第15章 駆け引き
25日7時に予約投稿した第14章を、後になって話の流れが分かりにくいことに気付き、改稿しました。新たに付け加えた文章もあります。
文章量が少し多めだったので、後半部分をこの第15章として投稿し直しします。
すでに改稿前の文章を読んでくださった方も多いと思うので、15 章の後に続けて16章を投稿する予定です。
本当に申し訳ありません。
よろしくお願いします。
ー 王城で会ったその一月ほど前に話は遡る ー
密輸グループと第二王子暗殺未遂事件の犯人が逮捕された後、私は王都に戻る前に自分の領地に立ち寄った。
そこへ偶然なのかわざわざだったのかはわからないが、フランドル殿下が現れて、協力してもらった褒美を与えたいが、何か望みはあるかとお尋ねになった。
私はこれ幸いと、ロウランド子爵領をアシュフォード様に継がせて欲しいと願い出たのだ。
彼とその使用人はかなり優秀であるので、彼の地を今よりむしろ豊かにしてくれるに違いないから。
それが無理ならば、新しくマクレミアン伯爵領の領主になる方に、彼らを雇ってくれるように口添えをしてもらいたい。
アシュフォード様と執事レックスさんはすでに『ドラノミン』の秘密を知ってしまっているし、優秀な彼らにこの地を管理を任せれば安心だ。彼らほどの適任者はいないはずだと私は力説した。
しかし犯罪者の息子をそのまま領主にすることはできないし、マクレミアン伯爵領の領主は私以外にはいないと却下されてしまった。
私だって犯罪者の娘だと主張した。しかし、父親とは彼の犯罪が摘発される前に縁が切れているから問題ない、そう殿下は言い切った。
そもそも裁判は未公開だったので、妻が薬物の密売処刑されたロウランド子爵とは違い、父の罪は世間にはほとんど知られていないのだ。
私の要望が却下されたことは、当然と言えば当然の結果だった。
アシュフォード様達だって全て覚悟の上でロウランド子爵家の不正を暴いたのだ。
それは分かっていた。しかし、彼らが罪を犯したわけでもないのに、路頭に迷うことになるなんて絶対に嫌だし許せないと思った。
子どものころに読んだ東の国の本の中に「一宿一飯の恩義」という言葉があったけれど、一晩だけじゃなくて七か月も彼らにはお世話になったのよ。
料理長のロバーツさんは食物アレルギー持ち私だけのために、わざわざ特別メニューの料理を作ってくれた。
一緒に新しい節約メニューをいくつも考えた出して、すっかり料理仲間よ。
三歳年下のメイドのレナは、嫌な顔一つしないで私のアレルギー除去に協力してくれた。
向学心の強い彼女に勉強を教えていたから、私にとって教え子のような存在だわ。
子爵夫人の代わりに家政を回していた侍女頭のマーサさんは、大変頭のよいしっかり者だ。女主の役割を私にしっかり教えてくれたわ。
早くに母を亡くした私にとって、彼女は素晴らしい教師の一人だった。
侍女のスーラは読書好きで、働いたお金のほとんどを本代にしてしまうような女性だった。
彼女にはたくさん本を貸してもらった。そして二人でよく読書談義をして盛り上がったわ。
執事のレックスさんは言わずもがな同志だったし、父親のような優しさを初めて私に教えてくれた。
アシュフォード様は戦友であり、弟子であり、患者。そして今では他人とは思えない、可愛い弟だと思える大切な存在だ。
だから私はこう宣言した。
「そうですか。両家の使用人を全員雇う余裕はないので、それでは我が家の使用人を解雇して、彼らを雇うことにします。
私が当主になるのならば、誰を雇おうが私の自由ですものね」
王太子殿下は瞠目した。そして信じられないというように私にこう問うたわ。
他所の領地の使用人のために、これまで自分のために誠実に仕えて来た使用人を解雇するというのかと。
だから私は平然と頷いてそれを肯定した。
「ロウランド家の皆さんは全員優秀な方々ですが、主が罪を犯して逮捕されたわけですから、当然紹介状は書いてはもらえませんでした。
そのせいで個人の力だけで良い勤め先を見つけることは大変困難でしょう。
それに比べて我がマクレミアン伯爵家の使用人ならば、どんな家でも雇ってもらえるはずです。
彼らも全員、かなり、いえ、超優秀ですから。
そもそも殿下に云わせると、父が罪を犯していても、実は仮の当主だったからという理由で私が当主になれるというのでしょう? でしたら使用人にはなおさら瑕疵なんて付きませんよね?
それならば、どうか王家が彼らのために紹介状を書いてくださいませ。そして良い勤め先を見つけてください。
どうかそれを私への褒美としてくださいませ。家を継ぐことは私にとって全く褒美にはならないので。
なんなら王家が雇ってくださっても良いのですよ? 彼らはお役に立つと思いますよ。
それに……家令や執事以外の使用人が例のことを知っているとは思えませんが、領地で飼われている魔鳥や魔犬などことをつい外で話されてはお困りになるでしょう?」
一気に私がそう言い切ると、殿下は唖然としていた。そしてしばらく沈黙した後でこう口を開いた。
「ロウランド子爵令息のことはどうするのだ。彼のことも使用人として雇うのか?」
「はい。彼は大変優秀ですので、いずれは私の片腕として働いてもらいたいと考えています。そのために来年度は学園に入学してもらうつもりです」
「そうか……」
そう呟くと殿下はまたもや何か考え込んだ。そしてなぜか苦渋の表情を浮かべながら、その願いを聞き届けるかどうか、あと少し時間をくれと言って、そのまま王城へ戻ったのだった。
そして卒業式の二日後に王城で会ったときも、その話は有耶無耶、いや途中で中断されてしまったのだ。
それなのに、まさかその返事を伯父のマンシーニ子爵から聞かされるとは思わなかったので、私は唖然としてしまったのだった。
読んでくださってありがとうございました。
引き続き、第16章を投稿します。




