第十四話
蒼太「もう入らないよ。何人ほど来ているんだい?」
紡「十五体ほどです。今回は入店をお断りしましょう。」
蒼太「冗談は置いといて、人手が増えているので何とかなるんじゃ?」
紡「二十五人全員が戦えるわけではありません。子どもや負傷者は安全区画へ移す必要があります。」
蒼太「それでも、動ける大人は増えたでしょ。」
紡「設備と人数はそろいましたね。」
蒼太「今回は『栞らしい戦い』で撃退してみよう。」
紡「栞に戦闘経験はありませんよ。」
蒼太「DIY経験ならある。」
紡「戦場までDIYするつもりですか?」
駐車場へ、十五体のゾンビが近づいていた。
栞は子どもと負傷者を生活エリアへ移し、動ける者を入口へ集めた。
「店外の音源を作動させ、バグを資材館側へ誘導します。ただし、経路を外れた場合に備えて、台車へ構造用合板とメッシュフェンスを固定し、移動式の防壁として――」
「水瀬さん、速いです!」
人々が台車と資材を運ぶ。
やがて、正面入口の前に三台の移動式防壁が並んだ。
防犯ブザーが鳴る。
ゾンビの大半は音を追って、単管バリケードで作られた通路へ入った。
しかし、三体が進路を外れ、正面入口へ向かってくる。
「防壁を前へ!」
大人たちが一斉に台車を押した。
ゾンビが合板へぶつかり、車輪が後ろへ滑る。
「横から来ます!」
ジャージ姿の男子高校生が叫んだ。
家庭菜園が趣味の男が、園芸売場の防獣ネットを広げる。女子高校生も反対側を持ち、二人で走った。
ネットへ絡まったゾンビが転倒する。
若い男と女性スタッフが防壁を押し進め、三体を資材館側へ追い込んだ。
栞が最後のゲートを閉じる。
十五体のゾンビは、資材館の外周フェンス内へ隔離された。
栞は外側のゲートを開く。
駐車場の端で、目覚まし時計が鳴った。
ゾンビたちが音へ向かって歩きだす。
一分後、さらに離れた道路で二つ目のアラームが鳴る。続いて三つ目。
ゾンビの集団は、順番に鳴る音を追ってホームセンターから離れていった。
最後の一体が出ると、栞はゲートを閉じた。
「外部のバグを、すべて強制ログアウトしました」
上司が後方で腕を組んだ。
「よし。作戦成功だ」
誰も返事をしなかった。
蒼太「ゾンビを資材館の外周フェンス内に誘導したけど、何かに使うの?」
紡「いいえ。まとめて店外へリリースします。」
蒼太「じゃあ、捕まえた意味は?」
紡「一体ずつ追い払うより効率的です。」
蒼太「ゾンビのキャッチ・アンド・リリース?」
紡「当店での飼育はお断りしています。」
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