第2話【首都レイサル】
俺は今興奮している。
今から剣術と魔術の学校レイサル国立学院の入学試験のため首都レイサルに向かうのだ。
マナ地方からは馬車で2週間ほどかかる。
少々長旅だが初の旅路なのでワクワクしてる。
「父様、母様、行ってきます!」
「頑張ってきなさい」
「あなたなら大丈夫よヴェル」
ただの入試なのにふたりは今生の別れみたいな表情だ。
「ルーシャ、ヴェルを頼んだよ」
「はい、旦那様。ヴェル行くよ」
「行ってきまーす!」
馬車での2週間はまぁまぁ退屈だった。
だが遠目から見えてきた首都レイサルのデカさにはとても感動したものだ。
あそこで俺は人生やり直すんだ。
ちゃんと勉強して剣術も魔術も沢山学んで次こそ…。
街の中心地に位置する貴族街の立派な建物の前で止まった。
「ヴェル着いたよ、ここが泊まる宿」
「ここかぁ!でかい!きれい!」
「試験日は2日後だから今日明日は街中を見て回ろ」
「行きたい!てかルーシャはこの街詳しいの?」
「昔ここに住んでたことがある」
「そうなんだ!羨ましいなぁ」
「そんないいとこじゃなかったよ」
「え?」
「さ、とりあえず行きましょ」
「う、うん」
何か嫌なことでもあったのかな。
てか昔っていつだよ!俺ルーシャの年齢知らないから想像つかないや。
でも女性に年齢聞くのはちょっとなぁ…。
「みてー!ルーシャ!剣のお店がある!」
「こっちには魔道具!すげぇ!」
「ヴェル迷子になっても知らないよ」
「ルーシャがこの街詳しいなら大丈夫でしょ!」
俺は沢山歩いた、いや走ったに近いな。
見えてくるお店に次から次に顔を出した。
すると案の定迷った、ルーシャともはぐれた。
やべぇ、どうしよう。
宿の名前知らないしここがどこかも分からないや。
でも試験まで2日あるならまぁ何とかなるか。
とりあえずこんな時は冒険者ギルドとかを探して情報を集めるのが定石だ。
「ここが冒険者ギルドかぁ…でっか…」
「君どうしたの?ここに来るの初めてか?」
なんだこの人、全身白銀の鎧に顔はイケメン、背中にはバカでけぇ剣に肩にはレイサル共和国の紋章。分かるこいつはやべぇやつだ。多分お偉いさんってやつだ。
「こ、こんにちは、レイサル国立学院の入試で初めて来ました」
「国立学院を受けるのか!あそこはとても難しいけど大丈夫かい?」
「家柄の都合で英才教育受けてきたので多分大丈夫かと思います」
「家柄ねぇ…君どこの生まれなの?」
「レイサル共和国マナ地方の領主レイバルト家です」
「なんとレイバルト家のご子息様であられましたか。失礼、私レイサル共和国近衛騎士団アラン・リンドウと申します。この度は失礼を。」
「いえいえ、僕もまだ子供ですし大丈夫です。むしろ僕は貴族だからと言って敬語を使われるのが少々苦手で……もしよろしければ先程のような言葉遣いでお願いします」
「そうでしたか…いいのかい?傍から見れば俺は無礼者だけど?」
「大丈夫です、僕はレイサル国立学院に入学する際は身分を隠して入学しようと思ってたのでちょうどいいです」
「なぜ身分を隠す?」
「貴族が入学すると特別待遇を受けるそうなので、僕は普通に剣術や魔術を学びたいのです」
「変わった貴族もいるもんだな、てか君名前は?」
しまったぁ!!!名乗るの忘れてたぁ!!!
俺は貴族だぞ……礼儀作法を叩き込まれたはずが…アランの身なりに気を取られすぎて自己紹介を忘れてたぜ。
「失礼しました。僕、いえ、私はヴェルディン・レイバルトと申します。先程も申しましたがマナ地方領主レイバルト家の長男でございます」
「ヴェルディン君か!よろしくな!ところでヴェルディン君よ、君は1人なのか?」
「一緒に来た従者とはぐれてしまいまして…」
「良かったらその子一緒に探そうか?」
「いいんですか?お仕事とかは?」
「いいぜ!別に、今日は非番だしな!」
非番なのに鎧着てるのかこの人は、疲れるだろ。
「その子の名前と容姿を細かく教えてくれ!」
「名前はルーシャ、白髪のショートヘアでメイドの格好してます。肌は色白で瞳は蒼、街を歩くと必ず2度見されるほどの美人で可愛い子です」
「おっけー、そんなに可愛い子ならすぐ見つかるかもな!」
「アランの名のもとに命ずる。精霊の子達よ、彼の者の探し人を今ここに。アスファリクト」
なんだこれは…アランの元にカラフルな精霊?が集まっては散っていった。
「アランさん、今のは…」
「精霊術を見るのは初めてか?」
「精霊術?」
「そ!精霊術。名前の通り精霊を使う術だ。魔法とは少し違う。精霊術を使えるのは天界に住んでる神とその神の加護を持ってるものだけだ。」
「天界やら加護やら初めて聞く言葉が多いのですが…」
「その辺も国立学院で学ぶぜ」
「剣術と魔術だけじゃないんですね」
「そうとも、国立学院ではありとあらゆることを学べる。それより探してたルーシャさん見つかったぜ」
「どこですか!」
「上だ」
そう言うとアランは冒険者ギルドの上を指さした。
「ルーシャ!」
「見つかっちゃった」
「なんでそんなとこにいるの!」
「迷子になると言っても聞かなかったから少しお仕置を」
「ばかー!僕が悪い人に捕まってたらどうするんだよ!」
「その時は私が」
え、なになに、ルーシャって戦えるの?
でも確かに普通のメイドがあんなとこに登れるわけない。
「え?ルーシャって武術とかいけるタイプのメイド?」
「多分そこら辺の男よりは強いよ」
「そこら辺ってここ冒険者ギルドだよ?首都レイサルだよ?かなり強そうな人たちもいるけど?」
「多分私の方が強いかな」
まじか、まじかー、ルーシャって強いのか。
「話は終わりか?」
「はい、ありがとうござ……」
なんだ?アランがルーシャを睨んでる。
ルーシャから目を離さないようにゆっくりと背中の大きな剣に手をかける。
空気が変わる。
「ど、どうしたんですか、アランさん」
「ヴェルディン君、彼女が君が探してたルーシャさんかな?」
「はい、僕が生まれた頃からお世話してくれてるルーシャです」
「……そうか、気だってすまなかった。何やら精霊が騒いでたから少しな…」
「いえいえ、こちらこそ探していただきありがとうございます」
なんだったんだ。アランのあの気迫、真に来るものがあった。
ちょっと怖いな。
「ヴェルディン君、俺は帰るよ。またなにかあれば俺を頼ってくれ!近衛騎士団団長をな!」
「はい!ありがとってえぇ!!!団長!?!?」
「あれ?言ってなかったか?俺団長だぜ」
初耳だっつの!先に言えっての!
近衛騎士団団長か、これは良い人脈を手に入れたかもな。
アランと別れて宿の帰路につく。
「ねぇルーシャ」
「なに」
「聞いていい?さっきのこと」
「……いいよ」
「なんでアランはあんなに怒ってたの?」
「それは分からない、ただ精霊使いには相手の強さが判別できるらしい。私が多少武術に長けてるのがバレたとかかな」
「そっか、精霊術って便利だね」
「そうだな」
宿に着いた、今日は疲れた。
美味しいご飯食べて寝よう。
明日はルーシャの言うこと聞こう。
ゆっくり街中を散策するんだ、ルーシャとふたりで……。
ふたりきり……。!?!?!?




