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とある悪魔の転生記  作者: 柚花
第一章 幼少期
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悪魔と真相!

遅くなってすいません!


「最初に二人、特にリシュリュー君に謝っておく。……本当に申し訳なかった」


お風呂から出て居間のテーブルに座ると、開口一番にアドラさんが謝ってきた。私はいつもの自分の寝間着に着替えているし、先にお風呂を出ていたリシューさんはお父様のパジャマを袖を折って着ているが、アドラさんはドレスをまだ着たままだ。アドラさんの真剣な様子を見てると申し訳ないのだが、私たち二人は完全にリラックスモードである。つまり、眠いのである。私もリシューさんも、やっと人心地がついて目がとろんとしてきた。


「それで今回の一件は、……何だか二人とも眠そうだな。やはり今日は色々あったから疲れているだろう」

「えぇ、まぁ…。僕はともかく、セーラはまだ小さいのだから、話は明日にできないだろうか…?」

「うーん、そうしてやりたいのはやまやまなんだが、キアスたちが帰ってくる前までには知っておいて欲しいからなぁ。……こうなると思っていいものを用意しておいたぞ」


アドラさんは突然立ち上がると台所の方へ飛んで行き、約十分後に二つのマグカップを持って帰ってきた。湯気の立っているマグカップの表面はクリームとシロップで覆われており、甘い香りが漂っている。


「アドラ特製の眠気覚ましの茶だ。濃く煮出してあるからセーレスフェリリアちゃんでも飲みやすいように生クリームと蜂蜜を入れておいたぞ。私の趣味は茶を嗜むことでな、味は保証しよう」


そう言って自信満々にカップを私たちの前に置いた。カップからは暖かそうな湯気が立っていて、表面を覆う柔らかそうなクリームと、その上にかかっている蜂蜜が部屋の明かりに輝いていた。

正直、食事を摂ったばっかりだからお腹はあんまり減ってないのだが、甘い匂いを嗅いでそんなの関係なくなった。甘いものは別腹だものね。夕食では肉類に全く手をつけなかったリシューさんもキラキラと目を輝かせている。多分、リシューさんも甘いものが好きなんだろう。

熱いから気をつけて、と言うアドラさんの言葉に従って、スプーンでよくかき混ぜてから息で冷まして飲んだ。


「「いただきま、ブフーーーッ!!!……ギャァァァァァ!!!!」」


舌が、舌がぁぁぁぁぁ!!!舌が融けるぅぅぅぅぅ!!!!

あまりの痛みで目の前がチカチカし、口からは焼けるような、痺れるような痛みが押し寄せてきて最早味などわからない。

き、貴様ぁぁぁ!!何を飲ませたぁぁァァァァァ!!!?

突然、ガタンッ、という音が横から聞こえてきたのでなんとか横を見ると、霞んだ視界の中でリシューさんが椅子から転げ落ちたのが分かった。


「りじゅーざん、だいじょうぶでずが!?」

「リシュリュー君、大丈夫か!? どこか具合でも悪いのか!?」


いや、あんたが言うな!と激しくつっこんでやりたかったが、あまりの痛みに言葉を発するのも苦しい。リシューさんの様子を見ると、意識はあるものの喋ることができなさそうな様子から、あの劇物をちょっと飲んでしまったのかもしれない。

慌てているアドラさんに水をくれ、と言うか言わないかのうちに、またしてもフェードアウトしてしまった。



数時間後。意識を取り戻した私とリシューさんは冒頭よりも真剣さを増したアドラさんの謝罪を聞いていた。まぁ、冒頭と違って感じる罪悪感は皆無であるが。

でも、いくら真剣に謝られても、被害者側は二人ともたらこ唇な上に氷をしゃぶっているので緊迫感は皆無である。平謝りして謝るアドラさんを見て溜飲も下がったので、満足した私たちは謝罪を受け入れて、アドラさんに妖術で腫れた口を治してもらった(私は悪魔なのでリシューさんに治してもらった)。


「本当にすまなかった。いつもはヒナに味見をさせてから振舞うのだが、ここにはヒナはいないし、自信作だったのでついそのまま出してしまった。まさか失敗作だったとは」

「「……」」


ヒナって、何のヒナだよ。自分の趣味の為に動物虐待をしているのか、なんて残虐非道な。

青ざめながらリシューさんの方を見ると、リシューさんも私と同じくらい青ざめている。この話題はこれ以上突っ込まない方がいいと判断した私は話を本筋に戻すことにした。


「ところで事情の説明の方は……」

「あ、ああ、そうだったな。二人とも眠気はすっかり覚めたと思うから、長い話になるが聞いて欲しい。まず、この一件の背景には聖騎士団と私たち悪魔とのことが絡んでくる。……二人とも、聖騎士団のことはどれくらい知っている?」

「聖騎士団ですか? えーと、悪魔にはかなわないので、契約者や悪魔の子供を狙って殺戮していくオソロシイ人たちだと聞いてます」

「……誰に聞いたんだ、それ…?」

「おそらくキアスにだろう……。まぁ、間違ってはいないんだが、後で注意しておく……」


本当は本から得た情報とお父様の話を元に私が独自に解釈したんだけど、とてもそんなことは言えないほどリシューさんとアドラさんの顔が強張っていたので訂正できなかった。ごめん、お父様。


「ともかく、聖騎士団はセーレスフェリリアちゃんの言うように、悪魔から民を守るために統一教会の名の下、今から約五百年前に結成された組織だ。だが、統一教会の直属と言っても、悪魔のほとんどはリーチェル王国でしか暮らしていないため、実際は統一教会の名を冠しているだけのリーチェル王国の騎士団だな。今の聖騎士団長もリーチェル王国の王子だと聞くし。それに、悪魔を倒すといっても人の身には難しいため、普段は自警団とさして変わらないと聞く」

「へー」


聖騎士団の話はお父様からちらっとは聞いてたけど、こんなに詳しい話は初めてで興味深い。でも、今回の一件とどこで接点を持つのか分からないんだけど。随分遠回りして話すなぁ。

そんな風に思ってたのが顔に出たのか、リシューさんにあやすようにポンポンと頭を撫でられてしまった。


「聖騎士団の者たちは、最初は見かけた悪魔に決死の覚悟で挑んではコテンパンにされる、ということを繰り返していたのだが、契約者の印と悪魔の子供の無力さを知ってからは討伐対象をそちらに切り替えた。しかし、悪魔の子供は常に親や他の悪魔に守られていたため、私たちが恐れるような事態は起きなかった。数年前まではな」


そう言ってアドラさんは言葉を切り、辛そうな表情を見せたが、お茶(リシューさんが淹れ直してくれたので無害)を一口飲むとまた元の表情に戻って話し続けた。

ちなみに私はお茶の代わりにお水を飲んでいます。さすがにさっきああなったばかりでお茶を飲めるほど神経は図太くないよっ!


「だが、ここ四年間の間に、三人の悪魔の子供が殺された。一人は七歳の女の子で、残り二人は三歳と四歳の子供だ。三人とも保護者が目を離した一時間程度の間に殺されている。しかも、悪魔の家の周辺でだ。明らかに今までの聖騎士団とは違う手口だ」

「本当に聖騎士が殺したと言えるのか…?」

「どの遺体も目を奴らが神聖術と呼ぶ光魔法の一種で潰された後に首を落とされている。森の動物はそんなことはできないし、しない」

「そうか…。疑って申し訳ない…」

「いや、気にするな。……子供は私たちの宝だ。敵がいるのなら排除するまでだが、最近の聖騎士団の手際は鮮やか過ぎて気味が悪い。そこで敵方を探ろうとしたのだが、聖騎士団に潜入しても、子供の周りに警備網を張ってもほとんど何もわからなかった。まず、親たちが子供を外に出さないよう、決して傍から離れないようにしたので、聖騎士団が子供を殺すような動きを見せなかったからな。そこで行き詰まっていたところに、ラウが提案をしてくれたのだ。知り合いに聡い悪魔の子がいるから、その子を囮にしよう、と」

「はぁ?」

「つまり、セーレスフェリリアちゃんは囮で、リシュリュー君は偶然市場にいたから、念のためのボディーガードにするために、私たちの事情に巻き込んでしまったのだ」

「「はぁぁぁぁぁ!!!?」」


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