第二章「魔鋭四将」1
<登場人物>
・弓使いマモル
魔王に異世界転移させられた男。
しかし、魔王の仲間として召喚されたわけではないので、自由の身だ。
弓使いと防御の素質を持っている。
・冒険者レイヴン
謎の紫髪の女性。
何を考えているかわからないが、マモルにいろいろ教えてくれる。
戦闘スタイル的に、おそらく弓使いと防御の素質を持っている。
「何だったんだ。あいつは・・・」
マモルはようやく腰を下ろした。
「町長は相当な悪人だね。コスト削減のために傭兵を殺そうとするなんて」
レイヴンはため息をついて言う。
(すると総髪の男は俺たちを殺すために、町長に雇われた殺し屋ということなのだろうか?)
「じゃあ、町長の目的は何だったんだ?」
「まあ、普通に考えるなら傭兵を雇って悪鬼の討伐をさせる。ただ、それを安価で行うために自分の息のかかった者にそれらを殺させるというのが目的だろうね」
(回りくどいな・・・)
マモルは首を傾げながら思った。
「そういえばマモル。報酬はどうするの?」
「取りに行くしかないよなあ」
報酬は後払い制だ。
「そうか、私はすでに町長の倉庫から報酬分の金品を盗んでいる。だから、ここでお別れだね」
(なんで!?)
マモルは驚いた。
すでに報酬分を盗んでいるなら、仕事を放棄してそのまま逃げてしまえばいい話だ。
報酬分は働くという義理とでも言いたいのだろうか?
レイヴンの行動がますます理解できないマモルだった。
「お、おう。お元気で・・・」
「じゃあね」
レイヴンと共に行動できれば都合が良かったが、引き留めることをマモルはできなかった。
しかし、マモルは少し足掻いた。
「あーそういえば、素質の交換条件に願いがどうとか言っていなかったか?」
「私は探し物をしていてね。君がそれを手に入れたら、私にそれをくれるというのが願いだよ」
「わかった。探し物って何だ?」
「君が何時か手に入れる物だよ」
詳しく聞こうとしても、レイヴンはそれ以上語らず、手を振りながら去っていった。
(ふう。1人になってしまった)
マモルはトウフ基地の中で1人座り込んで、行くあてのない孤独を噛み締めていた。
(とりあえず、報酬をもらいに行こう。まさか殺されないよな・・・)
無一文のマモルに報酬を受け取らないという選択肢はない。
とりあえず、何事もなかったかのように、平然と戻るしかないとマモルは考えた。
そして、マモルは北の森をトボトボ歩き、無事に町役所まで帰ってきた。
中に入ると受付は驚いた様子でマモルの姿を認め、慌てて町長に取り次いだ。
町長の部屋では、町長は相変わらず美女4人と戯れていた。
しかし、マモルと目が合うと町長は笑みを浮かべ、すぐに立ち上がって手を握った。
「お、ご無事だったか!それで成果は?」
「基地にいる悪鬼は全て討伐して参りました」
「お、おお!ご苦労であった。おいセリア。彼に報酬をお渡ししなさい」
町長がそういうと、金髪の美女が机を探り、金の入った袋をマモルに手渡した。
「そういえばもう1人はどうなされた?」
(ギクッ!)
レイヴンが報酬を盗んでるとは言えない。
それに盗みがバレた場合、仲間だと思われたら後々面倒なことになる。
「いやあ、用事を思い出したとかで途中で居なくなりましたね。もともと他人ですから、詳しいことは聞いてないですね」
「そうなのか。では、町民を代表して改めて礼を言う。町を救ってくれてありがとう」
町長は深々と頭を下げた。
「ちょっと町長!頭を上げてください!」
正直マモルはすぐに切り上げたかった。
いくら町長でも、町中で殺しにかかってくることはないだろうが、ここが敵陣ということには変わりない。
「すいません。用があるので私はこれで・・・」
マモルはそう言って足早に町役所の外に出た。
そして、しばらくふらふらと町を彷徨っていると、背後から女性の声がした。
「マモル様!」
マモルが振り返るとセリアと呼ばれた金髪の美女が長剣と円形の盾を背に携えて立っている。
「あなたは町長の・・・」
「私は町長の仲間ではありません。安心してください」
「何を言っているんですか?」
マモルはとぼけた。
「ここでは目立ちます。ついてきて来てください」
マモルはセリアに連れられるがまま、路地裏に移動した。
「町長が冒険者達を密かに殺していたのは知ってます。私の兄も町長に殺されました。だから悪行を暴くために遊女として役所に潜入していたんです」
「あなたのお兄さんも冒険者だったのか?」
「違います。私も兄もこの町の人間です。しかし、兄は町長の秘密を知ってしまい口封じで殺されたのです」
「そのことと俺に何の関係が?」
少し驚いたがマモルは毅然とした態度で対応する。
「あなた達は総髪の男を帰り討ちにしましたね?」
セリアは全てを知っているようだった。
(奴を追い払ったのはレイヴンだが・・・)
「私は町長の秘密を知っています。おそらく数日後に殺されるでしょう・・・しかし、ただで死ぬ気はありません。兄の仇を討ちます」
セリアの気迫を帯びた眼差しにマモルは圧倒された。
「その敵討ち、俺に手伝えと言うんだろう?」
「はい・・・」
セリアは頷いた。
「いいよ」
マモルは即答した。
セリアは驚いた。
なぜならまだ報酬の話はしていない。
しかし、マモルとしては右も左もわからないこのマイワールドで、レイヴンに代わる新たな拠り所を見つけたと言えるだろう。
「ありがとうございます。町長がああなったのはおそらく10年前。トウフ基地に悪鬼が住みついた時期に一致します。それまでは真面目で優しい方でした。正直言ってトウフ基地の悪鬼は倒しても意味がありません。すぐに再発生します」
(え?)
マモルは理解できなかった。
町長は悪鬼を一掃するために金を払っている。
それが無意味ならば、この茶番は一体何なのか。
「私もそれが不思議でした。しかし、実際の目的は冒険者達の殺害の方にある」
マモルは息を呑んだ。
「少し回りくどいですが、これは人間の力を削ぐために仕組まれたことです。町長は操られている・・・」
セリアは拳を握り締めた。
「<魔鋭四将>の1人、死の魔鋭キリングハート・・・それがこの件の黒幕です」




