第十二話
蒼太「紡、腹を満たしたら次は睡眠、と言いたいんだけど。」
紡「三日連続徹夜です。今すぐ寝かせるべきでしょうね。」
蒼太「安全面が不安じゃない?」
紡「店内のバグは隔離しましたが、正面入口は案内板で塞いだだけです。」
蒼太「寝ている間に襲われたら困るので、『拠点の強化』をしなくちゃね。」
紡「眠るために、さらに働かせるんですか?」
蒼太「これが終わったら寝られるよ。」
紡「その言葉を、栞は三日間聞き続けています。」
食事を終えた栞は、正面入口の案内板を見つめた。
「これでは、外部からの不正アクセスを防止できません」
「閉鎖すればいいだろう」
上司の言葉に、栞は首を振った。
「完全に閉鎖すると、生存者も入れません」
栞はメッシュフェンスを二重に設置し、入口の内側と外側に扉を作った。
外側は待機区画。中央は噛み傷を確認する検査区画。感染がなければ、内側の扉を開けて店内へ通す。
「二枚の扉は同時に開かない構造にします。どちらか一方が開いている間は、もう一方をロックします。それから人感センサー、防犯カメラ、夜間用の照明を独立電源へ接続して――」
栞の説明が加速する。
反栞派だった男が、非常口を指さした。
「正面が使えなくなったとき、外へ出る経路は残しておくべきだ」
栞は少し考え、店内図へ避難経路を追加した。
「採用します。ただし、外側からは開けられない構造にします」
若い男と女性スタッフがフェンスを固定し、上司が動作を確認する。
最後に、駐車場の反対側へゾンビを誘導するための防犯ブザーを設置した。
「外部アクセス管理システムが完成しました」
「今度こそ寝ろ」
上司が言った。
その直後、監視モニターから通知音が鳴った。
正面入口の外に、複数の人影が映っていた。
蒼太「上司が『寝ろ』って。」
紡「三日遅いですね。」
蒼太「でも、何か起こる前兆が……。」
紡「今度は外部から追加要件が来ました。」
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