表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
39/42

番外編:「最近、水瀬さんが変わった」


「……絶対、

 恋人できましたよね」


 昼休み。


 給湯室で、

 女性社員の一人が小声で言った。


「やっぱり思う?」


「思います!」


 別の女性社員も、

 勢いよく頷く。


「最近の水瀬さん、

 なんか違うんですよ!」


 ◇


 水瀬奏。


 社内でも有名なくらい、

 整った顔をしている。


 清潔感があって、

 仕事も丁寧。


 優しい。


 でも少し距離感がある。


 だからこそ、

 密かに人気が高かった。


 けれど最近。


 明らかに雰囲気が変わった。


 ◇


「まず表情!」


「わかる!」


「前より柔らかくなりましたよね」


「あとたまに笑ってる」


「それ!」


 以前の奏は、

 穏やかではあっても、

 どこか壁があった。


 でも最近は違う。


 スマホを見て、

 ふっと笑ったりする。


 帰る時間も少し早い日が増えた。


 それに。


「マフラー、

 絶対プレゼントですよね」


「わかるーー!!」


 淡い色の上品なマフラー。


 しかも。


 手袋もおしゃれ。


 さらに。


「香水変わりました?」


「あ、

 思った!」


「なんかめちゃくちゃいい匂いしません?」


 女性陣、

 ざわつく。


 ◇


 そこへ。


「お疲れ様です」


 タイミングよく、

 奏本人が給湯室へ入ってきた。


 女性社員たち、

 一瞬静まる。


 奏は気付かないまま、

 コーヒーを入れていた。


 黒のタートル。


 シンプルなコート。


 そして。


 左手の腕時計。


「あ。」


 一人が小さく声を漏らす。


「時計。」


「前してましたっけ?」


「してないと思う……!」


 シンプルだけど、

 明らかにセンスがいい。


 しかも。


 ふと奏が鍵を取り出した瞬間。


 シルバーのキーケースが見えた。


 女性陣、

 さらにざわつく。


(おしゃれ……)


(絶対誰かにもらってる……)


 ◇


「水瀬さん。」


「はい?」


「最近、

 なんか雰囲気変わりましたよね」


 奏は少しだけ首を傾げた。


「そうですか?」


「変わりました!」


「なんか……

 幸せそうというか」


 その瞬間。


 奏がほんの少し止まる。


 それから。


「……そんなことないですよ」


 否定しながら、

 少しだけ笑った。


 柔らかい笑顔。


 女性社員たち、

 心の中で叫ぶ。


(いやいる!!!)


(絶対恋人いる!!!)


(しかもめちゃくちゃ大事にされてるやつ!!!)


 ◇


 奏が給湯室を出ていく。


 その背中を見送りながら、

 一人がぽつりと呟いた。


「なんか悔しいけど納得……」


「わかる。」


「絶対、

 めちゃくちゃ優しい恋人なんだろうなぁ」


「水瀬さん、

 あんな顔するんだね……」


 以前より柔らかくなった空気。


 自然な笑顔。


 大事にされている人特有の、

 安心した雰囲気。


 女性社員たちは顔を見合わせる。


「……幸せそうだったね」


 その言葉に、

 みんな小さく頷いた。



「……いやでも、

 ちょっとショック」


「わかるー……」


 給湯室。


 女性社員たちはコーヒー片手にため息をつく。


「密かに好きだったのに」


「私も。」


「絶対彼女いないタイプだと思ってた……」


「わかる、

 仕事しかしてなさそうだったよね」


 でも。


 最近の奏を見ていると、

 否定できない。


 あの柔らかい空気。


 自然な笑顔。


 誰かを大事にしてる人の顔。


 ◇


「でもなんか、

 嫌じゃないんだよなぁ」


 一人がぽつりと呟く。


「え?」


「だって水瀬さん、

 めちゃくちゃ幸せそう。」


 その言葉に、

 みんな少し黙る。


 それから。


「……確かに。」


 静かに頷いた。


 ◇


「絶対、

 恋人に甘やかされてるよね」


「わかる!」


「マフラーとか、

 似合うの選ばれてる感すごい」


「時計も。」


「あのキーケースも絶対プレゼント。」


 女性陣、

 完全に観察している。


 ◇


「……でもさ。」


「ん?」


「あんな水瀬さん見たら、

 もう応援したくならない?」


 その言葉に、

 みんな笑った。


「わかる。」


「幸せになってほしい感ある。」


「恋人、

 絶対いい人なんだろうなぁ」


 ◇


 その時。


 廊下の向こうを、

 奏が通る。


 スマホを見て。


 少しだけ笑って。


 そのまま返信を打つ。


 女性社員たち、

 全員察した。


(今、

 恋人だ。)


(絶対恋人。)


(顔が違う。)


 奏は気付かないまま、

 そのままエレベーターへ消えていく。


 残された女性社員たちは、

 顔を見合わせた。


「……玉砕。」


「完敗。」


 でも。


 誰かを好きになって、

 ちゃんと幸せそうに笑ってる奏を見たら。


 不思議と、

 悔しいだけじゃなかった。

読んでいただきありがとうございます!

毎日12時に投稿予定です५✍⋆*

続きが気になったら評価やブックマークをお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ