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「三国と久里浜君に告白されて振りました」
「……え?」
帰り道。
今日は三国や久里浜君とは一緒ではない。いや、もし一緒だったとしてもこの、駅から自宅までの道のりは私と黒斗しかいるはずがない。何故なら三国は駅前で、久里浜君は一つ前の駅で帰り道が別れてしまうからだ。
しかし、車内や学校から駅までの道のりにはいくらか人通りが有ったため、どちらにしろこの話は出来なかっただろう。
中学生のときは本人より前に相手の子に言われ、要らない混乱を招いてしまった。
人の振り見て我が振り直せ。同じ間違いはしない。
さて、いい加減結論を出そう。
私、八神真白は。
「黒斗が好きです」
「ごめん、話が見えないんだが」
久里浜と三国が告って振られて、俺が告られて……あれ? 誰に? とかぶつぶつ呟きながら住宅街で両手で頭を抱え悩む。
時折「分かんねー!」などと空を見上げながら叫ぶものだから、端から見ると変な踊りを踊っているように見えなくもない。言葉が通じなければ呪文や奇声を発しているようにも聞こえ、より異国の変な踊りっぽくなるだろう。
……現地の人達がやるとある種の芸術みたいになるのに、そうじゃない人だと完全に不審者だ。
私は幼馴染みが不審者になるのを防ぐため、順を追って説明した。
「なるほど。お前が久里浜と三国に告られて振ったと」
「うん。それで――」
「じゃあ付き合うか」
「は?」
ハナシガ、トビマシタヨ?
「だって真白、今フリーだろ」
「まあ、そうだけど」
誰かさんと違って今どころか今までずっとフリーですけど何か?
「だから俺と付き合おう」
「何故に『だから』?」
「お前の隣に誰かがいるとスゲームカつく」
「……あっそ」
「今の話聞いて久里浜や三国がお前の隣にいるのを想像したらバットで殴りたくなった」
「それは野球部としてどうなんでしょう」
「よく知らねー奴だとイマイチ実感沸かなかったが、今分かった」
ピタリと足を止め、黒斗が真っ直ぐにこちらを見る。
つられて私も黒斗の方を見つめ返した。
「俺はお前が好きだ。付き合おう」
「はいっ」
「て、うわ」
私は素直に黒斗に抱きついた。
だってほら。女の子ですもの。ここはこうするべきでしょう?
決して嬉しさ余ってなんかじゃない。
「ええと……」
「何かな?」
黒斗は仄かに顔を赤くし、俯きながら私の背後を指差した。
視界に映る背景から嫌な予感を感じつつ、後ろを見ると……。
「あらぁ、もうちょっと出てくるの、遅かった方が良かったかしらねぇ」
「でも、お夕飯冷めちゃいますしねぇ」
「……」
なんてことでしょう。二人とも母親に告白現場を見られてしまいましたとさ!
「ごめん、俺も今気づいたんだ……」
「……仕方ないよ……」
八神家と七瀬家の今日の食卓は大いに盛り上がることだろう。




