閑話 お転婆貴族リレン
人通りの中を一人の少女と侍女が歩く。
「なぁ、イシル。なんか面白いことないか」
「私はただの侍女ですよ、無茶言わないでください、そもそも城を抜けること自体
が」
「冒険だっていうんだろ」
「その通りなのです」
「私は冒険が大好きさ。特に危険いっぱいなのがな」
「命知らずですね」
「あぁ、自分の命の価値が本当に試されるのなんて、スリルを味わっているときくらいさ。だから冒険者という職業を目指す輩は腐るほどいる」
「まぁおっしゃりたいことはわかります」
「あぁ何か、楽しいことないかな。私のこの好奇心、強い者への憧れを満たす冒険者に出会えれば嬉しいな」
琥珀色の瞳に、赤よりの紅色のセミロングヘア―を風になびかせ、リレンという少女は街を散歩する。
後を追って、黒髪の熊のような丸い耳をした侍女を連れて。
しばらく歩いた先の串焼き屋で彼女は肉の串焼きを頬張りながら、屋台の店主と会話する。
「なぁ、親父、最近面白い冒険者が現れなかったか?」
「うちは情報屋じゃないぞ、たく。具体的にどんな奴だ?」
「こう、別の国から来ました新入りですって感じの奴」
「一流ギルドから追放された男がギルドに現れたな。溝さらいばっかりやっていたり鼠退治をしたりして、一時期、一部の客がからかっていたな」
「それはどんな奴だ」
「いい奴だよ。溝さらいから鼠退治までやってくれている。俺たち住民からしたら、あぁいうのが理想的な冒険者だな」
「で、そいつは強いのか?」
「誰もそいつと決闘したことないし、その兄ちゃんはものすごく心が広いからな、ちょっとやそっとのことじゃ、決闘の申し込みは受けないと思うぜ」
「なるほどな」
そういって彼女は店を後にする。
「おい、嬢ちゃん勘定まだだぜ」
「突然、すみませんでした。リレン様、お待ちください」
侍女は店主に金を払い、先行く彼女の後を追う。
「まったく、お転婆な姫様だぜ…………気をつけろよ、溝さらいの兄ちゃん」




