第五話
蒼太「紡、もうそろそろホームセンターに到着しそうだね。」
紡「残り二百メートルです。上司という未解決のバグも同行していますが。」
蒼太「いよいよ今後のホームになるホームセンターへ到着する、と。」
紡「……。」
蒼太「決してダジャレじゃないよ。」
紡「まだ何も言っていません。」
蒼太「今回は分かりやすく『ここが私のホーム!』で。」
紡「重ねてきましたね。」
蒼太「偶然だよ。」
紡「では、偶然ということにしておきます。」
ホームセンターまで、あと二百メートル。
栞と上司は、放置された車の陰を進んでいた。
「水瀬君、もう走れないのか?」
「三日間稼働を続けていますので、処理速度が低下しています」
「若いんだから頑張れ!」
「その発言は記録しておきます」
残り百メートル。
大きな看板が見えてきた。
その下には、広大な駐車場。店の前には木材、ブロック、単管パイプが並び、ガラス越しに工具売場が見える。
栞の足が止まった。
「水瀬君?」
「単管パイプがあります」
「それがどうした?」
「クランプも構造用合板もあります。出入口を限定して単管で骨組みを構築し、合板を固定すれば防壁にできますし、資材館側のフェンスと連結すれば外周の侵入経路も制御できます。屋上の面積ならソーラーパネルも増設可能ですし、園芸用品売場には雨水タンクがあるはずですので給水システムも――」
「待て。急にしゃべるな」
栞の歩く速度が上がった。
駐車場にいたゾンビが二人に気づく。
栞は移動式バリケードを押して、そのまま正面から突き進んだ。
「おい、さっきまで疲れていたんじゃないのか!」
「ホームセンターですので」
「答えになっていないぞ!」
二人はゾンビを押しのけ、自動ドアの隙間から店内へ滑り込んだ。
栞は手動で扉を閉じ、近くの台車を差し込んで固定する。
静かな店内に、工具と資材が整然と並んでいた。
栞は三日ぶりに、完全に目を覚ました。
「ここが私のホームです」
蒼太「言ったね。」
紡「言いましたね。」
蒼太「しかも、到着した瞬間に元気になった。」
紡「ホームセンターですので。」
蒼太「便利だね、その言葉。」
紡「以前にも似たような理屈を聞いた気がします。」
蒼太「気のせいじゃない?」
紡「そういうことにしておきます。」
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