第五章「ブモンの武者修行」1
<登場人物>
・自由の悪鬼ブモン
魔王に異世界転移させられた水色の悪鬼。
しかし、魔王の仲間として召喚されたわけではないので、自由の身だ。
盗賊と速度の素質を持っている。
・弓使いマモル
ヤブサメサバイバルでブモンの無敗伝説に傷をつけたライバル。
弓使いと防御の素質を持っている。
・冒険者レイヴン
謎の紫髪の女性。
何を考えているかわからないが、マモルにいろいろ教えてくれる。
戦闘スタイル的に、おそらく弓使いと防御の素質を持っている。
・刃の魔鋭セキサイ
魔鋭四将の1人、銀髪の魔物。
剣への探究心が高く、人間と魔物の剣術道場を開いている。
自由の悪鬼ブモンはヤブサメサバイバルから撤退し、小さな水色の身体で各地を放浪していた。
(奴にはリベンジしなきゃならねえ・・・)
ブモンはマモルから受けた矢傷を撫でながら思った。
ブモンはマモルと同じく<イレギュラー>として、魔王に転移させられた異世界転移者だった。
元の世界では<素質>という能力システムは存在しておらず、転移ボーナスとして盗賊の素質と速度の素質を授かった。
この世界の素質とは奇跡の力であり、それを2つも持っている者は正しく強者である。
マモルに敗れるまではブモンはこの世界で無敗だった。
(今度はこの剣の錆にしてくれるぜ)
ブモンは背に携えている剣に意識を向け思う。
その剣は<ライジングフロウ>
透き通る水色の刀身を持ち、小柄なブモンが背負えるほどのやや短めなナタのような剣だった。
ブモンはこの唯一無二の名剣をとある商人から盗み、愛用している。
そしてブモンは今、どこかわからない林道を歩いていた。
前からは剣士風の男が歩いてくる。
(こいつ、強いな)
ブモンはそう思い剣を抜いた。
「賊か?」
剣士も剣を抜いて、正眼に構える。
「まあ、賊だな」
ブモンは剣を担ぎ、挑発するように手の甲を向けて中指を立てた。
「ふざけた奴め!」
剣士が挑発に乗って剣を振り上げた瞬間、剣士の身体は縦に両断され真っ二つになっていた。
辻斬りである。
ブモンは強者と認めると喧嘩を仕掛けてそれを倒し、技量と自信を常に高めていた。
(ふふ、ここは穴場か?また獲物がやってきやがったぜ)
今度はサムライ風で銀色長髪の男だった。
しかし、その男が近づくに連れ気迫が強大になっていき、ブモンはつい足を止めてしまう。
おそらく人間ではないだろう。
(こいつは、かなりの大者だ・・・!)
ブモンは高まる期待を抑え剣を抜いた。
「ほう、水色の悪鬼とは珍しい」
長髪の男は顎に手を当て、ブモンを興味深そうに観ている。
だが、持っている刀を抜く気配はない。
「悪いが死んでもらうぜ?」
挑発するブモン。
ブモンとしてはお互いに準備が整った状態で戦いたかった。
しばらくして長髪の男はハッとした。
「すまん。察しが悪かったな」
長髪の男は腰にある刀の柄に手を添えた。
(居合術か・・・)
ブモンは相手の溢れ出る気に押されながらも、自分の技を試したいと思っていた。
ブモンが扱える速度の素質の能力は<加速>ともう一つ存在する。
それが<初速バースト>だ。
神のような初速を出せる代わりに反動がすごく、一睡しなければ加速が使えなくなってしまう。
リスキーだが、初速バーストを発動して倒せなかった者は未だ存在していない。
(余裕ぶっていられるのも今の内だ)
ブモンが剣を構え、大地を蹴る。
この瞬間速度はブモンでも完全に認識できるわけではない。
気がついたら前進して、長髪の男を通り過ぎていた。
しかし、背後から声がする。
「今のどうやってやった?」
長髪の男の声だ。
ブモンは意味がわからない。
完全に通り過ぎた。
本来なら相手は上半身と下半身が断ち切られ、地に伏せているはずだ。
「えッ!?」
ブモンは恐怖で振り向けなかった。
首元に刀が突きつけられており、振り向けば殺される。
「お前の姿勢と呼吸から、どう来るかはわかった」
ブモンはその場であぐらをかいた。
性格上、死が確定した場合あっさりしている。
そのまま首を斬れとでも言わんばかりの潔い姿勢である。
「辻斬りよ、生かしてやる。その代わり俺に付き合ってくれないか?」
ブモンの首元にあった刀がスーッと鞘に納められた。
「俺の名はセキサイ。刃の魔鋭という名で通っている」
(こいつが噂の魔鋭か!?)
ブモンは驚く。
「お前の名を聞かせてくれ」
「自由の悪鬼ブモンだ」
お互いの自己紹介を終えて、セキサイに連れられるまま移動するブモン。
道中、セキサイとは必然的に剣の話になる。
「お前の背負ってるのはライジングフロウだな。名工初代ノザワが疾風の魔石を独自の計算通り精妙に削り出して作ったと言われる逸品。まさか実在していたとは・・・」
セキサイは興奮を隠せない。
だが、ブモンに剣の知識はなかった。
「なんだ知らなかったのか?唯一無二の名剣の一つだ。絶対手放すなよ」
「当たり前だ」
いくらブモンでも、最強の剣だということはわかっている手放すはずがない。
セキサイの運営する道場は恐ろしく広かった。
道場が24軒存在して1つの村を形成し、<道場ビレッジ>と呼ばれているらしい。
セキサイに紹介されながら、ブモンは道場ビレッジを練り歩いた。
「これらの道場は主に種族や流派ごとに分けられているが、無差別級の道場ももちろん存在している」
「ならば、そこへ連れてってくれや」
ブモンが目指すのはこの世界の最強であり、階級別などというものではとても満足できない。
セキサイに案内されたのは、道場ビレッジの中央に存在する最も巨大な道場だった。
「これもまた立派な・・・」
ブモンは息を飲み、道場の門を叩いた。
中に部屋などはなく、ただ広い空間で8組の剣士が技を競い、その脇で他の剣士達が真剣にそれらを観ていた。
あらゆる種族の者達が、最強という同じ目標について頭を悩ませている。
その光景を見てブモンは肌を粟立たせて震えた。
「この雰囲気、たまらねえぜ・・・」
ブモンが思わず呟く。
「名乗りでればすぐに戦える。気の済むまでここに居るといい」
センエイはそう言い残し去っていった。




