数の暴力 【鼠退治仕事をリョウが受けるきっかけ】
「ギルドが言うこと聞かぬからわしらが今日こうして鼠退治を始めたわけだが」
「えぇ、結局溝さらいのほうも他の住民が率先してやっていますからね」
中年の男と老人がランタンを持って下水を進みそんな会話をしていると、
「鼠退治もできずに何が冒険者だ…………まったく」
「し、静かに…………あそこに一匹います」中年の男が小声で視界の先の鼠を指さす。
「チュッ」
なんとも可愛らしい茶色い鼠がよくわからない何かに噛りながら二人に振り向く。
「なんだ、巨大鼠と聞いていたから、警戒していたが、そんなにでかくはないではないか」
体長20㎝程の鼠を見て老人はほっと一息を吐く。
「ここは私が…………やぁ!」
ロングソードをゆっくり引き抜き、中年男が鼠に剣を振り下ろす。
「ピィ」
鼠は素早く剣を避け、振り下ろされた剣は足場にぶつかり金属音が鳴る。
「さすがに素早いな」
「それでも時間をかければなんとか討伐ができるでしょう」
「うむ、先に進むぞ」
「……………………………何かきこえませんか」
「うん?私も年でな、よくわからん、お前さん先を歩いてくれないか」
「そうですね………」
中年の男はランタンを持って下水道奥の暗闇へと消える。
数十秒後。
「ギャアアアアアアアアアアアアア、こっちに近寄るナアアアアアアアアア」
中年男の悲鳴が木霊する。
老人は狼狽える
「いったい、どうしたというのじゃ」
ふと暗闇から、一匹の鼠が現れる。
「うん?」
「チュン」
そしてそのあとすぐに、もう二匹、左右から同様の鼠が姿を見せる
「「「チュン」」」
やがて、数えきれないほどの鼠が老人を見据え、血に染まった前歯を見せる。
その顔は心なしか笑顔にも見える。
「キシャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア」
「ひいいいいいいいいいいいいいいいいいい」
鼠たちが老人に襲い掛かる。
数の暴力に成す術なく老人はやがて骨となる。
その背後には鼠たちを束ねる下水道の王、ジャイアントラットが不敵な笑みをうかべていた。




