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タンスから現れたのは前世で幼なじみだった魔法使いでした  作者: 碧衣 奈美
第二話 怠惰な魔法使い

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2-07.バルベラという男

 手ぶらの魔法使いを見て、リラックが尋ねた。

「それが、どうやら家には戻っていないようで。他の者は、引き続き捜しに行きました。私は報告のために、戻って来たんです」

 他の魔法使い達は、友希乃が見付かった場所を中心に、街へ捜しに出たらしい。

 それを聞いた飛鳥は、いきりたった。

「絶対、盗んだ金で遊んでるんや。人に害を及ぼしといて遊ぶやなんて、絶対に許せへん。ゆきちゃんの敵は、うちがとったるっ」

「お、おい、ちょっと待てや、飛鳥」

 部屋を飛び出そうとする飛鳥を、三樹利が慌てて止める。

「どこ行くんや。お前、そのバルベラって奴を捜しに行くつもりか」

「当たり前やんか。まず間違いなく、ゆきちゃんをあんな風にしてしもた奴なんやで。じっとしてられへんやん。ゆきちゃんはユニ・ブランが少しずつでも術を解いてくれてるし、そっちはまかせといてこっちは諸悪の根源を見付けるんや」

「無茶言うな。相手は魔法使いやぞ。はち合った時に、友希乃みたいな魔法かけられたらどうすんねん」

「たった一人で行くって、誰も言うてへんやん。みんなと一緒に行くんや」

「やっぱり来るか……」

 横でぽそっと、サンジュリアンがつぶやく。

「それに、うちはここではちょっとやけど、魔法が使えるもん。まるっきりゆきちゃんのようにはならへん。大丈夫や」

 いきなり魔法が使えるから大丈夫、など言われても、三樹利としては安心できるはずがない。

「三樹利、飛鳥は今よりももっと危ない状況の時も、くっついて来たんだ。止めても無駄だと思うぞ」

 前は話も通じない魔物が相手だったが、飛鳥は危険を承知で魔法使いの後を、しかもこっそりとくっついて来たのだ。魔法使い達にとって精神衛生に悪いこと、この上なかった。

「らしいな。話は一応、聞いてる。……わかった、俺も一緒に行く。どうせここにいても何もできひんし、相手の顔も何となくはわかるしな。見付けた時に、その場で証言できる」

 三樹利としても、友希乃の敵はとりたい。それに、飛鳥だけをこのまま行かせられなかった。

「じゃ、行くか」

「ちょっと」

 三樹利をうながすサンジュリアンの袖を、飛鳥はつんっと引っ張った。

「うちが行くて言うた時は、いやそうな顔したくせに。何でみーやんの時は、じゃ行くか、になんねんな」

「何だ。さっきの、聞こえてたのか。何かあっても、三樹利の方が飛鳥よりずっと聞き分けがよさそうだからな」

 飛鳥が詰まっていると、サンジュリアン達はさっさと行ってしまう。

「ちょっと待ちっ。人をだだっ子みたいに」

 追い掛けると、前から声が飛んでくる。

「飛鳥はそれ以上だろ」

☆☆☆

 財布の中には、しばらく飲み食いできるだけの金額が入っている。なくなれば、またどこかの店から少し拝借すればいい。もっとも、返すつもりはない。

 魔法使いの館で魔法道具を盗んだのも、友希乃の記憶を封じたのも、間違いなく彼がしたことだ。

 イルブーリングから来た魔法使い、バルベラが。

 友希乃を連れて歩いたせいで、ずいぶん不愉快な思いをさせられた。

 これまで「人質を連れて歩く」などということはなかったが、それにしてもあんな攻撃的な人質は聞いたことがない。よその世界の人間というのは、少女でもあんなに乱暴的な性格なのか。

 バルベラは気分直しに酒場へ入り、少し高い酒を注文した。

 彼は生来、怠け者である。イルブーリングで魔法を習ったのも「働かずして食べ物を出そう」という魂胆があったからだ。

 何かに利用できるかも知れない、と考えて色々な術を習ったが、特に発揮する場もない。

 と言うより、彼の魔法使いとしての心得が最初から間違っているために、使うべき場でも使わない、というのが本当である。

 場所を瞬時に移動できる転移魔法は、難易度が高い。バルベラの場合、あまり遠くまで移動するには至らなかった。

 それでもその魔法を習得できたのだから、魔法使いとしての才能はそれなりにあるはずなのだが……彼はそれを悪い方面で生かすようになってしまった。

 盗みをする時に、この魔法を利用するのだ。これがあれば、自分の足で走って逃げなくて済む。

 最初の目的である「食べ物を魔法で出す術」も習ったが、うまくいかないし、やけに魔力が消耗されてしまい、使い勝手が悪い。

 無から有を生み出そうというのだから、当然何かしらの代償は必要になる。そもそも「最終的に使う術」だから、難しいものなのだ。

 それなら、金を盗んで食べ物を買う方が、ずっと早い。

 一度に大金を盗むと大々的に捜索されるので、どこから足がつくかわからない。だから、少しずつ、色々な場所から盗んだ。

 店であったり、個人宅であったり。

 少額だったおかげか、場合によっては気付かれないままの時もある。飲み過ぎたかな、とか、お釣りを間違えられたのかな、といった具合に、自分の不始末だと思う人がいてくれたのだ。

 しかし、次第に欲が出て来る。見付からないことで、盗みに味を占めたのだ。

 そうして、バルベラは魔法道具という物に目を移した。

 こういう物にはさして興味はないが、売れば高く値がつくのではないか、と。

 使うつもりはない。性能や効果が大きくなれば、使えるようになるまで時間がかかる。魔力が多く必要だったり、使い方について色々と学ばなければならないことも。

 そんな面倒は、ごめんだ。自分がすることに効果があるのならいいが、あれこれ考えるよりさっさと売ってしまうに限る。

 そう考えて、バルベラはすぐに実行に移した。

 魔法使いが多くいる場所にも関わらず、魔法道具を管理してある部屋は警備というものがほとんどなされていない。

 扉に結界は張ってあるものの、扉を開けようとした時にのみ効果がある。転移魔法で直接部屋の中へ出てしまえば、何の役にも立たないのだ。要するに、鍵と同じ。

 結界は部屋全体に張られていないので、あっさりと中へ入れた。

 簡単に幾つかの道具を盗むと、それを闇ルートで売りさばく。目に入った物を適当に盗んだのだが、予想よりも高く売れ、かなりの金額が手に入った。

 だが、それがいけなかったのだ。

 いくらそれが闇ルートでも、物があまりに特殊すぎた。

 魔法使いが真剣になって盗まれた道具を見付け出し、売りに来たのがバルベラだとわかってしまったのだ。それが元で、とうとう捕まってしまう。

 小さな額の金を盗んだことがばれた時は、それを返せば厳重注意で終わった。魔法使いの不祥事を、魔法使いの長が隠そうとしたおかげだ。

 金を盗んだ時のバルベラは、空き巣のようにこっそり忍び込んだ、と供述していた。転移魔法ができるようになったことを、誰にも話していない。

 だから、バルベラは投獄されても、あまり気にしていなかった。

 魔法による拘束をされなかったので、簡単に抜け出すことができるから。

 余計なことを言わなくてよかった、と自分のずる賢さにほくそ笑む。

 イルブーリングの国を出れば魔法が使えなくなってしまう、というものでもない。どこででも、どうにでもして生きて行ける。

 流れ者のようになったバルベラは、やがてシェルヴァンナへ足を入れた。

 そこでは、あくまでもおとなしそうな性格の魔法使いを演じておく。さすがに、脱獄してここまで来た、とは言えない。

 だが、イルブーリングからは遠く離れているので、自分の悪行もここまでは届いていないはず。

 素性をはっきりさせなかったので、シェルヴァンナの魔法使い達も最初は怪しんでいたようだが、何も目立つようなことをしなかったので、最近はそうでもなくなってきた。

 とにかく、注意をしながら「仕事」をする。宝石や置物など、現金以外の物は盗まない。

 闇ルートで足がつくことを経験したバルベラは、とにかく現金だけを盗むことにしたのだ。

 しかし、盗む額を少なくしているために、どうしても侵入する回数が増えてしまう。

 あまり頻繁に「仕事」をしていると、どんなに注意してもいつか目撃者も出てしまいかねない。またあちこちを流れて暮らすのも、面倒だ。

 それなら、追われないようにすればいい。盗まれたことを、持ち主が忘れてくれればいいのだ。

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