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異世界転移で防御型弓使いを選ぶぜ  作者: シンノスケ一二三
第三章「ヤブサメサバイバル」

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第三章「ヤブサメサバイバル」3

「なぜ?」

生き残りを賭けたサバイバルの最中。マモルとしては敵を助ける理由はない。


「俺は純粋に弓を競いたいだけなんだ・・・頼む」

腕押さえの男の眼には邪念の色はなく、ただただ悲しみだけを湛えていた。


そういう態度にマモルは弱い。


「そうか。ならば弓を拾うまでお前を攻撃しない」


「ありがとう。俺は深淵弓のアンソニー。では弓の回収に専念させてもらうよ」


マモルは堀を背にし、蛇の群れに対抗する。


そしてアンソニーはマモルの後ろをちょろちょろと動き回り、蛇の群れの中に目を凝らしていた。


蛇の群れはすでに半径5メートルにまで迫り、マモルの処理速度では追いつかないほどの数である。


それでもマモルは確信があった。


(レイヴンなら、こんなもので手こずることはないだろう)


マモルの打開策は、レイヴンの模倣である。


現にレイヴンの方がマモルよりもオヒューカスに近かったにも関わらず、蛇の群れを半径10メートルにまで追いやっている。


レイヴンの連射は蛇を全滅させられそうなほど、異常な速度であった。


まずは、無限弓であっても矢筒から矢を取り出す動作は必要であり、そこを短縮できるほど便利な代物ではない。


しかし、レイヴンはその取り出す動作なしで8連射している。


その理由は指にあった。


レイヴンは矢筒のある背中に手を回し、薬指と小指で8本の矢を引き抜き、その矢を1本ずつペン回しの要領で回転させ、薬指、中指、人差し指と起用に移動させている。


この行程を高速で行うことができれば、弓を引く動作だけで矢を放つことができるのだ。


(この方法、少しなら真似できるかもしれない)

8連は無理でも、3連くらいなら可能だとマモルは考えた。


それぞれの指の間に矢を挟んで、矢を放てばそこまでの器用さは求められない。


今でも飛びかかりそうな蛇の群れを前に、マモルは弓の才能を信じて3連の矢を射た。


連続で放たれた矢は、3本とも蛇の頭を捉えている。


「大したものだね。この処理速度なら蛇達も近寄れんだろう」

後ろにいたアンソニーは呟いた。


「そんなことより弓はあったのか?」


「ないなあ」

アンソニーの気の抜けた返事を聞きながら、マモルは必死で弓を射た。


やがて蛇は脅威でないほどの数まで減少し、場内には余裕の空気が流れはじめている。


しかし、マモルにとっての本番はここからだった。


場内にはレイヴンとアンソニーが残っている。


アンソニーは見たところ大したことはなさそうだが、弓の実力ではレイヴンに到底及ばない。


直接対決を仕掛けるしかないだろう。


そして、マモルの視線を察知したレイヴンはすぐに警戒した。


お互いが中心を軸とし、円を描くようにゆっくりと馬を歩かせ、相手の出方を見ていた。


しかし、場内を包み込む影が。


マモル達が顔を上げると、太陽を隔て逆光する巨大な何かが存在していた。


おそらく、その物体は場外から太陽を覆い隠すように飛び上がったのだろう。


そして競技場の塀を飛び越えて、場内に侵入しようとしているのだ。


ドーンッ!


場内のど真ん中に落ちてきた、その衝撃と振動、存在感にマモルは唖然とした。


それは体長6メートルほどで馬のような身体に、首から上は男か女か分からない人間の巨大な頭がくっついている。


突然すぎて何が起こっているのかわからない。


だが、マモルの動揺を置き去りにするように、その巨馬はすぐに場内を駆け回り始めた。


「脚の魔鋭、ランナーだ!」

誰か悲鳴が上がり、観客席は大混乱になった。


この競技大会には帝都の王や重鎮達も見物しており、それらはすぐに退散してしまった。


というのも、ランナーは知能が低く、辺りを貪り食って走るだけの生物であり、人間からは自然災害のような扱いを受けているのだ。


観客席に残るのは、腕に自信がある者と好奇心が勝る命知らずのみだった。


もはや、競技どころではないだろう。


(ていうか、こっちに来てんじゃねえか・・・)

初めは右往左往していたランナーは、マモルの姿を認めて警戒しながらも蛇行しきている。


しかもその蛇行はみるみる加速していく。


マモルは馬を走らせてランナーから逃げた。


酒場で聞いた情報、脚を止めれば死ぬというものがマモルの頭にはある。


そしてもう一つの情報、名弓でなければ魔鋭の相手は務まらないというものもあった。


マモルは逃げながら、ランナーに向かって矢を射るが手応えなく弾かれてしまう。


(強い弓でないとそもそも攻撃が通らないのかもしれない。さて、どうするか・・・)


「マモル!」

いつのまにか前を走っていたレイヴンが速度を落とし、マモルと並走している。


「協力しろ。奴はもうすぐ蛇行をやめて本格的に走り出す。その前にケリをつけたい」


「どうしたらいい?」


「<闘矢(トウシ)>を使う。矢への集中力が高まった時に放てる弓使いの素質だ」


(クオーツの氷の壁を貫いたアレだな)

マモルはすぐにピンときた。


「だが、魔鋭相手に威力が足りるのか?」


「単体では不可能。でも闘矢を合体させれば貫けるかもしれない。2人で奴の脚を同時に射抜く」


マモルは頷くと、矢を持つ右手に力を集中した。


「私が合わせる!」

レイヴンは叫んだ。


叫ぶと同時に2人同時に弓を引き、右前脚の関節に狙いを定める。


引き絞られた2人の矢が星屑のように微細な輝きを放っていた。

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