第七話
蒼太「紡、店長をどうにかできないかな? 倉庫とか使えないと不便でしょ。」
紡「どうにか、というのはデバッグですか?」
蒼太「元とはいえ店長だし、いきなり処分するのもどうかと思う。」
紡「ゾンビになってから雇用へ配慮されるとは、店長も予想していなかったでしょうね。」
蒼太「店長を処分せずに『管理者権限の回収』をしてみてよ。」
紡「本人を残して、権限だけ取り上げるんですね。」
蒼太「できる?」
紡「できます。」
「少し早めに、現場から退いていただきましょう。」
「店長を捕まえる?」
女性スタッフが聞き返した。
「はい。処分せず、隔離します」
「でも、音を出したらほかのゾンビも集まりますよ」
栞は売場案内図を確認した。
「先に工具売場を独立した環境へ変更します」
スタッフの案内で防火シャッターを下ろし、工具売場をほかの区画から切り離す。
中に残ったバグは、店長一体だけだった。
栞は資材館からメッシュフェンス、単管パイプ、クランプを運び込んだ。
「単管で骨組みを構築し、メッシュフェンスを固定します。入口は内側へ開く一方向式にして、通過後に自重で閉じるよう傾斜をつければ、外部から接近せずに捕獲できますので――」
「水瀬さん、速いです」
若い男が困惑した。
「DIYの話ですので」
やがて、工具売場の通路に人ひとりが入れる金網の檻が完成した。
栞は奥に目覚まし時計を置き、離れた場所からアラームを作動させた。
「あー……」
店長ゾンビが音を追って檻へ入る。
扉が閉じた。
栞はメッシュ越しに伸縮フックを差し込み、店長の腰から鍵束を外した。
「隔離完了。管理者権限を回収しました」
小田が満足そうにうなずいた。
「それ見ろ。俺は最初から捕まえるべきだと思っていたんだ」
「危険だからやめろと言ってませんでした?」
若い男が尋ねる。
「慎重にやれと言っただけだ」
誰も返事をしなかった。
蒼太「店長、檻に入れられて鍵だけ持っていかれたね。」
紡「適切な権限移譲です。」
蒼太「店長の承認は?」
紡「『あー』と回答していました。」
蒼太「承認だったのかな?」
紡「異議は確認できませんでした。」
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