第六章「帝都の防衛」1
<登場人物>
・弓使いマモル
魔王に異世界転移させられた男。
しかし、魔王の仲間として召喚されたわけではないので、自由の身だ。
弓使いと防御の素質を持っている。
・冒険者レイヴン
謎の紫髪の女性。
何を考えているかわからないが、マモルにいろいろ教えてくれる。
戦闘スタイル的に、おそらく弓使いと防御の素質を持っている。
・自由の悪鬼ブモン
マモルと同じく、魔王に異世界転移させられた水色の悪鬼。
盗賊と速度の素質を持っている。
・勇者信者チェリッシュ
赤いチューリップ帽子をかぶっている女性。
勇者生存説を信じる団体、現実派のメンバー。
・刃の魔鋭セキサイ
魔鋭四将の1人、銀髪の魔物。
剣への探究心が高く、人間と魔物の剣術道場を開いている。
死の魔鋭キリングハートとの死闘の翌日。
マモルは小屋で目を覚ます。
「・・・」
小屋の壁際にびっしり積み上げられていた分体入りのビンは綺麗に片付けられていた。
「気がつきましたか」
小屋に入ってきたのはチェリッシュだった。
「とりあえず、回復魔法をかけておいたので」
「セリアは・・・」
マモルの言葉にチェリッシュは俯いた。
「そうか。キリングハートはあれで倒せたんだろう?」
「ええ、金色の爪だけを残し、ビンに保管していた分体までも腐敗したように紫に変色しました」
「さしあたりやることは終わったのか。それなら、セリアの遺体はハンドケア町に送り届けたい」
「それは仲間に任せてください。実は皇帝様がお呼びなんです」
「なるほど」
また魔鋭討伐の件で褒美をくれると言うのだろうとマモルは思った。
「どうせ恩赦だ。待たせておくさ」
「それはなりません。どうやら<炎の魔鋭アンガー>が長い眠りから目覚め、帝都に向かっているようなのです」
「何ぃッ!?」
マモルはすぐに立ち上がった。
マモルはすでに魔鋭との戦闘の虜なのだ。
「ちょっと落ち着いて!すぐに用意してきますから」
チェリッシュはすぐに小屋を出ていった。
マモルも出発の準備をしようとして部屋の隅に目をやったが、鎧エタニティアーマー、盾ベーシックシールド、それと自動装填の勇弩が置かれているだけで、ノザワ老人作の魔穿・虹が見当たらない。
(そういやあ、あのジジイはどこに行った?)
マモルは死闘の中の幻を見たのかと思うほど、老人と虹色の妙な弓の記憶に対して曖昧だった。
そんなことを考えていると、チェリッシュが赤色のチューリップ帽子と冒険服を見にまとい、大きなリュックを背負って小屋に入ってくる。
「お前も行くのか?」
「ええ」
「ジジイに会ったか?」
「あーそういえば、あなたのことを私に任せた後、どこかに行ってしまいましたね」
「その時、虹色の弓を持ってたか?」
「はい。確か金色の爪と一緒に持っていました」
(どういうつもりだ・・・)
少し考え、どうやら魔穿・虹は貸してくれただけだったのだと、マモルは解釈した。
帝都ブレインクリーンに着いた2人は、すぐに皇帝に謁見した。
「それで状況の方は?」
マモルは玉座に座る皇帝に対し立ったまま聞いた。
「北の大山の火口で眠っていた炎の魔鋭アンガーが目を覚ました。すでに南下して、北の国を治める北王レオンの軍とぶつかり滅ぼしている。ここに来るのも時間の問題だろう」
「では私が迎え討ちましょう」
「実はもう一つ問題が発生した」
皇帝はプルプルと震えている。
「なんです?」
「脚の魔鋭も西からこちらに向かっている」
「何ッ!?」
マモルは狼狽した。
脚の魔鋭ランナーはすでにヤブサメサバイバルで倒している。
「あんたらあの後ランナーを逃したのか!?」
「違う!脚の魔鋭が恐ろしいのはあの脚力だけでなく、世代交代の速さもなのだ」
すでに皇帝は怯えを隠さなくなった。
「ならば、深淵弓のアンソニーを探してください。奴ならある程度は侵攻を遅らせられるでしょう。俺が炎の魔鋭を討ち取った後で対処します」
「すまない。帝国の兵力は常に防衛に回さなければならないほど貧弱だ。君達に頼むしかないのだ」
「わかっていますよ」
マモルはニヤリとした。
うまくいけば炎、脚と2度美味しい。
レイヴンの名前を出さなかったのはそのためだった。
マモルとチェリッシュが出ていこうとすると、皇帝が呼び止めた。
「渡したいものがある。そうだな、シン」
皇帝がそういうと、収集家のシンが縦長の木箱を抱えて奥から出てきた。
「マモル。こいつを使ってくれ」
シンはそう言いながら、木箱から茶色い龍を模したの弓を取り出してマモルに手渡した。
「これは!龍飛砲!!」
マモルはつい舞い上がってしまった。
「断っておくが貸すだけだぞ」
「いいのか?」
「人類が滅ぶんじゃあ、コレクションする意味もないからな」
シンは笑いながら、皇帝に一礼して出ていった。
(持った感覚でわかる。これなら魔鋭に対抗できる・・・)
マモルは感動している。
そして、マモルは最強の弓を持ち、北の村で待機しアンガーを倒す準備を始めた。
「お前、帰らないのか?」
北の村の北の平原で龍飛砲を弄りながら、マモルはチェリッシュに聞いた。
「戦闘後、すぐに治療できるように待機しておきますよ」
チェリッシュはニコリと笑って、北の村に戻っていく。
マモルはそれを見送ると、龍飛砲を空に向けた。
(試し撃ちをしておこう)
矢は50本ほど用意してある。
通常の矢ではあるが、龍飛砲の魔力が適応されるため十分な火力になると聞いていた。
背負っている矢筒から矢を一本取り出し、弓を引いて放つ。
弓使いの素質の能力、闘矢の光を宿した矢は、やがてその光が龍に姿を変え、空を駆け上がっていく。
「えッ!?」
マモルは驚いた。
矢が龍の光をまとって飛んでいく。
なんともロマン溢れる武器に心が躍っていた。
「さて、来やがったか」
マモルは北の方角に目をやる。
北の平原の向こうに、まだ米粒大にしか見えない灯火のようなその存在が、尋常ではない熱気を放っているのがわかる。
言うまでもなく炎の魔鋭アンガーである。
(ここからでも龍飛砲ならやれるな)
マモルは素質を信じて、弓を引いた。




