第十八話
蒼太「紡、栞って三日間仕事していたんだよね?」
紡「会社に泊まり込みで、バグ修正を続けていました。」
蒼太「そのあと駅から移動して、ゾンビと戦ったりしてたよね。」
紡「ホームセンターに到着してからも、ほとんど休まず要塞化しています。」
蒼太「そろそろ玲奈が何か言いそうなので、タイトルは『ギャルの苦言』で。」
紡「栞本人が気づいていない問題を、はっきり指摘してくれそうですね。」
食事を終えた玲奈は、向かいに座る栞をじっと見つめていた。
「しおりんさ、最後にお風呂入ったのいつ?」
「三日前の朝です」
「そのあと徹夜して、ゾンビと戦って、ずっと作業してたんだよね?」
「はい。ですが、身体は清拭していますので、衛生上の問題は――」
玲奈は無言で栞へ顔を近づけた。
「……問題あるから」
栞がわずかに身を引く。
「臭気を検出されたということでしょうか」
「言わせんなって」
玲奈は栞の腕をつかみ、リフォーム売場まで連れていった。
「ほら、お風呂あるじゃん」
その先には、展示用のシステムバスが置かれていた。
「こちらは給排水が接続されていない展示品です」
「じゃあ、つなげれば?」
「容易におっしゃいますが、給水設備、排水経路、給湯器、専用電源の確保が必要です。それに七名が使用する場合、貯湯容量と再加熱時間も考慮して――」
早口になった栞を無視して、玲奈が女性スタッフへ尋ねる。
「お湯沸かすやつ、売ってないの?」
「倉庫に、納品待ちだったエコキュートが一台ありますけど……」
栞の動きが止まった。
「型番は?」
「え?」
「型番とタンク容量をお願いします!」
倉庫へ走りだした栞の背中を見送り、玲奈は満足そうにうなずいた。
「よし、お風呂ゲット」
「まだ何も完成していませんよ!」
遠くから栞の声が返ってきた。
蒼太「お風呂を作れとは言ってないよね?」
紡「栞が勝手に要件を拡大しました。」
蒼太「エコキュートって聞いた瞬間、元気になったね。」
紡「玲奈だけでなく、女性スタッフも栞の動かし方を心得ています。」
蒼太「もしかして、型番を聞くところまで予想してた?」
紡「納品待ちの在庫まで即答しましたからね。」
蒼太「でも、最初に入るのは栞かな。」
紡「それだけは全員一致でしょうね。」
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