表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
婚約破棄された病弱伯爵令嬢は頭脳が最強だったので、療養先でこっそりと逆転の機会を狙ってみました!  作者: 悠木 源基


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
6/18

第6章 王子と毒


 根を含めて『ドラノミン草』を全体的に調べて直して欲しいと私はフランドル殿下に依頼した。それを彼は受け入れてくれた。

 その結果、根から有毒な成分が検出されたのだ。

 根っこの少しだけ薄紫色になっている部分にだけ毒が含まれていたのだ。

 そしてその毒に付けられた名前が『エトバス』で、今各国で問題になっているというわけだ。


「新しく発見されたものには、普通発見者の名前が付くものだ。『シャーリー()()()()』と付けようかな」


 と殿下は意地悪くおっしゃった。母親を殺した毒の名を自分の名前にしようなんて考える人間がいるだろうか? 

 イカれた発想だわ。だからこう言ってやったわ。


「『フランドル()()()()』の方がよいと思います。実際に見つけられたのは殿下ですから」


「君も言うねぇ。よし、それでは『エトバス』にしよう。僕がぜひともこの毒の被験者になってもらいたいと希望している、とある人物に敬意を込めて」


 殿下はにっこりと笑みを浮かべて言った。その被験者候補が、エトバリーナ側妃殿下を指すことは丸わかりだった。

 自分の息子を王太子にしたいがために、正妻の産んだ王子を何度も殺そうとした女。国王が溺愛していた寵妃。

 しかし、今から二年前にその側妃は亡くなっていた。死因ははっきりせずに、突然死だと発表された。


 国王は自分の息子が何度死にかけても、ろくに原因を調べようとはしなかった。だから妻の検視も同様で良いと、担当者は考えたのだろう。

 彼らだって仕事にプライドを持っていたはずだ。それなのにいつもきちんと調査をさせてもえなかったらしいから。

 身から出た錆。ざまあみろと私は思ってしまったわ。

 

 でも、側妃の死因は『エトバス』だったのではないかと、今思い至った。

 世界各地で原因不明の毒による不可解な事件が起きているという。

 その不審死についての死体検証結果は、各国で共有され原因究明に取り組んでいるらしい。それを先生から聞く限り、どれも母と似ている症例のように思えた。

 だとすれば使われた毒はやはり『エトバス』である可能性が高いだろう。


 そして、もし側妃が亡くなったときの症状がそれらと似ていたとしたら……そして私の母の症状とも似ていたら……『エトバス』というの毒が『ドラノミン草』の根の毒というの可能性が高いということよね? 


 そうなるとその毒の出どころは我が国の薬剤省以外に考えられない。

 そもそも闇で囁かれている毒の名前が本当にフランドル殿下が命名した『エトバス』と同じだとしたら、関係者が外で漏らしたとしか考えられないもの。


 そして死亡時期を考えると、側妃はその『エトバス』の毒による被害者第一号(モルモット)だと考えるのが妥当だわ。こればかりは死亡診断書を確認しなければわからないけれど。


 もちろん私は第二王子を疑っているわけではない。

 あの方はたしかに側妃を殺したいほど憎んではいたはずだけれど、そんなリスクを負うような真似は絶対にしないと思う。

 変人の変わり者ではあるけれど、頭脳明晰だから。それに殿下は本当は心根のとても優しい方だし。


 そもそも殿下が側妃殿下を『エトバス』で殺めたとしたら、その薬を他で使用するわけがないわ。せっかく死因が特定されなかったのだから。

 しかも毒にあの名前をわざわざ使うはずがない。おそらく毒薬の密売人は薬剤省の人間か、さもなくば王子の側にいる人ってことだわ。


 殿下はこのことをご存知なのかしら? 確認したいけれど、黒幕が側にいるかもしれないのだから、私も迂闊なことはできない。

 仕方がない。マクレミアン伯爵家の家令マーナスに頼むしかないわね。殿下は月に一度は領地の屋敷というか畑に現れるだろうし。


『エトバス』と思われる毒が各国に流通していると思われること、そしてその毒がアシュフォード様に使用された可能性があること。 

 私はその疑惑を三通の手紙に認めて、それをまとめて母の実家であるマンシーニ子爵家へ送った。そして領地にいる家令のマーナスと、王都にいる執事のハリスンへも届けてもらった。

 我が家の使用人のことは信用しているけれど、父親やあの人、そして薬剤省の人の目に留まってしまうと面倒なので、確実に渡るように手配したのだ。

 伯父や従姉妹のセリーヌに任せればどうにかなるだろうと。


 

 そしてそれから間もなくして、私はロウランド子爵夫人からアシュフォード様の世話を命じられた。

 つまり、こちらにきて半月ほど経ち、私の体調が回復したと判断した彼らは、客人であるはずの私に介護人の仕事をするように強制してきたのだ。

 父を見下しているせいなのか、それとも父も同意しているからなのか、それは分からなかったが。 

 もしかしたらあの愛人に私を貶めるように、とでも言われていたのかも。

 


 私のチョコレート色をした髪は重たく見えるほど豊かだった。しかし、青白い肌に薄い茶色の瞳、そして痩せ気味の私の容姿は、一見すると儚げで、守ってあげたくなるような見た目らしい。

 つまり言い換えば、人に逆らわずに言いなりなるような人間に見えるらしい。

 実際にこの屋敷に来てからずっと、私は彼らには一切文句を言わず、逆らわなかった。だから私を見た目どおりに御し易い人だと思ったに違いなかった。


 しかも私の父親とあの愛人から、私が人に逆らわない大人しい娘だとでも聞いていて、それでアシュフォード様の世話をさせようと思ったに違いない。

 使用人に余計な世話をされるより、病弱な娘を付けておけば、最低限のことだけしかしないだろうと。


 友人達からはよくこう言われたものだわ。


「見た目詐欺よね。おとなしそうに見えるけれど、よく観察すると意志の強そうな目をしているし、キリッとした口元は負けん気な性格を表しているわ」


 と。いや、騙すつもりなんて最初からないのだけれど。


「自分が庇護欲誘う雰囲気を醸し出しているくせに、困った人を見捨てられないお人好しよね」


 従姉妹のセリーヌからはそう言われていた。

 しかし私は使用人に育てられたようなものなのだ。そんな私が他人に対して偉ぶったり、見下すはずがない。

 それに困っている人に手を差し出すことは当然ではないか。私は虚弱だけれど、精神的にはひ弱ではないのだし。


 けれど私は決して善人などではないし、人に言われるほどお人好しという訳でもないわ。

 何せ父の家族を破滅させてやろうと考えているくらいなのだから。 

 そしてロウランド子爵家と『エトバス』という毒の繋がりを暴き、彼らを破滅どころか壊滅させるつもりなのだから。

 もちろん、それは()()()()だけだけれど。

 次章は今夜21時の予定です。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ