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異世界転移で防御型弓使いを選ぶぜ  作者: 熾火慎之助
第五章「ブモンの武者修行」

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第五章「ブモンの武者修行」ラスト

翌朝、ブモンは第一道場に到着した。


中に入ってみるといつもと雰囲気が違う。


中央には魔鋭セキサイらしき白髪の男が後ろ向きに座り瞑想していた。


周りの剣士達は普段の殺伐とした表情はなく、まるで置き物のように気配を消し、セキサイの邪魔にならないように努めている。


「来たか。ブモン」

セキサイの爽やかな声が道場に響いた。


「やっと俺を敵として認める気になったかい?」


「ああ」

セキサイは立ち上がり、ブモンの方に身体を向けた。


瞑想の余韻を感じさせるゆっくりな動きである。


「さあ、始めよう」


セキサイが剣を抜き、ブモンもそれに合わせてライジングフロウを構えた。


(初速バーストはすでに見切られている・・・)

ブモンはそう思い、ゆっくりと右に回りこむようににじり寄った。


そして、ブモンがライジングフロウを振り上げると発生した突風がセキサイを襲う。


しかし、セキサイは風圧を両断し、そこに飛び込んで距離を詰めてくる。


(小細工は通じないか)

ブモンは思った。


おそらく、この道場で披露した剣技はセキサイによって、すでに対策が考えられているのだろう。


風が無力化され、体格差からくる剣のリーチでは不利となり、ブモンはさらににじり寄った。


そして、ブモンが攻撃に動いた瞬間、セキサイの斬撃が飛んでくる。


ブモンはその斬撃を飛び退いて何とか回避した。


「今のは完全にやれる範囲だったが、さすがは速度の素質の身のこなしだ」

セキサイはゆっくりと構え直した。


(妙だな)

ブモンは思った。


先に攻撃を仕掛けたと思ったが、セキサイの斬撃の方が速かった。


攻撃が同時であっても、速度の素質を持つブモンの斬撃の方が速く相手に到達するはずである。


つまりセキサイの方が速く攻撃を仕掛けていたのだ。


(偶然か・・・?)


しかし2度目に仕掛けた攻撃も、セキサイのワンテンポ速い攻撃に無効化され、致命傷ではないが袈裟斬りを喰らってしまった。


(くッ・・・偶然ではない)

ブモンは思う。


セキサイは何かしらの予備動作からブモンの攻撃を予測して、先に攻撃を行っている。


<剣技・初動狩り>

相手の攻撃を読み、攻撃の発生に合わせ先に攻撃を行う。

相手は完全に攻撃の動作に入っているため、防御が完全に封じられる。


今思い返すと、昨日ムネヒロと戦っていた紫髪の冒険者も、ムネヒロの行動をあらかじめ読んでいたように思える。


どうやって行動を読んだか?今からその方法を解明し、初動狩りを防ぐのは不可能だろう。


確かにこの道場のおかげで強くなれた。

ライジングフロウの真価も引き出すことができた。


しかし、セキサイが剣技を吸収するために道場を運営しているのならば、ここで学んだ技術はすでに理解されており、セキサイを倒すことはできないだろう。


(ならば、俺の流儀でいく)

ブモンは考え方を変えた。


ブモンは盗賊の素質を持っている。


ブモンは元の世界で盗人をして暮らしていたが、強さへの渇望は常に持ち合わせていた。


ゆえに、本来ならば戦士になりたかったブモンだが、魔王から差し出された盗賊の素質が手に吸い付くようにブモンに馴染んでいったのだ。


剣士と盗賊の違いは、相手に危害を加えても尚、相手にそれを悟らせないことだろう。


(攻撃の気配が消えたか)

セキサイは思った。


ブモンがゆるりとセキサイに近づき、一刀を加える。


それはまるで掠め取るような一振りだった。


セキサイは飛び退いたが、わずかに剣先が届いたらしく流血している。


「なるほど、その刀法むしろアサシンに近い」

セキサイはそう言いながらも対応の姿勢を崩さない。


ブモンの気配を消した斬撃が、またしてもセキサイの頬をかすめる。


防戦一方のセンエイに対し、ブモンはこの盗賊の連撃を行う中でさらに集中力を高めていった。


(まだまだ決定打に欠ける)

ブモンが狙ったのは暗殺だった。


相対した上での暗殺。


しかし、盗賊の素質を研ぎ澄ました先に必ずあることは分かっていた。


ブモンの集中力が最大かつ、セキサイが集中を欠いた時、その暗殺は行われようとした。


「あッ!」

剣士の1人が思わず叫ぶ。


ブモンはセキサイの背後を完全に取り、首元までその刃が迫っていた。


激しい金属音と共に何かが宙を舞う。


それはブモンの身体とライジングフロウだった。


集中力が最大値に達していたのはブモンだけではない。


セキサイの集中の乱れは誘いであり、あえて見せられたものだったのだ。


(まさか、戦いの中で大きく成長するとは)

刀の柄の殴打を受け失神しているブモンを見下ろしながらセキサイは思う。


その後、ブモンは再び宿に運ばれ、翌日には道場を出ていくことにした。


「本当に出ていくのか?」

ムネヒロは荒野に向かって歩こうとしていたブモンに声をかけた。


「あそこに止まっていたんじゃ。セキサイを越えられねえ」


「ふふ、確かに」


「セキサイにも伝えといてくれ。次会う時は戦場でだ」

ブモンはムネヒロの方を少し見てから、そのまま荒野に姿を消した。


「この世界に来て良かった。次々と強いやつが現れやがる!」

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