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鼠退治の結果

 翌日の早朝に下水道に向かうと、肉団子の周辺で鼠の死体が転がっている。


 「やった!」


 俺は100Gで購入したショートソードで弱った鼠を殺し、その後鼠の尻尾を切り落とす。


 尻尾の入れた服をギルドへ提出すると、エルさんは


 「合計で1000Gですね、お疲れさまでした」


 溝さらいを終えた後、俺は経費を払って宿屋で考える。


 「あれ、これめちゃくちゃおいしい仕事だな」


 だがそう思えたのは最初の三日だけだった。 


 世の中はそんなに甘くはないのだ。


 鼠退治を初めて四日目の朝。


 鼠たちは毒草の免疫を三日でつけており、多少動きが鈍るだけで、致命傷にはならなかった。


 この時の俺は、1000Gでロングソードと革鎧と革のヘッドギアを装備している。


 やはり下水に生息するだけあって生命力と繁殖力は魔物といっても過言じゃない。


 加えて下水道では魔法が使えないでほかに受ける冒険者もいないから、正直心細い。


 「だが、個体の強さはそれほどじゃないから5体ずつ薙ぎ払えばなんとかなるな」 


 剣術の基礎を鍛錬で習得した俺は、とびかかる鼠を薙ぎ払い、腕や足にくっついた鼠は壁や地面にたたきつける。

 

 革の鎧で完全に防御しているため、ヒーリングポーションを購入したことは無駄かと思った頃。


 ズシン。


「何の音だ」

 

 ズシン、ズシン。


「地震か。いや音がだんだん近づいてくる」


 やがて目の前に全長4m位の大型の鼠が姿を現す。


「なんだ、こいつは……」


「シャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア」と叫び、そいつは俺に襲い掛かる。


 一方その頃ギルドでは、エルが忙しなく働いている。


 「えっとそのお二人の死因は、そうですかラットに」


 二人の住民が、自主的に鼠退治をしたことに彼女は違和感を覚えた。 


 魔物で数が多いとはいえどもラットは人を二人も殺すほどの残虐な個体ではなかったはず。


 彼女は被害報告のレポート作成のため書類をめくっていると、一枚の書類が、机から彼女の足元に落ちる。


 それを拾った彼女はその書類の内容を読み上げる。


「個体名ジャイアントラット。主に下水道に生息し他のラットを指揮する危険な大型個体。登録から1年未満の冒険者では討伐は非常に困難、要注意。その個体レベルは4」


 ハッと彼女はそこまで読み上げて顔を上げる


「リョウさんが危ない!」


 ※ ※ ※

 

 下水道にて。


 俺は、ロングソードとショートソードを構える。


 奴は、不快な歯ぎしりをしながら、こちらへ爪で攻撃をするが、空振りする。


 その隙を狙って、俺は攻撃をするも、さすがは鼠といったところか、素早くこれを避ける。

 

 「ちくしょう!」

 

 続いて、大きな出っ歯で噛みつこうとするも俺は難なくそれをかわす。


 次に俺は、奴の尻めがけて武器を振るう。


 肉の避ける感触に確かな手ごたえを感じる。


 「やったぞ!」


 悲鳴をあげて奴は尻尾で攻撃するが、俺は、上に飛び避ける。


 だが、俺のロングソードは奴の爪にはたかれてしまう。


 俺は続く奴の攻撃を避けながら、攻撃する。


 寸前のところで避けられ、奴は体当たりするが俺はしゃがんで避けて応戦する。

しかし、敵はこれを避ける。


 この後の追撃をかわし、さらに俺の攻撃はかわされる。さすがに鼠だ。でかいくせに無駄に素早い。


 実戦は初めてなので、避けては避けられてしまう。

 

 攻撃、回避、攻撃、回避、攻撃、回避————。

 

 そんなやりとりを長時間行う。


 「しぶとすぎるだろ……鼠の癖に……」

  

 肩で俺が息をし始めた頃、ようやく奴の胸にショートソードを突き刺すが痛みに激高した奴は俺にタックルし、俺は壁にたたきつけられ、軽い脳震盪を起こす。


 すかさず、奴は俺の首筋をかもうとするが、左手で俺はとっさにかばう。

 

革鎧越しに奴の歯が貫通し、痛みに顔をゆがませ霞む視界の中で甲高い奴の鳴き声が鳴り響く。


 そして手下の鼠どもを20体よびだして、俺は慌てて、化け物に突き刺さったショートソードを右手で押すと、今度こそ倒れる。


 倒したのも束の間、手下の鼠どもが俺の手足に噛みつく。

 

 それを何とか振り払って、ショートソードを捨ててロングソードを拾い、雑魚どもを斬り殺す。

 

 激しく出血する左手をかばいながら俺は死への恐怖を抑えるように叫んだ。


 ギルドにて。

 

 エルは多くの冒険者に声をかけるも、冒険者同士は助け合うのが掟なのにもかかわらず誰もリョウを助けない事実に嘆息した。

 

 彼女は自分の無力さに下唇を噛み、両こぶしを握る。

 

 「あの人が一体あなたたちに何をしたっていうんですか」

 

  恨めし気に彼女は低い声でつぶやく。

 

 ふと、ギルドの入り口から誰かが入る。

 

 ふらふらになって、やがて前のめりに倒れる彼の元へ私は駆け寄る。

 

 「リョウさん!?」

 

 「すごい熱、まさか」

 

 「……エ……ル……さ」苦しそうに彼は声を出す。

 

 「喋らないで。誰か、神官を呼んできて、早く!」

 

 同僚たちに視線をやるとすぐに教会へと向かう。


 「しっかりしてください、リョウさ……リョウ!」


 薄れゆく意識の中でリョウはエルを悲しませたことを後悔した。 


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