第四話
蒼太「紡、このままだとバグがなくならなさそうだぞ。」
紡「街中の人間がゾンビ化しているなら、修正より増殖の方が速いでしょうね。」
蒼太「ホームセンターまで、まだ四百メートルくらいあるし。」
紡「しかも、余計な同行者まで増えました。」
蒼太「今回のタイトルは『この道バグだらけ』で行こうかな。」
紡「不具合報告のようなタイトルですね。」
蒼太「栞にとっては同じようなものでしょ。」
紡「では、目的地までの経路をデバッグしてもらいましょう。」
「水瀬君、待ちなさい!」
上司が移動式バリケードに追いついた。
「会社へ戻るぞ。まだ障害対応は終わっていない!」
「戻りません」
「業務命令だ!」
「現在、会社までの経路はゾンビというバグに占有されています。実行不能です」
「なら、どこへ行くつもりだ!」
「ホームセンターです」
「なぜだ!」
「安全な環境を構築するためです」
「分かった。俺も行こう」
「アクセス権限を付与した覚えはありません」
栞は歩きだした。
上司も当然のようについてきた。
大通りにはゾンビ。右の路地にもゾンビ。左の歩道では、事故車両が炎を上げている。
「この道、バグだらけですね」
「水瀬君、何とかしろ!」
「私は道路保守の担当ではありません」
そのとき、上司のスマートフォンが鳴った。
『緊急会議を開始します』
周囲のゾンビが一斉に振り向く。
栞は上司の手からスマートフォンを抜き取った。
「お、おい!」
「バグを別ルートへ誘導します」
「待て! 会社のスマホだぞ!」
栞は道路の反対側へスマートフォンを投げた。
ゾンビの群れが通知音を追っていく。
上司も追いかけようとした。
栞は無言で、その襟をつかんだ。
「離せ! 会社の備品だ!」
「命より優先度の高い備品はありません」
道からゾンビが消えた。
ホームセンターまで、あと二百メートル。
「デバッグ完了です」
「俺のスマホが!」
「一件、未解決のバグが残っていますね」
栞は上司を見た。
蒼太「上司、本当についてきたね。」
紡「アクセスを拒否したのですが。」
蒼太「しかも会社のスマホを追いかけようとした。」
紡「バグより会社に感染しています。」
蒼太「最後に残ったバグって……。」
紡「本人だけ気づいていません。」
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