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チャンス

 俺が仕事を終え、パブに入ると足元に人間族の男が倒れていることに気が付く。


 「おい、大丈夫か」


 「おう、ビールもう一杯」


 中身の入っていない木樽ジョッキを振り上げて大声で叫ぶ人間の冒険者。


 黒髪に無精髭の大柄の男で黒い金属鎧を着用している。


 「あぁ、わかった」


 俺は適当な席にその男を座らせて、心配とは思いながらもビールを一杯奢る。

 

 「ぷはぁ、生き返った」


 「酒臭」

  

 俺は思わず顔をしかめる。


 「おい、お嬢ちゃんビールを2杯」


 「いや、俺これから仕事。ていうかまだ飲むのかよ」


 「まぁ、安酒だが飲んでいけ。俺は酒の恩は一生忘れん」


  そういって大笑いする。


 「聞いてねぇし」


 「まぁ細かいことは気にするな、溝さらい」


 「その呼び方は好きじゃない」


 「お前の名は」


 「リョウという」


 「ふむ、珍しい名だな。出身は」


 「多分言ってもわからない遠い国から来た」


 「ふーん」


 「仕方ない、今日は休みにするか」


 「お、酒を酌み交わす気になったか」


 「まぁな。でも今日の生活費はお前が払えよ」


 「もちろんだ、いくらだ」


 「64Gだ」


 「それくらいなら、ほれ」


 冒険者はポケットからあっさりとその金額の貨幣を机に置く。


 「つまみはいいのか」


 「一人で飲むよりはいい、お前の国のことを酒のあてとして聞かせてくれよ」


 「そうだな、俺の国は…………」


 しばらくの間、その冒険者と他愛のない話をした。


 「そうだ、肝心のことを忘れていた」


  黒鎧の冒険者は口元についたビールの泡を手の甲でぬぐって話し出す。


 「なんだ、お前の仕事の話か」


 「そうじゃねぇ、酒の恩の話だ」


 「いいさ、こうして話せれば」


 「そうもいかねえ」


 「義理堅い奴だな」


 「おう。お前、なんか困っていることはないか」


 「そうだな…………強いて言えば、剣を誰かに教えてほしいなぁとは考えている」


  馬鹿にされ続けて、正直腹に据えかねた思いは、いつしか強者への憧れへと昇華していることに苦笑しながら、俺は呟く。


 「ほう、今、この世は剣一本で成り上がる時代だ。お前がそう思うのも無理はない。だが俺は練兵を仕事にしているんだがな。これが教え方が我ながら下手くそでな、説明がどうも感覚的でいけねぇ」


 「そうか」


 「そんな悲しそうな顔するなって、ほらこれをやる」


 差し出されたのは小さな鍵だった。


 「これは?」


 「お前さんは溝さらいばかりやっていて知らないだろうが、冒険者というのは決闘場という戦闘が許可された施設が誰でも使えるようになっている」

 

 「へぇ」


 「この鍵は、決闘場内で使用出来る模擬戦闘用の機械、通称“無名騎士”が設置されているロッカーのカギだ。俺にはもう必要ないから、お前にやるよ」


 「ありがとう」


 「せいぜい励めよ。その無名騎士を倒す鍛錬を積み重ねればいつかはきっと英雄になれるさ」


 そう俺の肩に軽く手を当てるとそそくさと彼はパブを後にする。


 やっと俺にも強くなるチャンスがやってきたと俺はその鍵を力強く握った。  


ここまで読んでくださり感謝です。


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