第十六話
蒼太「紡、栞の知り合いみたいだけど、誰だろうね?」
紡「高校時代の同級生、玲奈です。栞を『しおりん』と呼べる程度には親しかったようです。」
蒼太「でも、五人全員を受け入れる余裕はないよね。」
紡「上司が抜けて、空いたのは一名分だけです。」
蒼太「それなら、公平に試験で決めよう。」
紡「何の試験ですか?」
蒼太「ホームセンターで暮らすのに必要な知識かな。」
紡「栞に問題を作らせてはいけない気がします。」
蒼太「今回は『ギャルの来訪』で。」
紡「……公平という言葉は撤回した方がよさそうですね。」
入口にいたのは、五人の生存者だった。
感染がないことを確認したあと、栞は事情を説明した。
「当拠点で長期滞在できるのは一名です。残りの方には物資と避難所までの地図をお渡しします」
「一人って、どうやって決めんの?」
派手な女性――高校時代の同級生、玲奈が尋ねた。
「当拠点への貢献能力を、試験で確認します」
栞が取り出したのは、工具売場の商品カタログだった。
木材の含水率、ネジの規格、コンクリートアンカーの施工方法。
問題は徐々に専門的になり、誰も答えられなくなっていく。
最後に、栞が玲奈へ向き直った。
「問題です! 日本の工具メーカーで、特にソケットレンチやトルクレンチなどの締付工具において世界的に有名であり、その高い信頼性からプロの職人にも愛用されている会社はどこでしょう!」
「あー、そんなん知らんし。えーっとねー……」
栞が食い気味に言った。
「えっ、TONE!?」
「え?」
「せ、正解です……!」
玲奈の滞在が決まった。
「何が?」
「まさか玲奈さんが、ソケットレンチの最高峰であるTONEを即答するなんて……」
「いや、答えてないんだけど」
「謙遜する必要はありません」
「しおりん、話聞いてる?」
残る四人を避難所へ送り出すと、玲奈は栞の顔をのぞき込んだ。
「てか、顔ヤバくない? いつから寝てないの?」
「三日ほどです。ただ、受け入れに伴う情報登録と寝床の追加が――」
「寝な」
「ですが」
「今すぐ」
「……はい」
五分後、栞は展示用ベッドで眠っていた。
蒼太「答えていないのに合格したね。」
紡「採点者が正解だと信じていますので。」
蒼太「でも、栞を寝かせてくれた。」
紡「工具の知識より、この拠点に必要な能力だったようです。」
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