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救出後の厳重注意/古土さんのお金に執着する理由

 古土さんを含めた3人を助け、無事ダンジョンから帰還し、冒険者組合の個室に連行された3人は。


「うちらのせいで……本当に申し訳ありません」


 古土さんが深く頭を下げる。


「……ごめんなさい、反省してるッス」


 キラキラした星形の髪留めで前髪を止めている、黒髪のショートカットの少女が謝罪した。


「……ごめんなさいなの~」


 のんびりとした口調で話す、前髪が目元が隠れ、後ろ髪はおさげにしている少女も頭を垂れた


 森崎さんにこってりと絞られた古土さんを含めた3人は、涙を流しながらそれぞれ反省の述べている。


「本当に危なかったんですから、しっかりと反省してください。冒険者組合としては今回は厳重注意で終わりですけど、次に問題を起こしたら、冒険者の資格を取るまで、ランクの種類関係なく、ダンジョンに入ることを禁止します。」


「うっ……、わかってます。今回のことでうちも反省しています、……けどダンジョンに潜るしかないんです、どうしてもお金が必要なんです」


 古土さんは歯を食いしばり、苦悶に満ちた表情で答えた。


「そうなんッス、雛っちはたった1人の家族の治療費の為に頑張って稼いでるッス」


「そうなの~、だからそんなひなっちの為に、私たち2人も協力していたの~」


 少女達二人が森崎さんに向かって古土さんの弁解をする。


「それにしては無茶をしすぎです。あと目撃証言には4人となっていますが、あともう1人はどうしたんですか」


 疲れて眠ってしまったルトを膝にのせて、壁際に設置されている椅子で話を聞いていた僕も聞いていた話と違う人数には疑問を思っていた。


「あいつはうちらを囮にして逃げやがったんです、うちには足に魔法を放ってきて動けない様に、千香、凛はあいつに気絶させられて、本当にダメかと思いました」


「本当にッス。これまで戦闘に参加できない代わりに魔物の解体をしたり、必要最低限の装備を整えたり色々な雑用を進んでやって来たのに最後は囮ッス」


「どんなに文句を言われても我慢してきたけど~、これだけは本当に許せないの~」


 それぞれが最後の1人に向けて不満をぶちまける、かなり問題のある人物らしい。


「そんな問題ある冒険者なのにどうしてチームを組んでいたの?他にも冒険者はいるのに」


 だからこそ僕は、疑問に思い古土さん達に聞いてみた。


「資格を持った冒険者は当然レベルが高くて戦闘面では安心できるけど、もしも襲われたら抵抗できないと思うし」


「同じ年代の冒険者のチームを組んでも、当然最後にお金の問題があって時間が掛かるッス」


「その冒険者だけが同じ年頃の中でも飛びぬけてレベルが高くて~、一人だったからチームに入れって言われた時、三人で行動すればまだ大丈夫だと思ったの~」


 何だろう、同じ年頃でレベルの高い冒険者は1人しか思いつかない。


「それって~もしかして……」


「たしかあいつと幼馴染なんでしょ、最上玲次」


 僕は深くため息しながら肩を落とす。


「はぁ~~~~~、やっぱり玲次か、ごめん実は……」


 僕は古土さん達に玲次が僕のステータスカードに細工をされていた経緯を説明する。


「何それ!!要は他人の経験値を横取りしてあんなに威張っていたの」


「信じられないッス、そこまで腐っていたとは」


「灰城君~、苦労してたんだね~」


「……こほんっ、最上玲次については後で上に報告致します、それで、あなた達はこれからどうするのですか?」


 今後の方針について森崎さんが尋ねる。


「……妹の為にも何とかして治療費を稼ぎたいんです。時間は掛かるかも知れませんがEランクのスライムのダンジョンで地味にやっていこうと思います」


「雛っち、当然私たちも最後まで付き合うッスよ」


「そうなの~、一人にさせないの~」


 古土さんの親友達は落ち込んでいる古土さんを励ます。


 その場面に遠慮しつつも僕は、妹の病気について尋ねる。


「その妹さんはそんなに重い病気なんですか」


「一年前に妹と一般向けに魔物の素材を展示しているイベントに見学している時に、泥酔した1人が展示品を持って突然暴れて」


「……一年前、たしかに冒険者組合の主催したイベントで事件がありましたね。」


 森崎さんがその事件を思い出しながら呟く。


「うちと妹も逃げようとしたんだけど、妹がその犯人に捕まって、最後は何とか取り押さえる事に成功したんだけど、最後の抵抗に妹に犯人が持ってた素材が、妹の腕に刺さって、それから妹は、体が痺れて寝たきりの状態なんだ」


「そうだったんだ、……ごめん辛いこと聞いて」


「いいよ、気にしないで。だから病院で治すこともできないし、入院費とCランクポーションを買うためにお金を集めているんだ。Cランクポーションでも効くかどうかわからないけど……」


 無理して笑顔を作る古土さんの顔が痛々しい。


「Cランクポーション……あぁ!!それなら碧君になら治せるかもしれませんよ」


 森崎さんは思い出したように満面の笑みで僕に告げる。


「えっ、そうなんですか!!」


 古土さんは驚愕して僕の方に顔を向ける。


「そうですよ、碧君の職業の見習い聖女が聖女になったんですよね」


 そうだった、指摘されるまで忘れていたけど、家の中を浄化して掃除をしていたら、いつの間にか聖女になっていた。


灰城碧 男


レベル 23


職業 女騎士 魔物女王 聖女


スキル 甲冑召喚 聖剣召喚 スラッシュ 魔物化 眷属作成 ヒール ハイヒール 浄化 結界 


称号 男の娘 スライム殺し 耐え忍ぶもの 魔物女王の卵 聖女


職業ポイント 13pt


職業

聖女  回復系統や結界系統を獲得でき、修行すれば信託を得ることができる。


称号

聖女  厳しい修行を耐え抜き、見習いを卒業した証、回復スキルの能力が上昇する。


 家の掃除が厳しい修行なのか置いておいて、たしかにこれなら治すことができる。


 古土さんは僕の前で土下座をして懇願する。


「灰城!!いえ灰城様!!お願いできる立場じゃ無いのはわかってる。うちに出来ることは何でもする!!だからどうか妹を治してください!!」


「ちょっ!?ちょっとやめてよ、そんなことしなくても妹さんは必ず治すから、土下座をやめてくれない」


 土下座をしている古土さんを僕は慌てて止める。


「大丈夫ですよ、古土さん、碧君は必ず治してくれますよ。私の顔にあった傷も諦めずに最後まで治療してくれた優しい方ですから」


「グスッ、よかったッスね、雛っち。これで治せる目途が立って本当に良かったッス」


「よがっだの~」


「ありがとう、二人とも、本当に良かったよ~~」


 三人が抱き合って泣いている姿を僕と森崎さんは3人が落ち着くまで眺めるのであった。


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