第3話【入試前日】
入試が明日に迫る中、俺とルーシャは街に出てた。
家から持ってきた洋服では一目で貴族とバレてしまうからもう少し大人しめな洋服を買うためだ。
「ルーシャこんなのはどうかな?」
「いいんじゃない?ヴェルに似合ってるよ」
「これとこれだとどう?」
「こっちかな」
「じゃあこれで……ところでルーシャ」
「なに」
「なんで貴族ってバレたらいけないの?」
そう聞くと、ルーシャは呆れたように俺を見た。
「旦那様も仰られてたでしょ」
「あー……そういえば、そんな話してたっけ」
そうだ、あれは首都へ向かう一週間ほど前のことだった。
「ヴェル、話がある」
「なんでしょう父様」
「お前は貴族だ、貴族の中でもかなり位の高い身分だ。理解してるな?」
「理解してます」
何を言われるんだろう。
いつも明るく笑ってる父が今日は真剣な顔だ。
「今のレイサル共和国には黒い噂がある、貴族撤廃派が裏で暗躍している噂だ。」
「貴族撤廃派ですか?」
「そうだ、共和国とうたいつつ政府の主軸には王家と貴族が根強く残っている。その環境を壊そうとしてる輩が居るらしい。情報によると貴族撤廃派のアジトは首都レイサルにあるそうだ。」
「首都にそんな黒組織が存在するんですか」
「あぁ、だからな、レイサル国立学院に通うことは許すが貴族となると何を仕掛けてくるか分からん。だからお前は貴族の身分を隠して学園に通うのだ」
「貴族の身分を隠す……可能なのでしょうか?」
「そこは上手いことやりなさい。困ったらルーシャを頼れ」
「……かしこまりました」
現在に戻る。
「と、仰られたではないですか」
「そっかーバレたらやばいのか」
「やばいね」
「バレたらどうなる?」
「最悪殺される」
「まじか」
「まじだ」
「絶対バレたらダメなやつじゃん」
「そのために私も学園に通う」
「ルーシャが近くに居てくれるなら安心だね」
「学院に通う!?!?!?」
「ヴェルひとりだと危なっかしいし」
「え、でもどーやって?ルーシャは子供じゃないから無理じゃない?」
「なにも学園に通うのは子供だけじゃない」
「……まさか教師!?」
「あら、私は優秀よ?」
こんな美人なルーシャが教師だあ!?絶対モテちゃうじゃん!人気出ちゃうじゃん!俺以外の男と話してたら嫉妬しそうだ。
「まぁ確かにルーシャは優秀か」
「えぇ」
とりあえず買い物は終わりだ。
貴族っぽくない洋服も買った、これで明日の試験を迎えるだけだ。
と、その前に腹ごしらえだな。
「ルーシャ何か食べて帰ろうよ」
「いいよ、何がいい?」
「えへ、肉」
「でしょーね」
俺らは町一番のステーキ屋さんで豪華ディナーと洒落こんだ。
そこで俺は見覚えのある人物と再開した。
「あれ?ヴェルディンじゃねーか」
「アランさんこんばんは」
「今日は何してたんだー?」
「今日は明日の入試に着ていく洋服を買いに」
「そっか、ルーシャとデートか」
「そうそうデートぉっうっ…」
「ははっ、若いのにお盛んだな」
「な、何もないですよ!」
「てかよーヴェルディン、ひとつ気になってることがあるんだよ」
「なんでしょうか?」
「身分を隠して受験する理由はなんだ?」
「昨日も説明した通り、貴族だからといって優遇されるのが嫌なんですよ」
「……そっか」
なんだ?何か気になってることでもあるのか?
とりあえず今日は美味しいお肉食べて明日に備えよう。
「それでは今日は失礼します」
「あぁ!明日の試験頑張れよ!」
「はい!」
俺とルーシャは美味しいお肉を食べて宿に戻った。
「ねぇルーシャ」
「なに」
「明日大丈夫かな」
「あなたなら大丈夫よ」
「そっか…そうだよな、僕大丈夫だよね」
今になって不安になってきた。
思えば俺は前世では散々な人生を歩んできたんだ。
もちろん小学受験なんてしたことない。
高校受験ですら失敗した俺が受かるのか…。
まぁ考えるだけ無駄だ、明日のことは明日の俺に任せよう。




