。
しかし、スキルがいかに強くとも、器が弱ければ宝の持ち腐れ。
オレは武器の方は大抵使えるが、『使える』のと『使いこなす』のとではまるっきり違う。加えて、魔法の方はからっきし。初級魔法はあらかた使えるが、保有する魔力量が少なく、中級魔法一発でマナ欠になる。おかげで、魔法使いのリナにはいつもバカにされていた。
けれど仕方ない。
彼らは勇者パーティー。この世界を救うために集った者たちだ。成長の見込みが無ければ、捨てていくのは当然だ。
魔王討伐の旅は、足手まといを抱えて行けるほどぬるいものでは無いのである。
「⋯⋯行こう」
とりあえず、オレは冒険者協会に行くことにした。
旅の途中、修行の一環だとして冒険者登録をし、一人で依頼を受けた事もあった。勇者パーティーの一員でなくなった以上、食い扶持を稼ぐためにも働かなくてはいけないのだ。
◇ ◇ ◇
──宿屋の一室にて。
クロアを追放したバイアスは、グイッと酒を一杯あおっていた。
そこに重戦士のウォーダンが一声かけた。
「⋯⋯良かったのか?」
「何がだ?」
「クロアを追放した事だ」
「ああ。別に、大した事でもないさ。これまではあいつ無しでもやってこれたんだ、以前の環境に戻っただけ。どうという事はない」
「⋯⋯だと良いがな」
「⋯⋯何か言いたげだな、ウォーダン」
「大した事ではない。⋯⋯逃した鯉が、実は龍の稚魚だった。そうならないと良いなと思っただけだ」
「はっ。ありえないね」
バイアスはカラカラと笑い飛ばした。
「あいつの実力は知っているだろう? 剣技は並、魔法も並。魔力量に至っては並以下だ。そんなやつ、僕たちの足手まといでしかないだろう?」
「⋯⋯しかし、将来性はお前にも引けは取らなかった」
「⋯⋯何だ、随分とかばうじゃないか。僕があいつを追い出した時、お前は止めなかったくせに」
「お前の方に理があった。だから止めなかっただけだ。⋯⋯お前に聞いたのは、あくまで確認したかっただけだ。余計な事を言って悪かったな」
ウォーダンはそのまま沈黙し、武器磨きに集中し始めた。
「⋯⋯ちっ」
バイアスは、酒ビンを掴んでそのままゴクゴクと飲み干していった。
「僕は勇者なんだ⋯⋯。あんな出来損ないとは違うんだ⋯⋯!」




