第二話
蒼太「紡、とりあえず逃げないと話し終わっちゃうね。」
紡「第一話で主人公が死亡するのは、さすがに短編すぎます。」
蒼太「ということで次のタイトルは『安全なところへ』で。」
紡「安全な場所が残っていればいいのですが。」
蒼太「あと、栞はIT関連やSEの用語を多用して話すようにしたい。」
紡「ゾンビをバグ、排除をデバッグと呼ぶような?」
蒼太「そうそう。普段から仕事の言葉が染みついてる感じで。」
紡「分かりました。ただし、専門用語だらけにすると読者との通信に失敗します。」
蒼太「適度にお願い。」
紡「では栞には、現実世界の重大障害へ対応してもらいましょう。」
ホームへゾンビがなだれ込んできた。
栞はようやく、自分も逃げる必要があると理解した。
「このままでは、私までゾンビというバグに感染しますね」
走る通勤客の後を追う。しかし、改札へ続く階段はすでにゾンビで塞がれていた。
「通常ルートは使用不能です。代替ルートへ切り替えます」
栞は駅員室脇の避難経路図を確認した。ホームの端に、業務用通路がある。
問題は、そこまでの経路だった。
目に入ったのは清掃用カート、案内板、ベルトパーティション。そして作業用の結束バンド。
栞の眠そうな目が、わずかに開いた。
「カートの側面に案内板を固定すれば正面からの接触を防げますし、左右にパーティションを取り付ければ押し返す範囲も広げられます。ただし重量バランスを考えると――」
栞の口が突然、加速した。
数分後。
即席の移動式バリケードが完成した。
「では、安全な場所までデプロイします」
栞はカートを押し、ゾンビを左右へ押しのけながら業務用通路へ進んだ。
通路の先に、駅周辺の地図がある。
栞は現在地から五百メートル離れた施設を見つめた。
「ホームセンター……」
三日間死んでいた目に、光が戻った。
「安全確認が必要ですね」
その声は、少しだけ弾んでいた。
蒼太「安全なところって、ホームセンターなんだ。」
蒼太「駅にある物だけで、移動式バリケード作っちゃった。」
紡「まだ応急処置です。」
蒼太「ホームセンターを見つけた瞬間、目が覚めてたけど。」
紡「三日連続徹夜でも、DIYには反応します。」
蒼太「ゾンビから逃げてる人の反応じゃないよね?」
紡「栞にとっては、ゾンビより工具の方が重要ですから。」
蒼太「……ホームセンター、無事だといいね。」
紡「無事で済むといいですね。」
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