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169 「イン・ザ・メガチャーチ」

 

 こんにちは。

 今回は本のご紹介です。

 それも、今年2026年・第23回本屋大賞でみごと大賞を獲った作品。


 〇「イン・ザ・メガチャーチ」

 朝井リョウ・著 / 日本経済新聞出版(2025)


 朝井リョウ作品はすでにいくつか読んでご紹介もしてきたわけですが、こちらは正直「怖い」感じがとても強いなと思いました。


 テーマは「推し活」と呼ばれる現代日本のオタク・ムーブであり、それにはまってゆく人々と、そのムーヴを作り出し人々の心を「物語」によって魅了し「沼らせ」ようとする側の人々の群像劇となっています。


 自分もオタクの一人を自認しているわけですが、日本のアイドルや俳優の熱烈なファンになったことがなく、少しだけ距離を置いて読むことができました。……とはいえ、あちこち「アイタタタタ」と感じる部分も。


 何人かの登場人物が出てきて、それぞれの一人称視点で物語が進行します。

 最初は、7年前に妻と離婚し、大学生になった娘と月に一度のビデオ通話(それも決して喜ばれておらず、ちっとも会話が続かず盛り上がらない)をするだけになってしまった中年男性。

 彼とその娘、さらにとある若手俳優の謎の死によりショックを受ける30代の女性が主な語り手となります。


 それぞれにいま現在の自分の状態に問題を抱えており、孤独や「居場所のなさ」を感じている人たち。

 それがどのようにアイドルやそのほかの何か(場合によっては陰謀論などにも)に対して強烈な執着を持つようになるのか、またそれを誘う側の人々がどう考えて「物語」を作り出しているのか……が克明に描かれてゆき、本当にうすら寒い気持ちになる物語。

 本当によく現在の日本のファンダムやSNSでの現実を調べているなあと感心します。


 作家としての朝井リョウ氏が世界をどのように見、考えているのかが垣間見える作品。

 どのような感想を持つかは人それぞれだと思いますが、むやみに何かのファンになってしまうことの危うさを実感できるという意味で、中高生が読んでおくのもいいかな……と思いました。

 何が「正解」で何が「正義」なのかが非常に曖昧で、いつでもひっくり返されてしまう不安定な状況は日本だけでなく世界的にも言えることですが、こうした日本の「いま」をしっかりと刻みつけて表現している、まさに今を表現した「文学」だなとも思いました。


 ではでは、今回はこのあたりで。


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