季節番外編 冬:「恋人だからね」
冬の夜は、
空気が澄んでいる。
イルミネーションに照らされた街並みは、
どこか映画みたいだった。
「うわ……」
奏が小さく声を漏らす。
街路樹いっぱいに巻かれた光。
行き交う人たち。
濡れたアスファルトに反射するイルミネーション。
白い息が夜に溶けていく。
「めっちゃ人多い」
玲が笑いながら周囲を見る。
黒のロングコート。
タートルネック。
片耳のピアスが光を反射していた。
一方の奏は、
淡い色のコートにマフラー。
完全に冬仕様だ。
「寒くない?」
「ちょっと寒いです」
「やっぱり」
玲はそう言って、
自然に奏の手を取った。
「っ」
指先が絡む。
恋人繋ぎ。
奏は目を瞬かせた。
「……手、繋ぐんですね」
思わず出た声に、
玲が少し笑う。
「恋人だからね」
当然みたいに返される。
その言い方がずるくて、
奏はまた顔が熱くなった。
「……外ですよ」
「知ってる」
「人います」
「いるね」
「玲さん」
「あはは」
全然気にしてない。
でも、
繋いだ手は離さない。
むしろ少しだけ握り直される。
イルミネーションの中を、
二人でゆっくり歩く。
途中、
ショーウィンドウに映った自分たちが見えた。
並んで歩いて、
手を繋いで。
本当に恋人みたいだ。
「……いや恋人なんですけど」
「何一人で納得してんの」
玲が吹き出す。
「声出てました?」
「出てた」
「最悪……」
奏はマフラーへ顔を埋めた。
その様子を見ながら、
玲は楽しそうに笑っている。
少し歩いたところで、
冷たい風が吹いた。
「っ……」
奏が肩を竦める。
「冷えた?」
「ちょっと」
次の瞬間、
玲が急に手を引いた。
「わ、」
そのまま、
自分のコートのポケットへ
奏の手を突っ込む。
「冷た」
「玲さんが急に引っ張るからです」
「あはは」
狭いポケットの中。
指先が触れる。
近い。
体温が伝わる。
奏の心臓はまたうるさくなった。
「……これ反則じゃないですか」
「何が?」
「距離」
「今さら?」
玲は笑いながら、
少しだけ顔を寄せる。
「でも」
「こういうのしたいから恋人になったんだけど」
さらっと言う。
奏はもう何も返せなかった。
ずるい。
この人は本当に、
そういうことを自然に言う。
イルミネーションの光が、
二人を照らしていた。
歩幅を合わせて歩く。
寒いはずなのに、
隣はちゃんと温かい。
玲はふと、
繋いだ手を軽く引いた。
「奏」
「……はい」
「来年も来ようね」
その言葉に、
奏は少しだけ目を丸くする。
それから小さく笑って、
頷いた。
「……はい」
白い息が重なる。
冬の夜は冷たいのに、
胸の奥だけが、
やけに温かかった。
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