200 「スロウハイツの神様」
こんにちは。
なんと、遂にこの「司書ばなし」も200回を迎えてしまいました。ここまでお付き合いくださっている皆様、まことにありがとうございます。
ただ区切りのいい回だからと言っても、やることは特にいつもと変わりませんが(笑)。
ということで、今回はこちらの本のご紹介を。
ほかの本も読んでいたのですが、今回もまた辻村作品になってしまいました。
〇「スロウハイツの神様」
辻村深月・著 / 講談社(2010)(単行本は初版年2007年)
こちらの本を是非読みたいと思ったきっかけは、少し前にご紹介した辻村深月先生のエッセイ集「あなたの言葉を」でした。
その中で辻村先生は、「これまで書いた人物の中で最も好きな人はだれですか」という読者からの質問に対して「『スロウハイツの神様』のチヨダ・コーキ」と答えたと書いていらっしゃったのです。
となると俄然、「どんな人物だろう」と興味を覚えますものね!
ということでこの夏休み、読むのを楽しみにしていた作品のひとつだったのです。
なお「チヨダ・コーキ」というのはその人物が小説を書くときのペンネーム。本名は「千代田公輝」と書きます。プロの小説家であり、とりわけ中高生からの絶大な人気を集めている、という設定。
物語の舞台は、若き人気脚本家として脚光を浴びている赤羽環がオーナーを務める「スロウハイツ」というアパート。ここに、チヨダ・コーキをはじめ彼のやり手編集者・黒木や漫画家の卵・狩野壮太、映画監督の卵・長野正義、画家の卵・森永すみれなどが集まって共に暮らしています。
そう、それはまさに現代版の「トキワ荘」のように。
チヨダ・コーキだけが少しみんなよりも年上ですが、あとの人たちは大体同じぐらいの年齢。
プロとして人気急上昇中の環は大変な負けず嫌いで気が強いタイプ。彼女がこのスロウハイツにみんなを集めた、いわば発起人です。
このスロウハイツで、それぞれの人の視点からそれぞれの人が抱える過去や悩みが少しずつ明らかに。
やがて、チヨダ・コーキの作風をほとんど真似したような作品を書く作家が現れ、そのことがスロウハイツの面々に疑惑や大きな影響を与えることになり……。
最初のうちは、「ああ辻村先生がお得意の若者たちの群像劇ね……」と読み始めたのでしたが(そしてそれは多分間違っていないわけですが)やっぱりそこは辻村先生。
とりわけ後半で、「やっぱりこれはミステリーなのね!」とほとほと感心する展開が待っています。
何と言っても、その部分がとんでもなく「尊い」。最近風の言葉で言えば「てぇてぇ」ってやつです(苦笑)。
もうね、そこがたまらん……!
「なんと、アレは伏線だったのか……!」とびっくりすることしきりでした。構成の妙ですね、まさに。
若い人たちにとっては、どうにかして夢を実現させようと苦しみ悩みもがくそれぞれの人物に感情移入しやすいでしょうし、後半のどきどき展開は是非読んでみてほしいです。
また、こちらの作品にはひどく性的な描写や暴力的な描写があるわけでもなく、学校にも置きやすいかと思いました。
それでは、今回はこのあたりで。





